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異端狩り 外伝 幻想狩り  作者: 六道 奈々 落々
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白百合ノ章【2】

『§』のところからは現実です。

その次の『§』から過去です。

 その場から飛びのいたのは、ただの直感としか言いようがなかった。

飛びのいた場から現れる入り乱れた漆黒の刺。刺自体にも刺があり、大方飛び出したあと、分岐が即座に発生するののだろう。もろに命中すれば体の中で分岐した刺により逃げ出すことが難しくなる、ということなのだろう。


 さらにいえば、未知とも言える暗黒物質。何が起こるか分かったものではない。

一番怖いのは、暗黒物質の性質。




〝物質とは殆ど相互作用しない〟



 すなわち、触れることは特定の条件下を除き、叶わない、と。


 その条件を無理やり作ったのが彼女、死者の能力なのだ。


 そして何より、電離度が現在進行形で下がりつつある。


「気づいた……?」


「ちっ! 相変わらず厄介な能力だ!」


「知ってる……? なぜ?」


 独り言のように、いや、本当に独り言なのだろう。顎に手を当て、疾風がなぜ攻撃を避け続けられるかを探っているように見える。


「てかよ、暗黒物質なんてある程度は調べりゃわかるだろ……」


「!? それは反則!」


「あ゛? 異端狩りにルールなんてあるのかよ? すべての可能性を考慮してこそ……」




次の瞬間であった……。



「特級だろォがよォ゛」




 次元が、空間が、




ズレた。




 ただの一閃。




 烏丸流 一閃・抜刀


 それでいて、確実な破壊力。





 気づいた時には、彼女の手元の指揮棒を模した霊装は、中央の部分で見事に二つになっていた。

反物質を呼びも出そうとした彼女はしかし、その指揮棒は切断されているという事実に、完全には気づけていなかった。


 彼女が振った時、タクトは静かに落ちていった。



 霊装破壊の剣術。

ある意味、それも霊装と呼べるのかもしれない。


「なんでっ!?」


「隙には気を付けよォ、なっ!」




 トス、と。



 疾風の指が、彼女の肉付きの薄い左胸を押していた。



 それだけであった。

死者は白目を剥き、その場に倒れ伏した。




 §



 その後はまあそこそこではあったが、霊装の獲得に至っている者はただの一人もいなかった。

相手が二年生だけ、というのも理由の一つだろうが、霊装は自身の家系に関係するタイプと与えられるタイプ、まあ継承タイプ、例外、の三通りで入手できる。執行の霊装は、新しく生み出された、例外だ。死者もそうだ。


 例外はその人物個人でしか扱えない、という制約がある代わり、普通の霊装よりも少しだけ高性能だ。


 それ故にネタが割れない限りは強力な武器となる。



 が、それは既存の事実に過ぎないのだ。



 執行の霊装の前には、通じない。


 実際問題、執行は四つの霊装を持っている。

霊装をいくつか持っていること自体は珍しくもなんともないが、それでも四つ。まだ十歳にして四つは普通ありえない数だ。


 というか、執行は外見と暦年齢、精神年齢が三つともあっていない。

外見年齢は八歳のある日に急成長してから微妙にしか伸びなくなった。

精神年齢はすでに三千を超え、暦年齢は十歳。


 どう考えてもあり得ない、という感想しか抱けない、それが霊装を四つ背負った代償。が、そんなものどうでもいい。


 大事なのは中身。執行疾風という存在が、この世で異常なのか否か。

簡単な質問だが、それ故に厄介。異端と正統という二つの存在がいるこの世界で、寿命の概念のない存在がいるこの世界で彼は本当に異常なのだろうか?


 答えは否。


 すでに執行は寿命という概念に囚われていない。


 しかし、所詮それはあくまでこの世界が異常である限りの話。

もし正統も異端もない世界に戻れば彼はどうなるのか……。


 誰にもわからない。


 それを知るべきは人ではないからだ。


「ふわぁ……、」


「お、クロ、起きたか」


「何? 死にたい?」


「おお怖いねー」


「〝重還石〟」


 ハンコのような四角柱が疾風の頭に出現する。


 その石はクロ、と呼ばれたスカイブルーの髪をした少女の由布の動きと共鳴し、クィ、とクロが指を下ろすと、疾風の頭上に落下した。


「手厳しいねー」


「なら、異端消して」


「キャラを取り繕わなくたっていいだろ? 俺とお前しかいねーんだし」


「あっそ」


「で、私が起きるまで何してたわけ?」


「思い出にふけってたんだよ」


 疾風がそういうと、クロが興味あり気に身を乗り出して、あぐらをかけ、と命令した。

その通りに疾風がすると、疾風かいたあぐらの中央にスカイブルーの髪をした頭が現れる。


「何のおつもりか説明しろください」


「続き、話す」


「ハイハイ、相変わらずですねー、神石さんや」


「…………」


 頬を微妙に紅潮させ、微笑みながらクロ改め執行=クロノス=神石は彼の思い出を子守唄に眠ろうとした。




§




 女学院の同級生との模擬戦も終了し、いよいよクラスへレッツゴー、となった執行はウキウキしながら、A組の扉を開けた。


 まあ生徒はもちろん教師も女性。

男子生徒は誰一人としていない。まあ当たり前といえば当たり前なのだが、それでも教師ぐらいはと淡い期待を抱いていたのだ。


 どこの席を見ても、疾風を怪訝そうにみる女子ばかり。

ふと、一人の女子生徒と視線があった。明らかに憎々しい、といった様子。


 どうやら自分は相当嫌われているようだ、と覚悟を決め、教師に言われるまま、教壇に上がり、自己紹介を始めた。

え? 疾風と死者の距離が無視されている? 何いってんすか、もー。冗談はやめてくださいよー……。


読み直し中…読み直し中……。



 あ、まじだ……。



 烏丸流について


 ただの剣術です。(無理がある)



 零闇死者について


 霊装:死者ノ手向

説明。手向とは本来、生者が死者に向けるものですが、これは死んだ者が死んだ者に向ける、という矛盾の意味です。


 効果:暗黒物質と反物質、物質の三つを同時に操れるようになる。

普通は一つしか操れない。


代償:生命力が残り半分以下の状態、もしくは敵が自分より格上の時。


今回は前者です。

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