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「ふははー!私が2人目の魔王!暴食のベルゼブブですよ!」
なんかずっと試合会場から出てかないなと思ったら、そのまま2試合目で高らかに宣言してきたマッドアルケミストグルメ。スライスしたヒツジ肉を水平に積み重ねて焼き、今度はそれを垂直に削ぐという、なんとも食べごたえのある食感を生み出す料理の屋台を開き、行列つくったまま宣うので、仕方なく列がはけるまで待った。並んで俺も食った。うまいなこれ。
「私はルシファーの様にはいきませんよ。何しろ傲慢を司る彼女とは違って、侮りなどないのですから。さあ、私の相手はどなたですかー!?錬金術の粋を尽くして打ち倒してご覧にいれますよ」
なんか、凄い負けそうな臭いがプンプンなんだけど。おねーさんズからは誰が来るんだ?
ズドン、と、上空からヤギが落ちてきた。地面を陥没させつつ堂々四つ足で立っている。どこから降ってきたよ。その上に跨がるは、牧場のおねーさん。
遊牧を司る神様だと、土地が痩せてて資源に限りがある種族が信仰したりするから厳格な事が多いのだが、このおねーさんは比較的おおらかな側面のおねーさんである。多分、死と闇の女王を信仰していた遊牧民が大分イケイケで、家畜が減って貧しくなったら人間相手に鉈を奮って略奪繰り返してたからだと思う。
何が言いたいかと言うと、牧場おねーさんも大分イケイケである。
「ふしゅー。ふしゅるるぅ。うちの家畜が1頭居なくなりましたわぁ。ヒツジが」
縦ロールのおしゃれな髪型に、粗野な貫頭衣を盛り上げる乳と胸筋。おしとやかな喋り方に獰猛な笑み。アンバランスさが魅力的なおねーさんである。一緒に農耕民から税取り立てたい。
ちまちま食っていたマッドアルケミストグルメの屋台肉を横からかぶりつかれた。別のものにもかぶりついてほしいぜおねーさん。
「スライスとスパイスでごまかしてますがぁ、3歳のマトン肉ですわぁ。うちで居なくなった家畜とおなじ」
マッドアルケミストグルメから、屋台のグリルが原因でない汗がぶわっと吹き出た。
「奪われたら奪い返す。荒野の掟ですわぁ…!?」
「うぉおぉー!生まれたこの肉に罪はなぁい!あるとしたら私だぁーー!」
「ハナからそうつってんですわよおぉぉぉぉぉオラぁァ!!」
まあ、結果は火を見るより明らか。両手足を棒で括られた蛮族丸焼きスタイルでぶち転がされたマッドアルケミストグルメ。初心者の街の機能として、少年少女を導く立場にあるので、盗みはめちゃくちゃお仕置きされるのである。
これは神と王との契約の王側の部分。国体を維持するための約束ごとであって、基本的にやったもん勝ちバリートゥードな宗教であるので神様側にしてみればそれも人の性だから、とバレなきゃ黙認してくれるのだが。
食への探求が暴走した結果お咎めを受けてしまったな。しかし、悪魔側大丈夫か。ストレート負けしない?
「大丈夫だよ兄さん。ちゃんと対策はしてある。さあ、配当金受け取りにいこう」
ん?2試合目はコインの使い方を決めるんじゃないのか?
「そうだよ。だから勝ち負け気にせずに気楽にコインを賭けられたよ」
ほほう。なるほど。1試合目は確かにお互いの10枚のコインを賭けて争った。2試合目はそのコインの使い方を決めると言っていた。だから、今回賭けたコインは完全に趣味。俺とのゲームには使う気が無いという事だろうが、だとしたら何を考えてる?何を仕込む気だ?
「2試合目は兄さんの勝ち、と。ふふ、勝ち負けとは違う気がするけどね」
板切れに勝ち、負け、と刻む草臥れ過去形ことディアブロ。そうだな。勝ちを譲られた様な気分だぜ。
「ディアブロ。お前のそのアンニュイな顔を驚愕に歪めてやるぜ」
「ふふ、良いねぇ兄さん。楽しそうだ。これからもっと楽しくなるよ」
へっ、望むところだぜ!