diavolo-diavolo-bodyblow2
「そ、そんな、ウソでゴザロ?」
「うふふ、ざーんねんでしたー。現実でーす」
「そんな!ルーシーちゃんが、傲慢を司る魔王、ルシファー、だったでゴザルなんて!」
1回目の試合が始まる直前に明かされた衝撃の真実。癖歪み忍者ライ麦畑のガールフレンド、我らの同年代とは思えないレベルのダイナマイトくノ一、ルーシーの正体は悪魔であったのだ。
附子の彼女とイチャイチャしだして、ああ、出会った頃の、訓練所でのフレンチなレベルドレインがここにきて実を結んだか、エリーゼのことももしかして性的な目でみてんのかな?と感慨深かったのだが、この2年近く、悪魔にまんまと利用されていたようである。
「しかし、何か変にこなれてんだよな。2人で練習したかそのやり取り」
「「……」」
すごい息ピッタリに2人してソッポ向いた。2人のロングヘアーがふわりと流れて、同じシャンプーの香りがこちらに流れてくる。ちなみに我が家、というか泊まり込んでる受付おねーさんの家のシャンプーの香りではない。ふむ。
「これ勝ったらお前の彼女が俺のものになるもんな。だからか?」
ピクリ、と反応する。当たりだったが、嫌な予感も当たってしまった。
「ちょっと、ちょっと!ライ君なんでそんなとこそんなになっちゃってるの!?くノ一スーツがくノ一らしからぬ盛り上がり方してるよ!」
「うう、美人二人がそんなことになるなんて。耐えられ、いや辛抱たまらん」
嫌な予感的中!もうこれ以上扉開くのやめて!!癖の歪曲の自動化進めないで!恐ろしいよもう!
「いや、大丈夫だから。安心しろ。どんな結果になろうとも手は出さないから。いや、その顔なんだよ!?何か安堵と残念ごちゃ混ぜの!」
もう手綱を握れないぜ。
まあ、いい。どっちに転んでも俺には得しかないんだ。癖歪みの特殊性癖くらい目を瞑ろう。
「こ、子どもは3人とも拙者が面倒みるでゴザル。安心してルーシーちゃん」
「不安しかないよ!血繋がってないしそもそも存在しない子どもを認知しないでライ君!」
くぅっ!顔は善いんだよな癖歪み。言ってること糞だけども。
気を取り直して、試合を始めないとな。おねーさんズからは今回誰くるんだろ。
空っ風が吹き、さあぁ、と、波の様な音がした。聞き覚えがあるなと思ったら、ついこの前手伝った稲刈りだ。たわわに実った稲穂の擦れる音である。
飢えないということは善いことだ。何度も同じ時代を別人として生き直す俺の固有能力、《心のノート》の、血塗られた記憶には飢えの苦しみも刻まれている。
だから禾穀類の発する音や匂いなんてのは条件反射で心落ち着いてしまうのだが、何とかその習性を本能で押さえつけ、距離を取った。稲刈りはもう終わっているのだ。風に乗って穂波の音なんて聞こえるはずがない。
流石、刹那的生物である俺ナイスな反応だが、しかし、今回は反応したところで無意味だった。足元に稲が湧き出し闘技場を埋め尽くす。
「ベッドメイクまだ終わってないから、速攻で終わらすね」
米俵を乗り物に、トウモロコシを茎ごと肩に担ぎ、種々の穀物を地面から生やしながら、宿屋のおねーさんがやってきた。
そば殻の枕とか、藁束のベッドとかは、穀物から大量に出る残渣というか、有効活用した副産物による生活用品であるから、この宿屋のおねーさんが持つ権能は食、そこからの派生で住という、人間の生活を支える三本柱のうち2柱を司る恐ろしいものであるのだろう。
全開で威圧してきやがった。
「あ、相手にとって不足なーし!この傲慢の魔王!ぶちかますぜーー!うおー!」
当然、傲慢かませずに噛ませ犬として敗北した。
ルーシーちゃんは大量の藁に包まれて、以前食ったことのある、癖歪みのとこの郷土料理の大豆腐らせた
「「発酵ですー!良質なたんぱく源ですー!」」
大豆腐らせた食い物みたいな見た目にされて撃沈した。てか何か変なの湧いてるぞ1匹。あれだ、街の屋台通りでやべえ食い物ばっかり売ってるマッドアルケミストグルメじゃねぇか。こんな奴が推す食い物ならやっぱりやべえじゃねぇかあの腐り豆。
「く、発酵っていってるのに尚も執拗に!いくら貴殿とて許せぬでゴザル!てかタピ屋台の人、ここは危ないでゴザルよ。神と悪魔の頂上決戦の真っ最中でゴザル。売り子は客席でするでゴザル」
ちらほら見物人いるのが仄々してて善いよな。下手すりゃ余波で灰塵になるってのに。遠く丘の方で蕪の畑が青々としていた。稲の次はあいつらだな。収穫が楽しみだ。全く平和な街だぜ。