祖父母の法事の食事会
食事をするところは伯母が予約をしていた。叔父が運転する車の後ろをついていった。
とても立派な店だった。大きくて結婚式場のようなつくりだ。
駐車場に車を停めて母をエスコートした。なんだかんだと、文句ばっかり言う母は81歳。口は達者、だけど足腰は年寄りだ。
長い階段を手すりを持って歩いていく。そして、エントランス。建物の中に入る。
夫が歩いていると、妹が近くに寄っていた。話が聞こえる。
「うちの夫は体調が悪くて、あれから10キロもやせたんです」
「それは、心配ですね」と、夫。
この間見た小太り小男は、10キロ痩せた姿だったのか。もっと痩せた方が健康にはいいと思うけど。
今回の法事欠席の理由だろうか。祖父母の法事なのだから、妹が来ること自体必要はなかった。夫もほんとうは来る必要はなかった。わたしが母の代理で手配しているし、来てくれとお願いされたからわたしは来ているだけだ。夫はわたしに気を使った。それだけ。
それとも、妹の旦那が仕事をしていない言い訳だろうか。
フロントに確認して、会場に入る。靴を脱いで、中に入った。
大きな広間は畳だった。そこにテーブルが並び、椅子が並ぶ。食事が並んでいる。
「美帆はここね」
伯母が言った。夫もここに来たら良い、と言われていた。奥に行く。
「なんで美帆ちゃんがそこにいるのよ」
智子おばさんが言って、妹の向かいに座らされた。わたしの座った場所は智子おばさんが座る。妹と話させたいんだ、と思った。
料理が次々と出てくる。いったん収まった後、母が言った。
「今日はお疲れさまでした。おかげさまで、おとうさんの50回忌とおかあさんの33回忌も終わりました。ありがとうございました。食事を楽しみましょう」
小さな鍋に寿司、刺身にステーキ、てんぷら。ほかにもたくさんあった。豪華。
みんなが和やかに話すテーブル。わたしは話さなかった。ひたすら無言で食べた。最後にメロンが出て、食べきれない料理を持ち帰ろうってことになった。年寄りは食が細い。
「わたしメロン嫌いなんだよね。姉ちゃん、持って帰りなよ」
妹が言った。
は?
なんであんたのメロンを持って帰らなければならないんだよ。
「アレルギーでメロン食べれないんだよ」と、言った。
もちろんメロンは残した。
会が終わって、解散になった。母は、フロントでお金を払っている。みんな車へと戻っていく。わたしは母が戻ってくるのを離れたところで待っていた。
夫がトイレから戻ってきた。
「お母さんってひどいよね。あんなに協力したのに文句しか言わない。年金を申請したのも、市役所に行ったのも、すべてわたしがやった。何もかもわたしにさせているくせに、嫌だったんだ。我慢していたんだ。車を運転されるのも、嫌だったんだ。わたしの事なんてもともと嫌いなんだ。本当は妹と仲良くしたかったんだ」
「以前してあげたことは、終わったことだよ。文句を言うもんじゃない」
「運転してほしくなかったって言ったのはお母さんですけど」
「いいじゃない。お母さんと気が合わないってわかっただけでも。性格が違うんだから、仕方ないよ」
と、夫が言った。
母が戻ってきた。すぐに黙った。
エスコートしながら、階段を歩いて駐車場に向かう。
「お母さんよかったよ、あいさつ。やればできるじゃない。食事の前にあいさつしたから、雰囲気が締まったんだよ。すごくよかった」
夫もうんうん言っている。
「え、そう?あれは、伯母さんに言えって言われたからだよ」
「なーんだ」と、わたし。
そりゃあ、そうか。自分から言うわけない。
「言われなくても、言うつもりでいたよ」
母が言う。
本当だろうか。疑わしい。




