ボーイミーツガール2
「何食べたい?」
「別に、何でもいい」
「嫌いなものとか、アレルギーは?」
「ない」
「じゃあ、私の好きなもの選んじゃおー」
心はハンバーグ弁当と唐揚げ弁当に、お茶とコーラをカゴに放り込んだ。
「あ、炭酸平気だった?」
「ああ」
「よかった。私炭酸飲めないんだよねえ」
だったらなぜコーラを選択したのか。大体夕飯を買う場所にしたって、ショッピングモールの中にある食料品売り場でよかったではないか。わざわざ歩いてコンビニまで行く必要がどこにあったのだろうか。
「他に必要なものはない?」
「今のところ、特には」
「わかった」
心はカゴにチョコ味のスナック菓子を追加してレジに向かった。背負っていたリュックからエコバックを取り出し、商品を放り込んでいく。財布から2000円を取り出した後、少し悩むような素振りを見せて、「お金、カウンターに置きっぱなしじゃまずいよね?」と呟いた。
俺はレジ越しに身を乗り出し、レジ袋を手に取った。
「お金、貸して」
「う、うん」
心から受け取った2000円をレジ袋にいれて「これでいいか?」と聞いたら、呆気に取られた顔の心が立っていた。
「え、駄目だったか?」
「ううん、いいんだけど。急にレジに身を乗り出したから驚いちゃって。結構大胆なことするね」
「他にお金入れるような場所、思いつかなかっから」
「まあね、コイントレイにお札だけ置いておいても飛んでっちゃいそう」
「コイントレイ?」
「レジの横に置いてあるお金入れるやつ。コイントレイって言わない?」
「ああ、あれ。正式名称コイントレイじゃないらしいぞ」
「え?じゃあ、何て言うの?」
「カルトン」
「へえ、初耳」
雑談をしながらコンビニを後にする。
「ところで、泊まるあてはあるのか?」
鼻歌を歌いながら、「カルトン、カルトンかあ」と楽し気に呟く心に聞いてみる。
「瞬くんは、ある?」
「実家に住んでるから、帰ろうと思えば帰れるけど。ちょっと遠い。今から家まで帰るのは正直しんどい」
それに、正直家には帰りたくない。家に帰っても家族なんて誰もいない可能性が高い。無事を確かめたい気持ちが全くない訳ではないが、無事でない可能性が高いのに、あえて現実を直視する勇気は俺にはない。
「だよねー。という訳で、近くにビジネスホテルがないか、調べてみました!今日はそこに止まります!」
そんな俺の逡巡を知ってか知らずか、心は軽い口調で、胸を張って自分の手柄を高らかに述べる。俺は心のそんな態度に少し、ほっとした。