「blank」
日々は捲りゆくページの中で展開される。
私は白紙の片隅で、この真っ白な世界を見つめていた。
私にはただ、それだけしか出来ない。
独りでに動くことはできない。誰かが物語を描いてくれないと、その次に進めないから。見えない明日さえも。きっとこの世界には、何も無くなってしまったのだ。
当たり前の現実。描く者が居なくなれば、色褪せ廃れる。私は気付くのが遅かった。
この世界は止まってしまった。
忘れ去られてたのか、それとも捨てられてたのか? 分からないが、どちらもそう大差ない。
意味のないことだ。あれこれ考えるのは。
それでも思い返す。
嘗て、少女が好奇心一つでこの世界を歩き回った物語があった。その時は、こんなにも真っ白じゃなかった。世界は色とりどりの、温もりで色づいていた。
行く全ての所が、私の大事な物語だったのに。
確かにあった世界の形が。
白く塗り潰された。
世界は空白となった。
私は思う。
最後まで私の物語を綴って欲しかった、と。
もう叶わないとしても。
空白の世界で一人取り残された寂しさを、私は忘れたい。
 




