幕間3
「ねえ」
その日は珍しく、私の方から話しかけてみた。ハルカは私から話しかけられたのがよほどうれしいらしく、上機嫌に私の方を振り向いた。
「なになに?」
「もしかして、私は死んだの?」
ハルカは少し驚いたような顔で私を見つめる。ハルカの真顔を見たのは初めてのことだった。しかし、その表情も一瞬で崩れ、つまらなそうなため息が聞こえた。
「ええ~…。そういうのってもっとクライマックスで気づくものじゃない?こんな序盤で気が付くなんて予定外だよ」
「ハルカの予定なんて私には関係ない」
私にとって大事なのは、私が今どうしてこんなことになっているか、ということだけだ。
「まあまあ、そうなんだけどね。でもまあ、答え合わせをするなら、正確には死んでいないよ。死に近い状態ではあるけどね、僕はその死にかけの忍の魂を拾って遊んでいるだけ」
人の魂を弄んでいるという事実に吐き気がする。ハルカはやはり異常だ。でも、実際ハルカに弄ばれているという現状があるということは、私の魂の所有権は私ではなくハルカにあるのだろう。自分自身の命すら自分以外の誰かに蹂躙されている状況なんだかとても自分らしくてうんざりだ。それでも、今の私はそれよりも聞いておきたいことがある。
「あの世界は、私の望み通りの世界だと思っていたのだけれど」
ハルカはそうだと答える代わりに笑顔で頷いた。
「私が望む世界なら、私以外の誰もいない世界なのではないかと思っていたのだけれど、私以外の人間もいるのよ。そしてその人は、あの世界で私とがっつり関わっているのだけれど、それはどうして?」
「そっかそっか、それはまだわからないかあ」
ハルカはしんみりと呟いた。
「まあまあ。焦らずに考えてごらん?ヒントはさっき忍も言った、あそこは忍の望んだ世界ってことだよ。大丈夫。きっと答えはでるから」
「じゃあ、最後にひとつだけいい?」
「なになに?なんでも聞いてごらん」
そう言いながらも、話を聞くだけで、ハルカが真面目に答える確率はかなり低いだろう。
「ハルカは…何者?」
「僕はね、死神だよ」
答えが返ってきたことは想定外だった。あの時のハルカの優し気な笑みは見慣れなくて、なんだか夢に出てきそうだった。