Teardrops Ire Covetousness Kindness TICK!
泣いたり怒ったり貪ったり妬んだり忙しなく!
「我が神よ。息災か」
うわ。何でいるんだこいつ。
「ああ、第7試合の、強欲の魔王なんだ。サプライズしたいから黙っててと言われて。ごめんね兄さん」
うわ最悪だわ。
「我が神よ。どうかね。息をするように災いを撒き散らしているかね」
しかもとんでもねえ誤用使ってくるし。魔王だったのか。なんか納得だわ。
蕗冬の生息圏でも北限ギリギリ、というかスレスレつるつるの位置に無理やり生息する巨大な氏族の長。今生の俺の故郷の領主。草臥れ過去形の父親たるサー・マモンが来やがった。
「観てくれ我が神。我が神の御子だ。1匹連れてきた」
お前。俺に寝取られた奥さんだか娘二人だかの子を幸せそうに。ナニしても喜ぶから本当に困る。腹パン神官の強化版みたいなやつだ。
「違うよ。我が神と私の子だ。我だけ産めないのがどうしても納得出来なくて悪魔に魂を売ったのだから」
そういうと急にショタオジサンからロリオバサン巨乳に姿を変えた。領主らしからぬ粗末なタンクトップ半パンが乳と尻でパツンパツンになる。
ふむ、妙齢のおねーさんならばこいつのクソみたいな性格でも全然問題ないな。今度からずっとその姿でいるように。
「喜んで貰えて良かった!そうそう聞いて聞いて。保存しておいた我が神のご恩寵で孕んだんだ。けど凄まじい流石我が神。今のところ百発百中だよ。他にも5匹いるからぜひこんど観に来て欲しい。神に似てとってもかわいいんだ」
うむうむそうかそうか。じゃあ今晩あたり7匹目をつくらなきゃな。うむうむムムムッ。
「わぁ。我が神。お相手いたそう。武器屋の、試合は少し待っていてくれ」
「ハチャメチャだナ。うちの神様もだいぶアレだがヨ」
俺の中立属性嫌いの原因にもなったからなサー・マモン。不死と《魔女》のデーモンハーフ、ズタ袋少女エリーゼとか。誇り高き夏梅、《赤の賢者》のバライロ=デイズとか。大体ツッコミに回らされる厄介な奴らだ。
いや、色んな奴にツッコンではいるんだが。だからこそ、そっちのツッコミだけに専念させて欲しいぜ。
「次の試合はゴブ等叩き、だそうです兄さん。伝統ある競技を全国区で披露出来て誇らしいです」
今生の故郷は小柄でツルツルな蕗冬では、如何に半分妖精の身とはいえ生息出来ない。
肉体が耐えられないというのも一因であるが、人類より自然が強い環境では妖精としての性質に引っ張られてモンスター化してしまうのが主因だ。
遥か昔から、領地より北にはモンスター・スノーゴブリンがちょくちょく集落つくってる。彼らも元々は人類だったんだろうな。長い冬に延々雪合戦とかしててかわいい奴らだ。1匹連れ帰って騒動になって、そこから外出禁止のトナカイ小屋軟禁が始まったのだった。おのれ。許さんスノゴブ。
そんな人類として生息できる北限ツルツルに、何故ツルツル蕗冬たちがモンスター化もせず繁栄出来るのかと言えば、住処を地下に広げた為である。
アリの巣の様に山1つを改造し、比較的少ない薪で暖がとれる。領主とは名ばかりのちょっとした大家族のお父さんなのだ。太古の初期の頃の領地では。
やがて山を掘るうちに鉄と石炭を見つけ、それ以外に何も無い土地なのでその強力な資源の研究にひたすらに特化したこの北限ツルツルの氏族は地下大帝国を築き、当時のこの国を大いに脅かしたようである。
長々と前置きしたが、草臥れ過去形の言っていたゴブ等叩きとは、その地下大帝国だった当時の、地下から無限に湧いてくる厄介な蕗冬とその他人類との戦いを戯画化して、神話再現のような形で伝わっている伝統行事なのである。
何で叩かれた側でこの競技が盛んなのか知らんが、まあ、過酷な環境で生きられるようにマゾッ気のある個体ばかり選択されて子孫を残したのだろう。領主一族が草臥れ過去形を残して俺に遺伝子汚染されてるのでもう滅びの1歩手前だが。ウケる。




