村での生活
中世ヨーロッパ風の、剣と魔法のファンタジー世界。
そんな世界で俺がヴァンという名前で生まれたのは、小さな農村だった。
周りを豊かな自然に恵まれた、のんびりとした雰囲気の漂う牧歌的な村だ。
「おい、行くぞ」
「「うぃーっす」」
「いってらっしゃい~」
父親に連れられた兄たちが仕事に出ていくのを見送る。
俺はまだ小さいので、働かないで済んでいるのだ。
「じゃあ、母さん、俺も外に行ってくるね」
小さな足で歩き、村の外れに着いた。
「えーっと、今日はどれにしよっかな」
人気のないこの辺りには、色々な廃棄されたものが打ち捨てられている。
「」
もともとはたいそう立派な木だったのだろう、太い幹の前で、片手を振り上げる。
「よっ、と」
掌を広げ、手刀の形を取った右手を振り下ろすと、その幹はスパンと切れた。
「よしよし、大分慣れてきたな」
俺は断面が綺麗に切れていることを確認する。
いくら廃材と言っても、木の幹が五歳児のチョップで簡単に切断出来るほど腐り柔らかくなっているわけではない。これは五年前、俺に与えられた加護の力によるものだ。
剣神の加護。
剣を振るのが異常に上手くなるという能力らしかった。
この五年間のうちに、己に与えられた加護の能力の評価はおおよそ固まっていた。
この能力はチートだ。間違いなく。
とは言え、初めて試した時は加減が上手くいかず、下の地面まで削ってしまったし、手の平が擦り剝けてしまった。
それからは毎日こうしてこっそりと村の外れに打ち捨てられた木材なんかで試し斬りをしたりして、感覚を覚えることにしているのだ。
この村、他にやることもないしね。