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祖父母の法事 

 朝、まぶたが重かった。眠れなかった。今日の法事も紛糾する。

 朝ごはんを食べて、喪服に着替えた。おばあちゃんの弟を拝むってどういうこと。弟さんの法事を行いたいってこと?伯母と叔父のキレる姿が想像できた。そして、それを見て妹がにやりと笑う。

 母を説得したりはしなかった。その話には触れなかった。思いつきだからうまくいけば忘れるかもしれない。でも、母は「きっと弟さんも喜んでくれるわ」と何度も言ってくる。わたしは話に加わらず、しつこく言われたときは「ふーん」とだけ言った。

 車は夫が運転。助手席にのった。母は後ろだ。

「美帆の運転はあぶなくて、ホントは乗るの嫌だったのよ。来てくれて本当に助かったわ」

 母が夫に言ってる。

「それは申し訳ありませんでした」と、わたし。ケンカ売ってる?

「そういう言葉がイヤミったらしくて嫌なのよね。あー。怖い怖い」

 母が言う。

「本当にこんな娘ですみませんね。気はきかないし口は悪いし。大変でしょう」

 母が夫に言っている。夫は何も言わない。わたしが横で睨みつけているからだ。

 年金を申請したのも、市役所に行ったのも、すべてわたしがやった。何もかもわたしにさせているくせに、ソレ嫌だったんだ。我慢していたんだ。車を乗るのも、嫌だったんだ。じゃあ、タクシーで一人で行けばよかった。自分ですべてすればよかった。

 気持ちは最悪だった。

 お寺について、中に入った。みんなに法事のお菓子を渡した。

 椅子が並んでいる。二列目に伯母と叔父、そして叔父の嫁の智子叔母。最前列が空いていた。父の法事では妹がいつも左に座って真ん中に母。わたしが母の横に座る。

「前に座ってください」

 伯母に言った。

「ここでいいよ」

 深く考えずその通りにした。

 いつものように座った。夫が離れた三列目に座る。

「前に来てください」

 伯母が声をかける。

「僕はここでいいです」

 それ以上は勧められなかった。こんなめんどくさい親戚やわたしの家族とは一緒に座りたくないのだろう、くらいにしか思わなかった。

 大きな仏像の広間で、座って待っていると住職がやってきた。

 持ってきた曽祖父母の位牌を渡した。過去帳も受け取って、お菓子も受け取った。父の仮の位牌もお渡しした。父はすでに、過去帳の中にいる。母は、お布施も渡した。

 住職はお菓子を床の上に置いたが、それ以外は立派な台の上にそれらを並べた。

「今日は梅井芳樹さんとさくらさんの位牌を受け取ってます。お寺でお預かりします」

 そのあと、祖父の50回忌と祖母の33回忌の説明をして、お経を始めた。母が口を挟む隙は無かった。母は何かを言いたげだったが、お経を妨害してまで話そうとはしなかった。

 ナイス、住職。

 そのあと、お経は続いた。終わって、説法があった。

 説法を聞きながら唐突に気づいた。これは祖父母の法事だ。わたしは関係ない、よそに嫁に行った人間だから、前に座ってはいけなかったのだ。それを夫は理解していた。だから、前に座らなかったのだ。だから、三列目だった。前にいるべきは肉親の伯母と叔父だったのだ。

 お経が終わり、別室に案内された。わたしはすぐに行く気になれず、少し離れたトイレに行った。廊下で住職にあった。

「永代経のことを説法してくれと言われたのに、できなくてすみません」

「いえいえ。いい法事でした。もめなければいいのでわたしは満足してます。ありがとうございます」

 永代経の説法を永代経をしていない人に説明するのは変だとは思っていた。伯母と叔父を納得させるために説法してもらおうと思っただけだ。本人たちは納得しているみたいだから、これでいい。

 部屋に行くと、長テーブルを挟んで左側にずらーと並んでいた。一番手前はわたしに開けてくれたスペースだろう、開いている。

 手前右側の列は夫だけが座っていた。わたしは夫の横に座った。わざわざ、祖父母の法事に来てくれたのだから、感謝しなければ。でも、気持ちは追いつかない。

 住職が部屋に入って、和やかにお話しできた。住職の奥さまが八女茶を注いでくれた。出席者全員に配って、出されたお菓子もみんなに渡した。

 お茶は玉露だろう。おいしかった。癒されるとは、このことか。

 父の法事は4月。三回忌。予定を決めたかったがやめた。祖父母の法事の日程を決めたとき紛糾したことを覚えていたから。急に想定外のことを言われると、叔父が怒ることを学習済みだ。何が地雷かわからない。

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