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激辛ソテーはガツンとたまるぜ!
積もる話を砕けた間柄でひとつひとつ崩していき、お土産の赤カブのシチューと、受付おねーさん謹製の飲みやすいハーブティーで喉を潤した。焦がした大麦が香ばしい、ゴクゴク飲めるティーである。夏なんかは善く冷やして飲んだな。2年たったのか。
旧王家側が先に寿命でくたばるし、のんびり構えようとしていたのだが、癖歪み忍者ライ麦畑を筆頭に王都へ、クソガキ王子様ベイビーのご家族奪還に向かわせた際に、狂王の子ども殺し政策と市民の抵抗勢力がぶつかり合って大混乱していたのでこりゃかなワンと全国各地に援軍を派遣することになり、この2年、大変な日々だった。
クソガキ王子様の裏切りがどうやってかバレてしまい子どもの供給を絶ってこちらの戦力を増やさない戦略を練ったようである。国が滅ぶだろ。算数も覚束ないくらい、大人たちは参ってしまってるようだった。
国の維持の為に狂って、最後は国を滅ぼすことになるのだからやりきれないな。やはり、永遠に超絶美魔少年たる俺様が、十重二十重に手厚く統治せねば。毎年1000人くらい生け贄を要求しよう。
いや、1年365日だから1日10人まで相手できるとして、3650人欲しいな。いや、俺の職業、《悪漢》の所持スキル《猿真似》によって癖歪み忍者の《分身の術》のデッドコピー版を習得したから、1年7300人までいける!ええい、ここは1万人だ!年間1万人のイケニエだ!人類みな兄弟姉妹だからな!
「さて、兄さん、どっちが勝つか賭けようか」
「……へぇ、悪魔側と神様側で戦うだけじゃないのか?」
「それじゃあ詰まらないだろ。もっと、楽しくいかないと」
言って、財布からコインをじゃらじゃら出す。
「これを賭けよう。10枚ずつ持とうか」
全9試合で10枚って少なくないか?俺なら1試合で使いきる自信あるぜ。
「いいや」
ああ、毎回10枚くれんのか。もしくは倍々にでも増やしていくのか?
「いいや」
思惑を外してやったと、にこりと、ニヒルに、笑う。草臥れ過去形ことディアボロ。本当に善い、いやさ悪い笑顔をするようになったぜ。
「いいや兄さん。このコインを賭けるのは今回、第1試合だけさ」
じゃあ2回目以降何を賭けんだよ。
「そうだな。2回目は、このコインをどう使うか決める権利を賭ける。というのはどうだい?」
へぇ。
「つまり、コインを弾いて裏になった数が多い方が勝ちのゲーム、とか、」
「そもそも手元のコインが少ない方が勝ち、とかか?」
「ふふ、それでも良いよ。1試合目の失点を確実に取り返せる。でもそれじゃあ詰まらない、と思ってるだろ。兄さんは」
善くわかってるじゃないの。
「如何に楽しい使い方をするか、そしてそれで勝つか、負けるか、試合で勝って勝負に負ける。そんなの嫌だろ兄さんは。燃えるだろ兄さんは」
善くわかってんじゃねぇか。
笑顔には笑顔を返さなきゃな。飛びっきりの悪い笑顔で、噛みつかんばかりに口を裂いてよ。
「シチューの食べ方のクセそっくりですね。家族あるあるですよね」
急にやめてエリーゼ。ヒリついた感じの雰囲気だったじゃん。いま、一気に和んで恥ずかしくなったじゃん。
「ぐぐぐ、手強い、過去形の人」
「故郷思い出してちょっとウルっときたでゴザル。いまゴリゴリ最前線だから、思い出ごと焼け野原になってんだろうなぁ実家」
ほら、みんな思い思いのこと考えだしたじゃん。空気弛緩しちゃっとるのよ。恐ろしいよエリーゼ。