おじさんからの電話 1
仕事から帰ってきてしばらくたった十時すぎ、家電が鳴った。こんな時間にだれ。電話の画面に浩一叔父さんの表示。夫がわたしの顔を見る。電話を取った。
「美帆。フジ姉さんがわけのわからないことを言ってるんだけど。法事の内容は変更したのか。どういう事なんだ」
叔父の口調は荒い。
こんなに遅い時間に、急すぎる。
「なんのことですか」
意味が分からない。お前は関係ないだろう、って言われていたから何もしていない。まだ先の話だし。ゆっくり時を見て確認するつもりはあったけど。
「おじいちゃんの50回忌とおばあちゃんの33回忌をする。二人の永代供養をするって、聞いていましたけど。初盆のときに」
「この間、お義兄さんの法事があったんだけど、その時に母さんの両親も永代供養するって、フジ姉さんが言っていたんだ。美帆、永代供養っていうのはお金がかかるんだ。ネットで検索したら50万とか100万とか。母さんの両親までそんなことをすると、どれだけの金がかかると思っているんだ。なんで知らない人間の永代供養をしなければならないのか。まったく。意味が分からない」
知らない人じゃない。おばあちゃんの両親だ。この両親がいないとおばあちゃんは生まれてこなかったし、おじさんもこの世にはいない。
「何も聞いていません」
「お前の母親はどうなっているんだ。ちゃんと分かるように報告しなさい」
怒りで叔父の声が震えている。
報告するも何も。初耳だ。
「とりあえず、一旦切っていいですか。母に電話してみます」
母に電話した。
「お母さん。おばあちゃんの両親を永代供養するんだって。浩一叔父さんから電話がかかってきたけど。おじいちゃんとおばあちゃんの法事と永代供養をするって予定じゃなかったの」
「おばあちゃんのお父さんとお母さんの位牌が出てきたじゃない。順番から言うと、そっちが先だろ。おじいちゃんとおばあちゃんがあの世に行って、その両親がうちにいるっておかしいじゃないか」
「まあ、そうだね。ひいじいちゃんとひいばあちゃんは、別の時にやってもらったら。わたし帰ってくるよ。叔父さん反対しているみたいだし」
「なんで別々の日にするんだよ。一緒にやった方がいいに決まっているじゃないか。お前は関係ないだろう。何度も何度もこっちに来る必要なんかないよ」
「叔父さんがイヤだって言うなら、分からないように別の日にしようよ。嫌だって人を巻き込む必要なんてないじゃない。わたしがお寺に連れて行ってあげるよ、もちろん。やりたい人だけやったらいいじゃない。順番が気になるなら、こそっと先にしたらいいんだよ」
「うるさいね。お前は関係ないから、口は出すな。お前の意見なんか聞いていないよ」
「だけどね、叔父さんから電話があって」
話の途中で電話を切られた。はあ。母は自分の意見を曲げたりはしない。自分は正しい。それしかない。
母の夫の親、そしてその親をどうするかの話だ。母もわたしもあんなに供養をしたくないと言い張る親戚たちの事情は知らない。母親の意見は真っ当だと思う。だけど、親戚が供養をしたくないと言っているのなら、せめて秘密裏にするとかすればいいのに。
気持ちのない人を呼んで供養する必要があるのか。逆におばあちゃんの両親に失礼だ。
あーめんどくさい。電話したくない。わたしに関係ないから口出しするなって言っておきながら、文句の電話をするなんて反則じゃないか。
叔父さんの携帯に電話したら、その嫁智子おばさんが電話に出た。
「母は気が変わったみたいで、法事については今は聞き入れてくれないんですけど。頃合いをみてどうにか説得はしていきます。していきますけど、期待はしないでください」
叔父さんに電話した。あやまって、電話を切った。




