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罪の意識はあるのだろうか

 一度犯罪を犯すと人間は終わる、と思う。

 犯罪を隠すため、ウソにウソを重ねて、身動きが取れなくなる。寒天に閉じ込められるフルーツのようにじわじわ周りから固めて、結局自分もそこに固まって身動きが取れない。

 つじつまの合わないウソで自分を塗り固めて、旦那がおかしいと気づいても、どうすることもできない。逃げることさえもできない。

 

 家に帰ってきた夫に、書類を見せた。妹の旦那からの請求書に書かれた自筆の字と、妹が書いたあて名書きの字も見せた。

「これどう思う。犯罪者はあき子だけ。旦那はすべてあき子にさせている。旦那を罪には問えない。あの手紙は自分は犯罪に加担していないって証拠の自筆だったんだよ」

「ふーん」

 あまり驚いていない。

「前、近所の田中さんがあの土地いいとこ500万って言ってるってラインで言ってたけど、ほぼ1000万じゃない。ウソつき。まじでウソつき」

「そうだね」

 反応が薄い。

「あき子の旦那がトカゲのしっぽみたいに、つごうが悪くなったら妹を切り捨てようとしていること、わかっているのかな」

「旦那さんを信じているんだろうね」と、夫。

「ひどいと思わない? 」

 夫はため息をついた。

「そんなこと、どうでもよくないかな。あの夫婦が何をしようと僕たち夫婦には関係ないことだよ。あき子さん夫婦はひどいことをした。それだけだ。世の中はこの世で終わりではなくて、そのあとには続きがある。やったことの報いは受ける。そのことは僕たちには関係ないことだ」

「スピリチュアルなんて、信じてるの? あの世とか、まさか閻魔大王とか」

「死後の世界を信じているわけではないけど、続きはあるはずだ」

 そんなのあるわけない。それに関係ないのはあなただけでしょう。わたしには関係あるんですけど。わたしは相続人なんだよ。

「お母さんはお母さん。うちはうち。あき子さん夫婦はあき子さん夫婦。それで、それぞれ生きていけばいいんだよ、サキさんがそう言っていたでしょう」

「わかってるよ」

 もっと驚くと思ったのに。

「妹さんを助けたかったら、助けたらいい。美帆の妹だからね、好きにやったら。でも、だまされてやったのかな。妹さんと旦那さんが話し合って、土地を取りあげることも、両親を追い出すことも決めたんじゃないのかな。美帆はあき子さんにあんなにひどいこと言われて、職場に電話をかけるって脅されていたんだよ。お母さんのことだって休暇を取って、九州まで帰って、一人ですべてやっているんじゃない。どんなことをされたか思い出して、それでも助けたいならそうすれば」

 このまま、妹に巻き込まれたら、わたしたち夫婦は破綻する。

「わたしの意見なんて聞かないだろうけど」

 助けるって言っても、妹とは話したくはない。どうせ怒鳴られるだけだ。わたしが言ったアドバイスも、きっとあの旦那に伝えて、結局もっと怒鳴られる。それだけだ。

 わたしは居間に置きっぱなしだったキャリーバックを片づけた。中身を洗面所、洗濯機の前のかごに入れた。最近は母と妹のことばかりで、家のことはほったらかしだ。


 もしわたしたちが離婚したら妹のせいになるのかな。

まあ、違うだろう。それは、もともと信頼できる関係じゃなかったってことだ。本当の夫婦だったら、どんなことも乗り越えられるはずだから。

乗り越えられなかった。ただそれだけだ。

 

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