diavolo-diavolo-bodyblow3
「悪魔、負けちゃったか。残念。じゃあコインを回収しに行こうか。何枚賭けたの?」
10枚全部だぜ。神様側にな。
「ああ、奇遇だね。僕も10枚全部さ。神様側に」
引き分けだね。と、小さな板切れに1試合目、引き分け、と刻むディアボロこと草臥れ過去形。
へぇ。てっきり、ライ麦畑をけしかけて何かやらかす作戦でも立てていたのだと思っていたが、ルーシーちゃんが負けるのは想定の内だった、ってことか?
面白いじゃん。ここからどう持っていく気だ?
草臥れに渡されてた割札を持って闘技場の端へ。てっきり俺たちだけでゲームしてると思っていたのだが、街の少年少女全体でコインを賭けていたらしく、配当金を受けとりにいくとのことだった。
何しろ敬虔な者ばかりなので、オッズが低いかとおもったのだが、割には意外に悪魔側と拮抗していた。どんな場所にも逆張りの輩というのは多いのかもな。人間とは度しがたい生き物なのだな。
「あ、B君兄様、おめでとうございます。配当をどうぞ」
胴元は旧王家の継承者、クソガキ王子様のベイビーだった。2年近くの旧王家との陣取り合戦、外に討って出るわけにも行かず、退屈していたのだろう。こうした催事をよく生業にしている。人気取り、というか無害アピールも兼ねているのだろうが。
旧王家の継承者であるために、命を狙われかねない彼が取った安全策は幾つかあるが、最たるものは顔体中に刻んだ刺青だろう。各人類の、大罪人に彫る刺青を、可能な限り全て彫ったのだ。文化が進み過ぎてとっくの昔に廃れた無食子の刺青すら資料を引っ張り用意していた。
王として擁立されるつもりは無いという降参の意思表示と、既に公的な機関で裁かれているから手を出せば氏族への反逆や外交問題になるぞ、という脅しを兼ねているのだ。
余計な争いで人死にがこれ以上増えないよう、自分の体を傷付けたのだ。出来た奴である。代償を払った事で聖性的な魅力が増し、俺の心を揺さぶる意図もあるのだろう。一石三鳥の構えである。出来た奴である。
初対面で下腹に付けたB-Tの焼き印も治さずそのままにしてヘソだしルックで晒している。てか、バックレスノースリーブノーパンと、ほとんど布地がない。エロい。 例の紳士無食子の仕立てたお洋服を嬉々として着こなしている。いや、出来た奴である。
ちょっと領土分けても善いかなと考えちゃうぜ。実際、狗尾草や這鼠刺、無食子の国のようなダンジョン経由じゃなく、真っ当な、地続きの国境を持つ諸外国なんかは急に皇家立ち上がって戸惑っているからな。小さい領地与えて、対外的には数十年かけてゆっくり交代させるべきか。
もちろん、その場合はうちのかわいいクソガキ王子様の傀儡政権で俺が縦横無尽、彼奴の寿命尽きるまで縦横にするが。
……いや、でもレベルドレイン頻繁にするだろうし年取らないよな?…………あれ?政権交代、永遠に起こらなくね?
まあ、いい。それしても、神様が実際に側にいるこの古い古い国ですら、急すぎて国が割れたのは予想外で無駄な被害が出た。近代化の波がこの国にも来ていたんだなぁ。
「朕のお家もしばらく安泰そうで何よりです。B君兄様、どうぞ末永くよろしくお願いいたします」
こてん、と小首を傾げて微笑むクソガキ王子様。高貴な癖に庶民ぶった仕草身に付けやがって。趣深くてムムムッてなっちゃうぜ。怒れる国民に代わって、後で刑罰を与えねば。肉刑をな。