僕はまた恋をする
ああ、また恋をしたんだ
君のまっすぐな瞳。
君のサラサラな髪の毛。
君のあまり高くない身長。
何度君に恋をしたら
僕は君に想いを伝えられるのだろうか。
「初めまして。しおりちゃん」
「初めまして」
初めて会ったあの日から私は恋をした。
完全な一目惚れだった。
いつの日か、いつの日か、いつの日か、きっと。
そう思いつづけて15年。
今日。。。
「初めましてだよね」
「初めまして」
君から話しかけてくれた。
とにかく笑顔が眩しかったのを覚えている。
ぎゅっと胸が締め付けられる感覚。
ああ、恋をした。
彼とは同じ学校ではなかった。
たまたま知り合ってたまたま話すようになった。
そう、全部偶然。
偶然だった。
「ギーーギーー」
ゆらゆら動くブランコ。
「暇だなあ」
「そんなところで何してるの? 一人? 」
とある男の人が話しかけてきた。
年は中学生? いや小学生?
どっちだろうか。
「一人じゃ危ないよ
一緒に帰ろう」
「いやだ、帰らない」
初めてだった。
親にも言ったことのないわがまま。
困らせたことはわかっていた。
ただ、帰りたくなかった。
「どうして? 」
君が一言発した。
クリクリな目。
伸びた髪が年を分からなくさせていた。
「、、、テスト」
「テスト? 」
「テストでね、悪い点とったの
怒られちゃう」
「ふふっ」
「何がおかしいのっ? 」
私がぷんぷんしていると彼は静かに頭を撫でてくれた。
その手が優しかった。
少し大きくて。でも華奢な手だった。
「ごめんごめん。俺もそんなことあったからさ」
「本当? やっぱり怒られた? 」
私が答えを急ぐように聞くと、
そんなに焦らないの、と言わんばかりに微笑んでいる。
「いや、怒られなかったよ」
「なんで? 」
「さあ」
彼はそう言いながら笑っていた。
そういえば今思えばずっと笑っていた気がする。
「なんでなんで? 」
私が困らせるくらい、なんで、と聞いても君は困ったそぶりを
一度も見せなかった。
「分からない。まあ意外と怒られないね
なんでだか分からないけど」
「ねえ、その服なあに? 」
聞きたいことがたくさんあった。
私が幼かったからだろうか。
それとも君が魅力的だったからだろうか。
「これ? 制服のこと? 」
「せいふく、、、
かっこいいね」
私がキラキラした目で見ていると彼はなぜか楽しそうにしていた。
「君はなんて名前なの? 」
「しおり。 飯島しおり」
「しおりちゃんか」
「可愛い名前だね」
「そういえば君いくつ?
あまり大きく見えないけど」
つづけて彼が質問してきた。
「あ、あまり大きく見えないは失礼だね。ごめんね」
君が、罰が悪そうに言う。
本当に悪いと思っている様子だった。
「別にいいよ。大きくないもん。
私、小学2年生。 あなたは? 」
「僕中学一年生」
「大きい、、、」
「ふふっ 僕が大きく見えるの? 」
「うん」
大きかった。
身長だけじゃない。
何か大きいと思わせるものがあった。
「本当に俺が大きいと思うの? 」
「うん。そうだよ。なんで? 」
「いや、学校でちびって言われてるからさ。
なんて、君言うことじゃないか」
「いいんだよ。聞きたいもん。あなたの話」
「そう?」
目があった。
たったそれだけなのに遠足にきた子供みたいにはしゃいでいた。
馬鹿みたいにワクワクしていた。
聞けば彼は親戚の家が近くにあってここにきていた。
そうしたらたまたま下校途中の私と会ったのだ。
彼は親戚の中であまりいい待遇ではなかったようだった。
だってここにきているから。
なんとなく幼いながらにそんな気がした。
仲が良ければ普通こんなところに来ないだろう。
そう思っていた。
「ねえ、今日はここにいるけど明日は来ないの? 」
私がなんとなく聞いてみた。
幼かったから分からなかった。
明日もここにくると思っていた。
「来るかもしれないし、来ないかもしれない」
「んーーー? 」
「どっち? 」
「分からない」
「ふうん」
「なんで分からないの? 」
「たまたま来ただけだからね」
たまたま。
その意味が分からなかった。
今日があるから明日もある。
そう思っていた。
私は勝手に明日も来ようと思っていた。
明日は来ないのに。
「送って行ってあげる。
おうちどこ? 」
「いいよ。そんなに遠くないもん」
「結構話しちゃったからさ。
お家の人に言わないとダメでしょう」
「ええ、そうなの? 」
「そうだよ。心配して迎えに来ちゃうよ」
「え! それはやばい」
覚えたての単語を使う。
楽しい。
「家はねあっち行ってこう! 」
「ふふっ。 ついていくね」
「うん」
楽しかったのは今でも覚えている。
なんの話でもなかった。
どうでもいい話。
それでも楽しいと思えた。
なんでも話を聞いてくれてなんでも答えてくれた。
優しかった。
気がつくともう家の前だった。
「お家の人はもういる? 」
「ううん。今日はいない」
「買い物行くって言ってた」
「そうか。まだここにいようか? 」
彼の問いかけに迷った。
彼も用事があるかもしれない。
で絵もいてほしい。
どうしようか。
迷っていると彼の方から話しかけてきた。
「もうしばらく話していようか」
「飲み物ある? 」
「ある! 」
元気よく答えるとそれはよかったと笑っていた。
飲み物を飲む。
それだけでも緊張していた。
なんでだろうか。
「ねえ、聞いてもいい? 」
「なあに? 」
私がとぼけたように聞き返す。
「好きな子っている? 」
「僕はいるよ、君は? 」
その瞳がやたらまっすぐだった。
何かを見透かされているようだった。
私を通して何かを見ているのかと思ったけど、そうではないらしい。
「いる」
思わず答えてしまった。
好きな人なんて目の前にいる君なのに。
今できたばっかりなのに。
どうして答えてしまったのだろう。
考えても無理だった。
考えるには時間が足りなかった。
「、、、君が好き」
「なああんてね」
ドキッとした。
その眩しすぎる笑顔。
眩しいくらい輝いていた。
私には勿体無い。
どうしてだかそう思った。
「冗談だよ」
「忘れて? 」
「、、、うん」
うん。と答えるのも悲しかったが答えるしかなかった。
悲しいくらいの歳の差。
一体いくら待てばいいのだろうか。
「じゃあ、こんな時間だから。
またいつかね。
話してくれてありがとうね」
「送ってくれてありがとう。
またね」
「あ、待って」
君が振り返った。
「しおりちゃん。僕で良ければ、迎えに行ってもいい? 」
「え? 」
急だった。
急な一言に私も驚いていた。
「もし君が待てるなら、大人になったら迎えに来るね」
「そうしたら、僕と付き合おう
、、、大きくなったらね」
「うんっ! 」
若かった。
わたしたちは若かった。
展開が急だった。
それでもよかった。
好きだった。
いつから私があなたのことが好きだとバレていたのだろうか。
分からないことだらけ。
知らないことだらけ。
それでもよかった。
ただ待っている。
運命の王子様へ。
お迎えまだですか?