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山形の洋梨ジュース

 お父さんは認知症になってから、あいつに土地を取られるって、ずっと言ってた。それをわたしは「またまたぁ」って言って信じていなかった。

 それでなのか、あの二人は家に寄りつかなかった。認知症がひどくなってから、お父さんが話せなくなくなってから家に来るようになった。でもそれは、父の介護が母一人では大変だから、様子を見に来ていたんだろう、と思っていた。

「一度、お父さん足が悪いからバリアフリーのマンションに引っ越したらいいんじゃないかって話があったんだよ。車も運転できないから、病院の近くがいいんじゃないかって。あき子夫婦がお父さんたちの家賃を払うから、代わりに実家であの夫婦が住むって話があって。お父さんが、家を取られるってごねたから立ち消えになったけど」

 その話はわたしが久留米に帰ったときに出た。わたしは普通に喜んだ。お父さんのことを心配してくれてありがとうって思ったのに。

 家のリビングで夫と話していた。母がいたときは聞かれたくないこともあったけど、今は自由に話せる。

「年寄りに新しい環境で住めって無理な話じゃないか。それ、普通の人が聞いたら家を乗っ取ろうとしていると思うよね」

夫が言う。

「あの時は優しいと思ったんだよ、家賃払うって言ってくれるし」

「将来の車いすのことを考えるのなら、スロープつければいいと思うよ。包括センターに聞けばよかったのに。補助金制度だってあったかもしれない」

「そうか、そういう選択肢もあったね」

「美帆は本当に本質が見えないね。普通の人が聞いても、家を取られると思うでしょ。取った後は家賃を払い続けるかどうかも怪しいし」

 最近は夫の言葉にもイラついている。

「わたしのこと遠まわしにバカって言っていますか」

「言ってないけど。言葉通りに受け取りすぎなんだよ」

 あのときの夫とのケンカはまだ収束してない。あやまってないし、あやまられてもいない。考えが違うだけだから、謝るのも違うと思うけど。

 被害届を提出しても、このままじゃ、あき子だけが罪に問われるんじゃないか。あの男は無罪放免。何もしていない。手先として使われたあき子だけが悪い。なんで。二人で相談してやっているはずなのに。

 あいつは何度も再婚して、もしかしたら何度も名前を変えた。旧姓の山田も前の奥さんの名字かもしれない。

 このままでは、犯罪が成功体験になる。

「結局、泣き寝入りなのかな」

「泣き寝入りとか思わなくていいんじゃない。今はお義父さんのそばに住んでいるお義母さんは、幸せなんでしょ、いいことじゃない。自由気ままな生活は手に入ったし。それとも、あの二人と同居した方がよかったと思っている? 」

「まさか。そんなことしたら、部屋に監禁される」

 リビングには出てくるな、部屋にいろって言われていた。結局出てくる母に外から鍵を付ける。ありうる。

「監禁はされないと思うよ。新しい家だから汚したくないでしょ」

「旦那はきれい好きだって言ってるんだけど、引っ越しの時の家の中、汚くて埃まみれだったって、お母さんが言ってたんだよね。徳島まで送ってきたお父さんのあの車も、錆だらけで洗車もしてないようだったんでしょ」

「汚かったね。でも、家は引っ越すから掃除しなかっただけかもしれないよ。損得勘定でモノを考える人なんじゃない」

「そんな人は、きれい好きじゃないでしょう」

「まあ、そうだね」

「あれをきれいだと思う妹はおかしいでしょ。疑問に思わないのかな。視界にはなにも映ってないんじゃない」

「さあ。旦那が言うことはすべて正しいと思っているんじゃない」

 やっぱり洗脳されているのかな。おかしいと突っ込みたくなることは今までたくさんあったと思うけど。


 芳川病院から電話があった。新曽我病院の受診日は2月17日水曜日。一週間後だ。やっと、外れたチューブを入れることができる。母一人で立ち合っても大丈夫、とのことだった。連絡した。母は喜んでいた。

「わたし一人で行くよ。大丈夫だから」

「わたしも行くよ、お母さん一人じゃ心配だし」

「仕事、クビにならないの」

「大丈夫だよ。16日と18日はもともと休みだし。17日を有給にしてもらう。忙しくない日だから。介護タクシーも予約しておく」

「ありがとう、お願いね」

「今回は車で行くよ。また、クラスターが発生して飛行機キャンセルとか困るから。同じことが起きたら、わたしは久留米に行かないからね」

「はいはい」

 母の返事。わかっているのかなぁ。まじでしっかりしていないんだから。心配なんだけど。

 介護タクシーに電話した。予約は取れた。ストレッチャーもレンタルした。


 一週間前の平日だから、職場にも有給のお願いは言いやすかった。事務所で、携帯のスクリーンショットを見せた。西日本新聞の記事。病院のクラスターの記事だ。

「わたし、ウソついていませんからね」

「大丈夫だって。信じているよ」

 店長の大沢さんが言う。

 ほんとかなあ。壮大なウソつきだって思われていないんだろうか。家を乗っ取られていて、母と父の面倒をみるなんて、普通じゃありえない。

 自分が一番信じてないのかも。こんな恐ろしいこと、起こるはずがない。ドラマでも、こんなの見たことないよ。

 こんなクソみたいな話、誰も見たくないか。


 16日の朝6時半ごろ家を出発した。途中広島で給油。飲み物を結構飲んでいたから、トイレも近かった。こまめにパーキングに寄った。香川県から瀬戸大橋を渡り、岡山、広島へと運転する。大好きな音楽をかけまくる。一人きりの運転。音楽がなければやっていけない。長かった。やっと、門司に入った。休憩してトイレに行き、関門海峡へ。やっと九州。ここから久留米までが一番遠いと思う。目的地に着いたのは17時前くらい

 団地について部屋に入ったら、母はとんかつを揚げていた。本当に揚げ物が好きなんだ。揚げ物を揚げるのは危ないからやめてと言ったところで、ケンカになるだけなんだろうな、と思った。

 野菜を食べて、とんかつとみそ汁も食べ終えて、お風呂に入った。簡単に明日の説明と打ち合わせをして、準備の確認。母の隣で寝た。

 次の日、朝早く目が覚めた。朝食を取って早めに家を出た。芳川病院の駐車場に車を止めて、入り口に来た。自動ドアは締め切りになっていた。ドア前のインターホンに当院に御用の方はお声をかけてください、と書いてあった。ボタンを押す。

「今日、入院中の父を新曽我病院に受診するために来ました。椛島和之の家族です」

 言った。

「ご準備できるまで、外でお待ちください」

 コロナ過だ。病院に入れたくないのだろう。この対応をしていても、クラスターを発生させた。

 二月の中旬。寒い。冷たい風が顔に当たる。母は着ているコートを強く握りしめた。病院内の看護婦は薄い看護服で院内を歩き回っているのが、ガラスの自動ドアから見える。外の向こう側に一組の夫婦が外に並べられたパイプ椅子に座っていた。母はその横に座った。30分ほど経って、介護タクシーが到着した。待っていた一組はすでに病院内に入っていた。

 介護タクシーのおじさんが、インターホンでなにかを話した。その5分後くらいに、父がエレベーターからストレッチャーに縛られた状態で下りてきた。

 父はそのまま、玄関から外に出された。完ぺきに外。車が前の道路を走っている。砂埃が舞った。父はパジャマだけの姿で、その上には何もかけられていない。

「まあ、お父さん、寒くないの」

 母が、持ってきたベンチコートを上からかける。父は顔を少しも動かさない。身長が高いからストレッチャーから足がはみ出ている。体は相変わらず細くて、棒みたいだ。顔は骸骨のように小さくて、色は白い。マスクで顔が半分覆われている。目やにが両目についていて、肌はカサカサ。目はうつろで、くぼんでいる。何も視界には入っていないだろう。こんな状態で、生きていると言えるのか。

「ここで乗せかえてください」

 看護師が言った。まじですか? 風がビュウビュウ音を立てて吹いている、ここで。真冬だ。雪が降ってもおかしくないだろう温度。凍死より、コロナか。

「こんな状態の患者をここで下すのか。ここはこんなに寒いんだぞ」

 介護タクシーのおじさんが言った。

「はあ」

 看護婦はタクシーのおじさんとともに、病院内に入った。ガラス張りの自動ドアの向こうで、ストレッチャーに父を乗せかえている。介護タクシーのおじさんが持ってきた毛布で、お父さんはぐるぐる巻きにされた。

「あの、中に入ってもいいですか」

 自動ドアから手動で開けて、顔を出して聞いてみた。

「何か、御用ですか」

 看護婦が無表情のまま言った。入ってくるなって威嚇しているように見えた。

 他の病院に受診するために、父を連れていくために来ているのを知っていて、御用ですかって、おかしくないですか。

 あの看護婦はお父さんを人間だと思っていないし、わたしたちが人間だとも思っていない。血が通っているなんて知らないだろう。無機物。物扱いだ。

 出発前に紹介状を無表情の看護婦から渡された。

「チューブは3週間ごとの交換だと、新曽我の担当医から言われています。転院してから三か月以上経っています。大丈夫なのか、聞いてきてください」

「え、聞く?なに、なにを? 」

「聞いてきたら、こちらに教えてください」

 どういうこと。そういうのは、芳川の主治医が新曽我の主治医に電話して聞けばいいだけじゃないの?

 もしかして。

 3週間どころかそれ以上経ってきて安全かどうかわからないから、看護師がチューブ抜いたんじゃないの。だから、あの看護婦、いつの間にか抜けてたんですよね、で、ごまかしたんじゃない。この病院、大丈夫?

 お父さんはこんな状態で、この病院で大丈夫なの?


 介護タクシーのおじさんは優しかった。新曽我病院に父を丁寧に降ろしてくれた。母にも優しく話しかけてくれた。今から受診して、帰りにまた迎えに来るように頼んだ。

 新曽我病院は院内に普通に入れた。自動ドアも閉め切りじゃない。受付前のソファーには診察を待つ人がたくさん座っている。

 父はストレッチャーの上で寝た状態。通路前の広いスペースに通行の邪魔にならないよう端に置いて母に託した。キレイなカウンターで受付を済ませ、受診場所へ移動。場所は二階。通りがかりの看護師の人が声をかけてくれて、受診場所までストレッチャーを押してエレベーターに乗せてくれた。

 二階の受付もすませた。父はストレッチャーごと看護師に引き取られ、わたしたちは待合室で待っていた。

 番号を呼ばれ診察室内に入った。母はトイレに行っていた。わたし一人で中に入った。

 医師はあの若い、前の担当医。キムタクもどきだった。外田圭介医師。

「処置は終わりました。チューブはスムーズに入っていきましたよ。嚥下機能が著しく低下しているんでしょうね、苦しそうにはしてませんでした、本人が楽でよかった」

 笑顔で話している。

「この間ネットで検索したら、チューブを入れたら、もう二度と口から食べ物を取ることは出来ないって書いてあったんですけど。チューブは死への片道切符だって。今後、お父さんにジュースを飲ませたりとかは、できないんですか」

 母は母の故郷で有名な羽黒山にお札をいただいてから、お父さんが病気が治ったら温泉行く、大好きだった山形の洋梨ジュースを飲ませると、ことあるごとに言っている。そんなの無理だよって毎回否定する。けど、そんなことないと反論される。母は父の病気が治ると、本気で思っているようだった。

 医師に聞くだけ聞いてみよう、とずっと思っていた。

「ネット情報ですか」

 医師が露骨に嫌な顔をする。

「胃ろうを付けて、回復を待つ手もありますよ。病気が回復したら、口から食事ができることもある。今は体力をつけて、手術を待つといいですよ」

 伯母ちゃんは、胃ろうを付けるのは反対している。それにこの状態のお父さんが回復するとは思えない。一度胃ろうを選択すると、もう変更はできないのか。

「一口だけとかでも、無理ですか」

「嚥下は機能してないと思います。あんなにスムーズにチューブが入ったんだ。多分ムリです。機能しているかどうかは、チューブを抜いてから調べないといけませんが。でも、今の状態を見る限りは不可能でしょう。チューブ抜きますか? 」

 そんなことをしたら、栄養の取れない父は死んでしまう。

「ちょこっとだけでも、ダメってことですか」

 わたしもしつこいのだろう。でも、お父さんのことを聞くのはここだけしかしてない。可能な限りいろいろ聞きたい。お母さんの希望をなるべく叶えてあげたい。

「それじゃあ、ジュース飲ませてみたらどうですか。でも、死ぬよ。死んでもいいなら、飲ませたらいい」

 医師は吐き捨てるように言った。

「今のお父さんの状態ってどうでしょうか、病状とか」

 芳川病院からは一度も父の状態を説明されたことはない。病状の説明を頼むには、主治医の予約が必要なのだ。妹にわたしが来たのがばれたくないから、父の主治医が誰なのかさえ知らない。病院からも説明を打診されたこともない。

「はあ? こっちは、処置を頼まれたから、やっているだけだ。途中経過なんて知らない。どんな症状かもわからない。聞くなら、入院している病院に聞いてくれ。こっちは関係ないんだから」

「芳川病院から、チューブの交換は3週間に一度って言われているみたいなのに、3か月も経ってしまってます。大丈夫ですかって聞かれたんですけど。新曽我に聞いてきてくれって、担当の看護師に頼まれました」

「はあ? 」

 声が怒りで震えている。

「どういう意味なんだよ」

「さあ。どういう意味なんでしょうか」

 逆に聞いた。キムタクの目が三角になっている。

「3週間っていうのは推奨している期間で、別に3週間じゃなくてもいいんだよ」

 言葉尻が乱暴だった。そんなに怒んなくてもいいのに。

「わかった。紹介状に書いとくから、持っていって」

 怒っているっていっても、そこまでだけど。10段階で言えば3くらい。妹の怒鳴り声の10を振り切った叫び声とは全く違う。押さえているんだろう。

 母がトイレから戻ってきた。そのあとは、お父さんがストレッチャーに乗ってもどってきた。お父さんの目は元気だった。今は目に生気が宿っていた。わたしをじっと見ている。体が温まったのか。芳川より新曽我の方が看護が親切なのはわかった。優しく声をかけられたのかも。そんな感じがした。

 お礼を言って診察室を出た。

 もう二度と、処置をしてくれないかもしれない。怒らせたんだから。頼まれたから、仕方なくやっているだけなんだから。

 みんなが待っている待合室ではなく、他の処置室に通された。個室だ。父と母とわたしだけ。母は父にいろいろと話しかけていた。最近引っ越したことや、近所のこと。ヨガのこと。

「お父さん、わかってくれてる。良かった」

 ホントに? その根拠は何だろう。

「もう少しここに居れないかな。やっと会えたのに、病院に戻るなんてイヤだよ。どうせ、面会させてくれないし。しばらく会えないんだから」

「駄目だよ、帰してあげなきゃ」

「イヤだよ」

 ガキか。

 胃は空っぽ。早く栄養を取らせてあげなきゃだめだろう。まじでガキだ。

 母を残して会計をしに行った。お金を払って、二階に戻った。介護タクシーにお迎えを頼んだ後、さっきジュースのことを話して、医師にキレられたことを言った。

「バカだね、本気でジュースを飲ませられるなんて思ってないよ。言ってるだけだよ」

 お母さんが望んだことを聞いたのに。なんだこれ。

 夫に言われたことを思い出した。

「言葉通りに受け取りすぎなんだよ」

 そうですよ。わたしはバカですよ。


 介護タクシーで、病院に送ってもらった。お父さん担当のソーシャルワーカーがわたしたちの帰りを待っていた。スーツを着た細身の男だ。電話で話したことしかなかったが、イメージと違った。演歌歌手と似ている声だったからその演歌歌手の風貌、小太り男だと思っていたが、キレイな顔立ちをしていた。年令は40くらいか。若作りしている。

 わたしは朝みたいに門前払いされると思っていたが、病院内に入れてもらえた。お父さんを病院のストレッチャーに乗せかえて、お父さんはエレベーターに乗って病室に戻っていった。ソーシャルワーカーに主治医から病状を説明してほしい、今日はダメですかと言ったら予定が埋まっていてダメだと言われた。男の声はガラガラ。酒やけかも。

「明日徳島に帰るんです。明日とかは? 無理ですか」

 わたしはお願いした。

「確認します」

 どこかに消えて、また目の前に現れた。

「2時以降ならいいですよ」

「じゃあ、2時にお願いします」と、言ったら母が「車で帰るのに、時間大丈夫なの」って言った。

「しょうがないじゃない。2時からしか空いてないんだから」

「でも、帰るのが遅くなるじゃない」

「じゃあ、お母さんひとりで聞いてくれる」

「イヤだ」

「それなら、仕方がないよね。せっかくの機会だから、いろいろ聞こうね」

「しょうがないね」

 母が言った。


 次の日、母が午前中に病院行こうと言い出した。早くしてくれるかもしれないから、と。毎回思うけど、お母さん中心に世の中は流れていない。ダメと言われたじゃないか。母を説得した。時間より30分ほど前に病院についた。着いた後も、なんですぐに説明してくれないのか、早く来たのだから早くしてもいいはずだと怒っていた。時間前にするわけがない。何度も説明して、最後には母の声が聞こえないふりをした。

 前は妹が怖かった。病院にも入りたくなかった。今はラインを見てもそこまで恐怖は感じない。でも、病院内に入って待っている間、手が震えていた。妹には会いたくないのは変わっていない。恐怖を克服したと思ったのに。

 2時を少し過ぎて、院長室に呼ばれた。中に入る。主治医は院長だったのか。だから、みんな遠慮がちか。風貌はキリスト。笑顔で話をしてくれた。人当たりはよく見える。

 チューブのことを聞いた。チューブは十二指腸まで通っているとのことだった。胃までなら、ここでもできる。でも、父は胃までだと、体に入ったものを吐いてしまう、と。

 それじゃあ、ジュースなんて無理じゃないか。

 延命治療も胃ろうも希望していないことを伝えた。痛いこともしないで、と母は言った。母の表情を見た。満足しているようだった。それが一番だ。

 ソーシャルワーカーも、院長にかなり遠慮しているように見えた。院長室に一緒に入り、わたしたち親子が何を言うのか、後ろで見張っているように見えた。きっと、院長はこの病院では神なのだ。めんどくさい人が主治医なのだと思った。神には誰も逆らえない。チューブのことだって、看護師は院長には聞けないのだ。病状の説明だって、神が自らするわけがない。下々が懇願してはじめて成立するのだ。妹の旦那の言動がおかしかったことも、気づかないのかもしれない。精神科の病院なのに、なんで周りが洗脳に気づかないんだろう。そう思っていた。でも、そもそも、そういう上下関係がはっきりした病院だったんだ。これはむしろ普通のことだったのかも。だから、わからなかった。

 この医院長が妹に偽造書類を渡すわけがない、と思った。

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