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異端狩り 外伝 幻想狩り  作者: 六道 奈々 落々
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白百合ノ章【1】

文字数がきっちり2021!

 零闇死者、という白百合女学院の天才がいる。

特級、査定中。つまりは執行疾風と同格。実力で測ればそれは微妙なところだ。執行は十分に狂ってきたが、それでもまだ物理法則の突破には至っていない。さらに、零闇の能力がその異常さを教えてくれる。


「『反物質(アンチマター)』」


 その掛け声とともに、()()()()()()()物質が荒れ狂う。


 執行が空間魔術で取り出したまあまあ質の良い小剣を当たり前のように破壊し、執行までもを飲み込まんと蠢く。

その様はまさにこの世界とは隔絶した、異界の物質。正確には還石の構成する空間。それを原子レベルにまで分解した際発生する、白い物質。


「うおっ!?」


「…………、」


 外すとは思っていなかったらしい。

憎しみのようなものを織り交ぜた視線が執行に向く。


「あァクソ、かッたりィな」


「ッッ‼︎⁉︎」


 ドオォオォォォッッ‼︎‼︎‼︎‼︎⁉︎ と。


 力の奔流とでも呼べばいいのだろうか、それが疾風の描いた魔術陣の中からやってくる。

不可視。暗黒物質でも、反物質でもないのに、不可視。見ることのできない、そのベクトルに侵され、死者の小さな身体が埃のように宙を舞う。ふわふわと落下しているように見えるが、実際には力のベクトルを受けて様々な方向に吹き飛ばされ続けているのだ。


「ここまでとは……」


「うーん、まだ準備運動程度だな」


「その傲慢、今ここで打ち砕いてあげるわ。《霊装》ッ‼︎‼︎」


 力の奔流、それよりも危険なベクトル。すでに、両者の戦闘領域は特級、という一括り、枠からはみ出している。

説明のできない力、そのぶつかり合いへと化している。正真正銘化け物同士の戦い。どちらが勝とうと、負けようと、それは称賛されるだろう。誰の理解も追いついていないのだ。


 手品と同じ容量だ。


 種が明かされていないうちは面白いが、いざ種明かしをされれば簡単で自分でもできた。そんなものを何度見ても、面白い、すごいと感じろ、というのは流石に無理がある。


「おーおー、マジかよ。面倒ッちいな。ま、霊装を使うッてンなら……」


 両手を広げ、執行は目の前で必殺を確信している死者をその邪悪で濁った瞳で捉え、いった。




「広く使おう、《霊装》」




 霊装・断罪執行。


 神話と同格の一種の論外。

神を超えた代償はない。無論、執行以外が扱えば代償は死だ。攻撃を重ねれば重ねるほど、威力が上がる。相手からの一撃を受けなければ、永遠と威力の上がる、天井知らず。欠点としては一撃を受ければリセットされ、対象者を一人と定、それ以外の人物には攻撃をしても対象者のみへの威力が上がるだけで、普段の威力と何ら変化のない点だ。


 それでも、一対一の状況では最強といえる霊装。

無論、それは執行疾風が扱うからこそ、だ。やはり他人が扱えば最弱の霊装。


「なんでっ‼︎⁉︎」


「うん? そりゃうちはあの執行家だぞ? こういった変なものくらい……」


「そうじゃない!」


 へ? と執行が小首を傾げると、気づいていない執行に対し、顔を青ざめさせながら死者はいった。


「執行家の霊装は、時間の追憶があるってっ……! なんで平然としていられるのっ‼︎⁉︎」


「そりゃあ、その追憶をすませたからだろ? たった三千年だぞ? ゆったりと修行してりゃ、三千年なんてあっという間だ」


「…………っ‼︎⁉︎ 何よ、それ……」


「言葉通りだよ。俺は精神的に三千どころじゃ済まないほど生きてきた。お前と俺の実力さも、経験値の違い、って言えば納得できるだろ?」


 全くできない、そう死者は思った。


 死者は生まれた瞬間から死んでいた。名前もまだ決まっていなかった。生まれるわずか数秒前までは、確実に生きていたのに、外に出た瞬間、死んだ。


 医師も理解ができない、という様子で親からの泣き言を聞いていた。泣きたいのは医師だったかもしれない……。


 それから一時間後、家族と医師が別れを告げようとした時、まさにその時、彼女は産声をあげた。息を引き戻した。いや、生き返った、全く別のものとして顕現した、といった方が圧倒的に正しいかもしれない。


 その時、彼女は親から死者、という名前をつけられ、そして養子縁組に送られた。

理解不能な存在とは居たくない、これは自分たちの子ではない、と。


 彼女はその事実を告げられて、ああそう、と切り捨てた。

意にも解さなかった。ただ、そういう過去があっただけ、で済ませてしまった。


 この時、彼女の霊装は芽生えた。


 そんな彼女の霊装でさえ、修行に必要とされた時間はわずか四九年。始終苦や死苦に通ずるからこその四十九年なのだろうが、それでも本来の人間の寿命の半分。


 それを大幅に超える、30倍の修行期間。

しかも、たったそれだけ、と締め括った。


 その異様さは、多分相対している死者だけが分かっただろう。

剣の一振り一振りがやけに重かったのは、そういう理由なのだろう。


 ただの修行ではない、ということ。


「なるほど、そういうことなら、私の全力を当ててもいいのですね」


「あァ? 最初ッからドンとこいッてンだよ」


 そう、ここからが、本当の、真の殺し合いなのだ。

作者のよくある間違い。

アンチマター→反物質


ダークマター→暗黒物質


 厳密には違うそうです。(圧倒的に違うんだが……)



 幻想狩りはぶっ飛ばして最強しかいないから、戦闘が白熱し……ないかな?


霊装は『精霊武装』の略称といわれていますが、別に解釈は自由です。『狩霊武装』とかでもいいと思います。

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