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うん、この異世界だ

作者: 今井精機

 気がつくと、ゆっくり浮上していた。

 何もない真っ黒の暗闇から、明るい方へと。

意識が、精神が、肉体までもが。そして、オレはゆっくりと瞼を開く。

 目の前には、見知らぬ女性が立っていた。

「良かった……成功したみたいですね……」

 その女性はアニメや漫画に出てきそうな、現実離れした意匠の衣装に身を包み、紅潮した顔で息を切らしながら、杖を支えになんとか直立を保っている。

「えっと……誰? それに、ここは一体……」

 周囲に視線を巡らせてみても、記憶に合致するものはない。

 石造りの、薄暗い小部屋。

床には仄かな青色に発光する魔法陣。

中世風RPG的なゲームやアニメでしかお目に掛かれなさそうなものばかり。

 いや、それ以前に照合に用いるべき記憶そのものが大分曖昧で朧げなのだが……まぁそれはいい。覚えている必要があるような思い出などなかった。漠然とながらもそんな確信がある。

「状況、理解できませんよね? すみません。貴方は召喚魔法で私が呼び出したんです。おそらく元の世界では、既に死んでいるはずです」

「死んでいた……? マジか……」

 その時、脳髄へと急激なフラッシュバックが襲いかかった。

「そうだ……オレはあの日、覗きをしようと汲取式トイレの便器の中に入った後、出られなくなって餓死した……!」

「え……? あの、今なんと……?」

 少女は目を丸くして聞き直してくる。おそらくだが難聴ではあるまい。あまりにも受け入れがたい発言であったため、脳が理解することを拒んだだけだ。

「いや、なんでもないんだ。それよりもこれが異世界転生ってやつか……で、オレは何をすればいいんだ?」

「え……あ、そうですね。貴方に望むことは他でもありません。危機に貧したこの世界を、救っていただきたいのです、大魔王ブラック・デスの魔の手から……!」

 冗談で言っているとは思えない彼女の真摯な眼差しに、オレは内心ほくそ笑んだ。

 遂に来たか、と。

クソみたいに人から見下され続けた挙げ句、クソにまみれながら死んでいったなんて、どう考えても間違った人生だった。ここからが真の、輝かしい人生の始まりなのだ。


「すみません。お見苦しい所をお見せしてしまって……」

 ベッドの上で、上半身だけ起こした状態で話を再開する。

 あの直後、とうとう彼女は杖を支えにしながらも立っていることが出来なくなってしまった。

 取り敢えず抱きかかえるようにして暗い部屋から出ると、そこは随分と立派な城だった。

 廊下には真っ赤な絨毯が敷き詰められ、広々としたスペースを贅沢に使いながら、いかにも高そうな壺やら鎧やら絵画やらがいくつも展示されていた。

 彼女の寝室らしきこの部屋も相当広い。都内のマンションだったら、家賃30万は下らないだろう床面積はあると見た。

「そういえば自己紹介もまだでしたね。私はこの国、アルナクセスの王女、リアナと申します」

「オレは小菅正志だ。あ、王女様っていうなら、ちゃんと敬語とか使った方がいい……のでございましょうか……?」

 リアナは薄く微笑んで答える。

「いいえ、タメ口で構いませんよ。あまり得意ではないようですし。えっと、ファーストネームはコスゲ様、でしょうか? それともマサシ様?」

「正志の方が名前だ。まぁ、好きな方で呼んでくれ」

 家族以外から呼ばれたことはない。皆一様に口を揃えて、名前負けしていると言っていたものだ。愛着などない。

「マサシ=コスゲということですね。ではマサシ様と呼ばせていただきます。それからこちらは私の騎士、親衛隊長レオナ=ホーリィウォーターです」

 リアナが掌で示しながら紹介する。魔法陣の部屋の前で待機しており、オレの手から彼女を奪い取るようにしてこの部屋まで運んできた、軽鎧を身に着けた長身の女性を。

「……」

 しかしレオナと呼ばれた女性はオレの方に視線を向けようともせず、押し黙ったままだ。

「レオナ、マサシ様に挨拶を」

「……貴方のご命令には従うことが騎士の務めではありますが。しかし恐れながら申し上げます。この男に、この国を救う力があるとは私には思えません。身体的にはいかにも貧弱。リアナ様のように特別な力を宿している様子もないのですから」

「そのようなこと……『ステータス』を見てみなければわからないでしょう?」

 来た。ステータスだ。おうチート能力紹介あくしろよ。

「貴重な魔石を消費することにも反対ですが、そうしなければリアナ様が納得しないのであれば、仕方ありませんね。男、この魔石を使え。『ステータス』の魔法が習得できる。それで自らの有用性を証明してみせろ。そんなものがあるのならば、だがな」

 不愉快さを隠しもせずに、緑色の小さな宝石が投げ渡される。

「使えって言われても……どうやって?」

「握りしめて唱えろ。『インストール』と。それから『ステータス・アクティヴェイト』だ」

 よーしよしよしよしよし。それっぽくなってきたじゃないか。

「インストール」

 言われた通りに試してみると、宝石は掌へと吸い込まれるように、すうっと消えていった。

 オレは期待に胸を高めながら、満を持して唱える。小菅正志、最強伝説の始まりだ。

「ステータス……アクティヴェイト!」

 すると即座に、何もない空間に平面のウィンドウが出現する。当然その中には、様々な数値が羅列されていた。

 レオナはこちら側へと回り込み、その画面を覗き込む。どうやら使用者以外にも普通に見えるらしい。

「レベル 3

HP  6

STR 2

DEF 2

INT 1

……やはりゴミクズですね」

 淡々と読み上げられる悲しい現実。どうやら見間違いではないらしい。

「パ、パラメーターだけがすべてではありません! 何か凄い特殊能力が……」

「お、おう、そうだよなリアナ! どうやって見ればいいんだ? このマークがページ切り替えなのか?」

 逸る気持ちを抑え、それらしき箇所へタッチしてみる。首尾は上々で、表示は別のページへと切り替わった。ただ不安を煽ることに、表示されている文字列は一つだけだ。

「いや、どうでもいい百では究極の一には勝てないとか言うし……なんか凄そうな名前じゃないか。どんな能力なんだ? この『アポクリファン・バスター』ってのは」

「脇の下からスパイシーな臭いが出る」

 アポクリン汗腺!

「ご覧の通りです、リオナ様。この男はなんの役にも立たない、ただのワキガです。ですから申し上げたでしょう。リオナ様の召喚魔法はまだまだ未熟なのだから、リスクが大きすぎると。やはり未来は我々の手で切り開くべきなのです。異世界の者になど頼らずに」

「ちょ、ちょっと待った! そう決めつけるのはまだ早いだろ! レベル3ってことは、まだ伸びしろが十分にあるってことだ! 経験を積めば、真の力が発揮されるかも……」

「ステータス・アクティヴェイト」

 オレの抗議を遮って、レオナがステータスを表示してこちらへ向けてくる。

 そこに並ぶ数値は、文字通り桁違いであった。

「レベル 28

HP  43298826

STR 10249758

DEF  9130555

 ……いやいや、いやいやいやいや。おかしいって。表示バグってるって。違うゲームだよこれ。ドラクエVSディスガイアだよ」

「何も間違ってなどいない。私が全力で殴ったなら、お前は10249756のダメージを受けて即死する」

 王道を征くアルテリオス式。

「勿論、お前ごときのパラメーターで倒せる雑魚モンスターなど存在しない。スカトロールの幼体にも太刀打ちできないだろうな。折角拾った命なのだから、無駄死にはやめておけ。仕事の斡旋くらいならしてやるから、地道に暮らすことだな。リアナ様も、それで構いませんね?」

 リアナは答えない。ばつが悪そうに俯くばかりだった。


「仕事って……何をするんだ?」

 レオナに命令されるがまま、オレはリアナの部屋を後にした。

 城内を歩く道すがら、諦め半分に聞いてみる。

「そうだな……体力もなければ知能も低いと来てはな……魚の切り身に花を添える仕事はどうだ?」

 ああ、やはりか。

目の前が真っ暗に染まった、気がした。

 どういうことだよ。

なんで生き返ってまで、クソみたいな仕事して生活しなくちゃいけないんだよ。

そんなつまんねー人生に嫌気が差していたからこそ、一転攻勢を期待してたんだ、こっちは。

 とんだ嫌がらせじゃないか。こんな転生なら、やらない方がマシだ。

「その……もうちょっとまともな仕事は……やりがいがあるとか、待遇がいいとか……」

「生憎だが、お前は選り好みできる立場にはない。こちらの都合で召喚してしまったわけだが、そのためにこちらも貴重な魔石を浪費した。それから、お前の能力を確認するためにインストールさせた方の魔石もだ。正直、お前を一生タダ働きさせたとしても完全な赤字だ。その分を請求しないだけでも感謝してもらいたいくらいだ」

 こちらが転生させてくれと頼んだわけでもないのに、なんという言い草だ。

 転生したいなどと願わなかったかというと、嘘にはなるのだが。

「そんなに貴重なのか? その、魔石とかってのは」

「精製方法は確立されている。しかし材料となる魔原石は地中から採掘するくらいしか方法がない。しかしアルナクセス領地内は粗方掘り尽くされ、新たに確保することが困難になっている。たまに魔物が保有していることもあるが……あまり当てにするのもな」

 魔法というやつも、好きなだけ使い放題ではないらしい。不景気なのはどこも一緒だな。なんとも世知辛い。夢も希望もありゃしないさ。

 とはいえ生き返ってしまった以上、わざわざ自殺するのも面倒くさいし……。

「うんこの異世界だ……」

 オレはもう、そう呟かざるをえなかった。

「おい、これに履き替えろ。それと、こいつもだ。使い方はわかるか?」

城の通用口と思しき場所で、新たな指示が飛ばされる。

「長靴と……傘? 雨なんか降ってないのに……」

 さっき視界が真っ暗だと言いはしたが、あれはただの比喩に過ぎない。窓から見えた景色は、晴れ模様だった。

 よくはわからないが、今は反論するのも面倒くさい。馬鹿馬鹿しいとは思いつつ、靴を履き替え、傘を広げた。

「では行くぞ。商店街は市街地を抜けた先だからな」

 レオナに続いて城から離れ、住居らしき建物の密集地帯へ近付いたところで、オレはこの装備品の意味を理解した。せざるを得なかった。

文字通り、うんこの異世界だった。

「く、クサッ! なんだこの臭いは!?」

 スパイシーとかカードショップとか、チャチなレベルじゃ断じてねぇ。

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わっている。いや、嗅いでいる。

「お前も感じたようだな。これは魔王の瘴気だ」

「えっ? 魔王の瘴気……? これが?」

「そうだ。大魔王ブラック・デスは神出鬼没。どこからともなく魔界の泥土を街中の至る所へと出現させ、そこを起点として瘴気を撒き散らし、人々の身体を徐々に蝕んでいくという卑劣極まりない攻撃を仕掛けてきているのだ。リアナ様の父上、現アルナクセス国王も瘴気にやられ、今は病床に伏している……」

 苦虫を噛み潰すように吐き捨てるレオナ。の傘を狙い済ましたかのように、焦げ茶色の物質が降り注いだ。

 しかしそれはどう見ても、魔界の泥土なんかではない。

もしそうならば、どれだけ良かったことか。

 建物二階の窓から、再びバケツを振り回そうとしていた男が、驚き戸惑い、慌てふためいていた。親衛隊長さまの頭上を狙ったわけではないらしい。

「えっと……質問なんだけど、街中の掃除とかしないのか?」

「やらせてはいる。しかし魔王を滅ぼさなければ、根本的解決にはならない。掃除人たちも次々と魔王の瘴気にやられてしまうしな……」

「いや、だからそれ多分、魔王とか関係なく……」

「隊長! レオナ親衛隊長! こちらでしたか!?」

 鈍色の甲冑に身を包んだ男が、騒がしく走り寄ってくる。

「どうした、何かあったのか?」

「非常事態です! 西の山脈地帯から、スカトロールの大群が迫っているのです! 今現在レトネーラ副隊長が足止めに当たっておりますが、なにぶん数の差が大きく……」

「レトが!? わかった、すぐに私も打って出る。お前はすぐに、城の本隊にも伝えてくれ!」

「了解しました! レオナ様、私の馬をお使いください! 街の外れに繋いであります故!」

 伝令の男はそれだけ言い残すと、城へと向かう全力疾走を再開した

「おい、お前! 話の続きは後だ! その辺で待っていろ!」

 待っていろって、こんなものすごく汚くて、ありえないほど臭い所でか?

 オレは一瞬だけ迷ったが、結局その指示は無視することにして、レオナの後を追った。

「くっ、なんとか、間に合った!」

 どうにか追いついた時、丁度レオナは馬を走り出させようとしていたところだった。

 オレはその背中に抱きつくようにして、勢い任せに飛び乗った。

「なっ……何をしている、貴様! 降りろ!」

「オレも行く! 連れてってくれ!」

「ふざけるな! お前のようなクソザコナメクジが来たところでなんになる!? 無駄死にするだけだということもわからないのか!?」

「そんなこと知るか! 大体オレはもう、一回死んでるんだろ! なら一回も二回もおんなじだ! それにもしかしたらピンチになった時、凄い力に覚醒する可能性も……微レ存?」

「バカか!? そんな都合のいい話があるわけないだろう! 早く降りろ!」

 パラメーター的には、ちょっとぶん殴れば即死させられるはずだが、そうはしないらしい。

「……いいんだよ。何も出来ないまま無駄死にしたって、それはそれで。役立たずのままこの世界で生きてても虚しいだけだし。それにほら、オレって分の悪い賭けは嫌いじゃないし」

 嘘は言っていない。クソみたいな排出率のソシャゲのガチャとかに大金突っ込んでたし。

「ああもう……好きにしろ! 勝手に死ね!」

 レオナはそれ以上オレに構うことなく、引っ付かせたままで馬を走らせ始めた。

 真の仲間の生死を案ずるのは当然の判断だ。ついさっき会ったばかりのオレの安全なんかよりも。

 オレなんかどうせ、追加DLCでもきっとボロクソに貶されて終わりだろう。

 配慮のハシゴを外されたオレは振り落とされないように、万力を込めて彼女の胴体へとしがみつく。

無駄死にも厭わない覚悟を叫んではみたものの、目的地にたどり着く前に落馬、なんて間抜けすぎる死亡理由は流石に避けたい。久方振りの女体の感触を愉しんでいる場合ではないのだ。

「ここが……戦場……ゲームじゃない、本物の……」

落馬を避けるため、無駄に張り詰めすぎたせいなのかは知らないが、いざ戦場へと到着する頃には、オレのテンションはすっかり落ち着きを取り戻しつつあった。

 そこへ更に追い打ちを掛ける厳しい現実。

 漂う腐臭。噴き出す血飛沫。飛び散る脳漿。無造作にばら撒かれた臓物。

 赤。黒。アカ。グロ。

「う、うっぷ……」

 戦争の実体験なんてあるわけもない、現代日本人のオレに血の気を引かせ、えげつないまでの吐き気で満たし、今まで出したことのない即席の覚悟や勇気なんてものをぺっしゃんこに押し潰すだけなら十分すぎる陰惨な光景だった。オーバーキルだ。

「……今更怖気づいたか。手遅れかもしれんが、自己責任というものだ。さっさと逃げ出すなり、殺されないよう祈るなり、好きにするがいい」

 レオナは馬を降りつつそう言い捨てると、剣を抜いて戦場の只中へと駆けていった。

 馬を残していったのはせめてもの情けなのかもしれない。乗馬スキルなど持ち合わせていないオレにとっては猫に小判、豚に真珠だが。猫、豚、ウマァァァ!

「ぐ……うぼおおぉえええええええ……!」

 どうでもいいことを考えて気を逸らそうなどとしてみたものの、まったく無意味だった。

 胃の中の内容物――といっても前世で餓死し、生き返ってから食事もしていないため、固形物を含まない胃液のみだったが――をビチャビチャと逆流させてしまう。

「ククク……噂の女騎士と共に現れた謎の人物……どれ程の手練かと警戒してみたが……戦場の空気に怯えるドブネズミ……なんの役にも立たない腰抜けじゃないか」

 いつの間にそこへ現れたのか。オレの背後には1人の大男……いや、1匹の化物が立っていた。

 3メートルにも達しようかという巨大な体躯、人間と豚を足して2で割ったような異形。

ダンゴっ鼻には若干の愛くるしさを感じないではないが、細く閉じた糸のような目には、何を考えているのか読み取りようのない不気味さがあるので相殺されてしまう。

「お……お前が、スカトロールとかいうモンスターなのか……?」

「あ……? なんだその馬鹿げた質問……何も知らぬ幼児というわけでも……いや待て、そうか。さてはお前、アルナクセスに伝わるという召喚魔法で呼び出されたばかりだな」

 無骨な風貌に似合わず、化物は得られた情報から的確に状況を言い当てる。

「成程な。ワシらの襲撃を察して、ぶっつけ本番で戦場まで駆り出したはいいものの、怯えて使い物にならず、置き去りにされたというわけか……ならせめて、このワシが有効活用してやるのが情けというもの……」

 化物の巨大な手が迫る。

しかし恐怖に竦みきっていたオレには、抵抗することなど不可能だった。


「ハァァァァッ! ゲイル、スラァッーシュ!」

 レオナの魔剣が眩しく光る。

 振るわれた刃からは凄まじい暴風が吹き荒れて、並み居る怪物たちを一網打尽に吹き飛ばし、切り伏せていく。

「クソっ……あの女騎士、噂以上の強さだ……!」

 戦闘の指揮を執っていた、細身のチョビ髭トロールがすっかり青褪め、愚痴を零す。

「助かったよ、レオナ隊長」

「……まったく、無茶をしすぎだ、レト。少人数の偵察部隊だけで交戦するなど……」

 小柄な少年・レトネーラ副隊長に苦言を呈するレオナ。しかし込められたニュアンスは叱責よりも、安堵の方が明らかに強い。

「街の人たちの安全を考えたらしょうがないさ。それに、無謀ってほどでもないしね。だって時間さえ稼げば、隊長が必ず来てくれるって信じてたから」

「お前というヤツは……そんな減らず口が叩けるなら、まだまだやれるな? このまま一気に撃退する!」

「おおおおおおおおおお!」

 レオナの号令を受け、人間側部隊の動きが活性化する。

 体格的な不利、数的な劣勢は殆ど変わっていないのにも関わらずの一転攻勢。

 レオナの無双的活躍の効果もあり、スカトロール側の被害は瞬く間に甚大なものとなっていく。

「さっきまで疲労困憊だった兵士たちまで……このまま戦い続けても被害が広がる一方か……もう撤退するしか……」

「ククク……ワヌマーン、慎重すぎるのはお前の悪い癖だと、前にも指摘したはずだぞ……」

「えっ!? ボ、ボス! 一体何処に行っていたんですか!?」

 チョビ髭トロールが驚き振り返る。

「こうなるであろうことは想定済み……撤退などはありえない愚策。戦略としてはへたっぴさ」

「し、しかしですね……我々が束になってかかっても、あの女騎士には傷一つ負わせることすら難しいんですよ! そんな相手をどうやって……」

「そうだな。そして士気を高揚させるカリスマ性……現場の指揮官としては極めて優秀……真正面からぶつかるには厳しい相手だ」

「だ……だから言ってるじゃないですか!? ここは少しでもマイナスを抑えるために……」

 チョビ髭の進言にはそれ以上応じず、ボスカトロールは悠々と前に出る。

「見たところ……貴様が大将か。前に出てくるとは潔いではないか。その心意気に免じて、このまま引き下がるのであれば敢えて追撃はしないでおくとしよう」

 レオナがボスカトールと正面から相対すると、周囲の戦闘も停止していき、観戦モードへと切り替わる。頭同士の一騎打ち。珍走団がまだ暴走族とか呼ばれていた頃の抗争とかもこんな感じだったのだろうか。

「ククク……物は言いようだな。あれ程ギアを全開にしての戦闘スタイルがそう長く続くわけもない……この軍勢を全滅させるだけのスタミナは有していないから、どうにかして短期決戦に持ち込みたい、というのが本音じゃないのかな……?」

「どう捉えるかは貴様の自由だ。しかし、愚かな隊長の誤った判断で、全滅へと追いやられては部下たちも報われんな」

「成程、肝も座っている。人間の女の中でもまだまだ若い部類に入るだろうに、大したものだ。だが、これならばどうかね?」

 ボスカトーレが手にしていた大きな盾をひっくり返し、裏側を見せる。

 そこには猿轡を噛まされて声も上げられない、無様なオレが縛り付けられていた。

「お前……! 殺されるだけならまだしも、人質になっているとは……!」

「さて、どうするかな? この男はわざわざ秘伝の召喚魔法に手を出してまで手に入れた切り札なのだろう? この場で失うわけには……」

「……生憎だったな。その男はなんの力もない、ただの無能だ。その上わざわざ危険な戦場まで、ノコノコ出張ってきた愚か者。犠牲を払ってまで救出する価値などない」

 レオナの判断はいちいち的確で、涙が出ますよ。これではまるでウマルだよ。

「ほう、この男の命が惜しくないと?」

「そういうことだ。煮るなり焼くなり好きにするがいい。安心しろ、たとえお前が殺されても、その化物もすぐに同じ所へ送ってやる。仇は取ってやるからな」

 オレを殺した化物と、あの世行き列車に同乗とか、ちっとも嬉しくない。

「ど、どうするんですボス! 人質作戦が通用してないじゃないですか!? やっぱりさっさと撤退しておくべき……」

「なに、心配するなワヌマーン。この男を捕まえたのはただの偶然。時間調整のために使っただけのこと……ワシの計算よりも、少しばかり状況の悪化が早かったからな」

「随分苦しい負け惜しみだな。策の空振りを、時間稼ぎ目的だったことにして誤魔化すつもりか? 1分や2分程度、時間を掛けたところで何が変わる。寧ろ私の体力回復を手助けしただけではないか」

「ククク……戦術レベルでは確かに驚異だが、所詮は脳筋……指揮官としては三流、へたっぴさ。その代償、たっぷりと味わうがいい……ジオ・デ・インダー、アクティヴェイト!」

「なにっ!? この魔方陣は……ッ!?」

 周囲一帯が、眩いばかりの光に包まれたのは一瞬のことだった。

 青白い電流が激しくスパークを繰り返し、凄まじい轟音が両耳をこれでもかと貫き続ける。

 味方側には被害が出ないように設定でもしておいたのか、ボスカトーレの盾に括り付けられていたオレは、幸か不幸か電撃のダメージを受けずにいられた。しかしそのことに意味などない。

30秒ほどの五感不良が落ち着いて、漸く状況を認識することは出来た。

しかし、人間サイドで立っている者は、誰一人としていなかった。

「が、はぁっ……バカな、この退魔の鎧を貫通する程の大魔法……スカトロールごときに扱えるはずが……」

 地面に這いつくばり、ピクピクと痙攣しながら、納得できないレオナが疑問の声を絞り出す。

「その驕りが、今回の敗北を生んだのだ。ワシは今回の襲撃、この辺りが戦場の中心となると予測し、極力それに近付くように部下たちを動かした。昨夜の内に仕掛けておいた魔石群が十分な力を蓄え、魔法陣として最大限の効力を発揮するように狙ってな」

 説明を最後まで聞き終えることなく、途中でレオナの身体は脱力する。

他の兵士たちも皆、意識を失っているようだ。命まで絶たれたのかどうかは……わかるわけもない。

「さ、流石ボス! 全部作戦の内だったなんて……!」

「フフ……ワヌマーンよ、喜ぶのは後だ。息のある人間どもを捕獲して、アジトへ連れ帰らなくてはならんのだからな……」

 一応オレの意識は健在だ。大した怪我もない。が、やはり大した意味はない。身動きは完全に封じられているし、そもそも戦う力など最初から持ってすらいない。

 結局の所、レオナを含めた兵士たちが、片っ端から縛り上げられて荷馬車へ積み込まれるのを、じっと見守ることしか出来なかった。


 洞窟内を掘削して建造された、スカトロールたちのアジトに連れ込まれた人間の中で、最初に目を覚ましたのはレオナとレトネーラだったらしい。

一般兵士より強力な装備でもしていたおかげで、比較的ダメージが少なかったのかもしれない。

 だがそんなものは誤差だよ、誤差。

 武装を取り上げられ、両手を縛られ、抵抗する術などもうないのだろう。

 多目的ホールか何かと思しき大部屋の前面に拵えられた、簡易ステージの天井から、オレを含めた三人が並んで吊り下げられている。

「くっ……殺せ! 自らの慢心が原因の失態、生き恥を晒すつもりなど微塵もない!」

 戦う力を奪われて、全くの無防備で化物の群れに取り囲まれても、レオナは強気を崩さなかった。もしかすると、ただの虚勢に過ぎないのかもしれないが。

「フフフ……青いな。所詮はまだまだ小娘か。常々思うが、逆なんだ」

 余裕綽々に、ボスカトーレがレオナへと醜悪な顔を寄せる。

「死ぬことに恐怖などしない、強気な発言をしているつもりかもしれないが……今のように無力化され、囚われの身となった状態で吐くそのような言葉はな……『拷問に耐える自信がないので、出来るだけ楽に殺してください』という弱音なんだ」

「……なんとでも言うが良い。例え嬲り殺しにされたとしても、我々は決して、お前たちのような者には屈しない! 決してな!」

「ククク……その威勢、どこまで続くか試してみたいところだが……安心するといい。我々は暴力を愉しむ蛮族ではないのでな。お前たち人間とは違って。丁重に扱わせてもらうさ……短い人間の天寿くらいはまっとうできるようにな」

「ボス! 早くしてください! オレ、もう待ちきれないですよ!」

 角刈りトロールがボスカトーレを急かす。その口元には涎が滲んでいる。

「わかったわかった、そう焦るなイシュワール。まずはこの強気なお嬢さんからだ」

 ボスカトーレが力任せに、レオナの衣服を引き千切った。スカートと下着は呆気なくその役割を失い、ただの布切れとなって土の上へと打ち捨てられる。

 そしてレオナの秘すべき下半身は、当然剥き出しとなって丸見えとなっていた。

 薄っすらとした茂みの奥には、ぴったり閉じた一本の筋がある。使い込んではいないのだろう。多分。童貞の目では見通せなんだ。

「くっ……何が蛮族ではない、だ……! このような辱めを喜ぶ外道の分際で……!」

 頬を赤く染め、唇を噛み締めながら、それでも精一杯の悪態をつくレオナ。

 せめてもの抵抗のつもりなのだろうが、やはり虚しい。

「レオナ! レオナァァァ! クソ、クッソぉぉぉぉ! やめろよ化物ども! こんな時に、なんで動けないんだよ、畜生がぁぁああああ!」

 必死で暴れているのは、寧ろ隣のレトネーラ副隊長の方だった。まだあどけなさを残す整った顔を憎悪と焦燥に激しく歪め、ジタバタと見苦しく藻掻いている。

「……すまない、レト。こんなことになるのなら、もっと早く、お前と……」

 その様を横目に、レオナが弱々しく呟く。目には薄っすらと涙が滲んでいる。

「ククク……では行くぞ。この太さ故、最初は少々苦しいかもしれんが、なに、直に慣れるさ」

 レトネーラ副隊長の悲鳴も届くことなく、まるでちょっとうるさめなBGM程度の無関心さで、ぶっとい円柱形が、レオナの穴へと添えられる。

「うぐっ、あ、あああああっ……! いだっ、いだいいっっっ……!」

 レオナの口から嗚咽が漏れる。しかしボスカトーレは意に介することなく、円柱形の底部をゆっくりと押し出して、中に溜まった液体をすべて注ぎ込んでいく。

「あの、ワヌマーンさん、でしたっけ?」

 オレは気になって、近くにいたチョビ髭トロールに聞いてみる。

「あれって……浣腸ですか?」

「あ? そうだよ。見ればわかるだろう」

「……レイプするんじゃないんですか?」

「はぁ? レイプって……なんでオレたちが人間の女なんかとヤラなきゃいけないんだよ? 無理無理、種族も違うのに興奮しないって」

 ワヌマーンの言うことは至極もっともだった。いや、しかし世の中にはヤギを輪姦する非行少年グループがいたり、自動車を犯すハイレベルな変態が存在したりするわけで……。

 益体もない思考に陥る中、準備は着々と進められていく。

 角刈りのトロール・イシュワールはレオナの真下へと金ダライをセットし、期待に目を輝かせている。周囲で見守るその他大勢のスカトロールたちも大体そんな感じだ。

「あぐ、うぅ……お腹が、お腹がぁ……」

 ぐるぐる、ぎゅるるという、腸内活動が活発に行われる音が聞こえてきそうな程だった。

 レオナは脂汗を浮かべ、青褪めた表情を浮かべつつも必死で堪えていた。

「ククク……流石は勇猛果敢な女騎士どのといったところか。よく耐える。が、いずれは同じこと。早く楽になってしまった方がいいと思うがね……」

「ふ、ふざけるな……こんな所で、衆目の前で、そんな醜態など晒せるものか……あ、ぎぃぃっ」

 必死にレオナは耐え続ける。

しかし人間には出来ることと出来ないことがあり、生理現象を完全にコントロールすることなどは完全に後者だ。しかもおそらく強力に有効な薬物を用いていることを考慮すれば、数分の間だけでも決壊せずにいられたのは僥倖というほかない。

「あ、あ、うあ、ああああ……」

 そして遂に、その時は訪れてしまった。

 ぶり……ぶり……。

 スカトロールたちは声を殺し、レトネーラ副隊長の口も抑えて、その音を聞き逃すまいと待ち構えていた。しかしやがて、その必要もない爆音が鳴り響いた。

 ブリュリュリュリュリュリュ! 

 ミチミチビチチチチチビチビチ!

 ベチャベチャビチャッ、パチャパチャパチャパチャ!

ブッ! チッ! パ!

 それはさながらブウナとチュックとパイン、三人組の大冒険。

「う、ううぅ……見るな……見ないでぇ……」

 限界まで我慢したことが逆効果となったのか、物凄い音とともに、壮絶なまでに大量のビチグソを大噴射してしまったことで緊張の糸が切れてしまったのか、レオナはか細い声で啜り泣いていた。

 しかし金ダライの中には、えもしれぬ悪臭を放ち続ける汚物が山盛りになっているのだ。注目するなという注文には無理がある。

「す、すごい量と臭いだ! こんなの嗅いだら、オレもう……!」

 角刈りのイシュワールなどは、涎を拭くことも忘れてすっかり夢中だ。

「わかっている。まずはワシが毒味をせんとな……さあ……半と出るか丁と出るか……!」

 ボスカトーレは金ダライの前へとしゃがみ込み、手にしたスプーンでレオナから搾りたての粘性物体を一掬いして、徐に口へと運んでいく。

「フフ……馬鹿がっ……!」

 そして両手で頭を抱える。

「美味いに決まっとるだろ……! こんなもの……! 何が半と出るか丁と出るか……だ……! ふざけるなっ……! 勇猛果敢な若き女騎士の腹の中で……腸壁の細胞といっしょに……数日間寝かせたうんこって……不味いわけが……なかろうがっ……!」

 ボスカトーレ絶賛のグルメコメントに、スカトロールの集団は一斉に沸き立った。

「ボ、ボス! オレたちにも! 早く! もう我慢できませんよ!」

「わかっとる、わかっとる。ワヌマーン、取り分けるのを手伝ってくれ。これだけ大量に出してもらっても、全員が腹いっぱい、遠慮せずに食うにはちと足りぬのだからな」

 ボスカトーレとワヌマーンは二人がかりで、金ダライから小さな器へと排泄物を小分けにしながら、長蛇の列を形成したスカトロールたちへと配っていく。

 これは後で知ったことなのだが、一番美味い部分は最後まで残しておいて、二人でゆっくりと堪能したらしい。別に知りたくもなかったことだ。

 しかしどうやら、スカトロールという種にとって、人間の排泄物というのはこの上ないご馳走であることは間違いない。

 きつい肉体作業で火照った身体に、キンッキンに冷えたビールを流し込みでもしたかのような、恍惚とした表情を、皆一様に浮かべていたのだから。

「いや~美味かった~……でも味はいいけど流石に物足りないっすね~。他の奴らにも早く出させちゃいましょうよ」

「慌てるなイシュワール。捉えた兵士は全部で15人。熟成期間を考えると充分な数ではないんだ。一刻も早くアルナクセスを攻め落とし、もっと沢山の人間を捕らえることが肝要……!」

 スカトロールたちが一様に、掌を広げて力を込め始める。

 するとその手の上から、緑色に輝く物体が出現した。

 ワヌマーンとイシュワールが大きな袋を手に、それらを回収して回る。

「しかしまぁ、それも時間の問題。魔原石を魔石に作り変えるノウハウを獲得した以上、人間の軍隊など恐るるに足りん。意識のある2人分くらいは今堪能しても良いだろうな」

 ボスカトーレがにやりとした笑みを浮かべ、今度はオレの方へと近寄ってくる。勿論、片手には大きな浣腸注射を携えて。

「えーと……ちょっといいですか?」

「なんだ? 残念だが、異世界からの来訪者であろうと、手心を加えるつもりはないぞ、ワシは。お前たちの人としての生涯は終わったのだ。ここから先はただのうんこ製造機として……」

「いや、色々と質問したいことが渋滞してまして……人間の国を襲ったのって、うんこを手に入れることが目的だったんですか?」

「クク……いかにも。あれはこの世で最も美味い食べ物である上、摂取することによって、魔原石を作り出すことが可能……! それを産み落とすことの出来る、お前たち人間が今までは独占してきたわけだが……いつまでもそんな身勝手を許すわけには行かんのだよ」

「うーん……でもそのために、結構な被害が出てますよね?」 

「……そうだな。今までは身体能力強化用の魔石くらいにしか精製できず、苦戦を強いられていた。だが、これからは別……! 先程見せた通り、使い捨ての単発魔石は精製可能となった。いずれは魔剣などの武具を造れるようになることだろう。そうなれば、人間どもに負ける要素などなくなるのだから……」

「……いや、そんなことしなくても、うんこが欲しいなら最初からそう言えば良かったんじゃないですかね? 人間にとってはいらないものだし」

 ざわ……!

 スカトロールたちはオレの発言に、大きくざわついた。

「ば……バカ! バカ! 何を言ってる!? いらないわけがないだろ!? 魔原石の貴重な材料だぞ!? しかもあんなにも旨味! いらないなんてわけが……!」

 ワヌマーンが額に汗を浮かべて力説する。

 が、そんなヒートアップした姿を見せられれば見せられる程、オレはどんどんと冷静になっていく。他人が慌てているのを傍から見ていると、逆に落ち着いてしまうあの現象だ。

「人間はうんこを食べても魔原石なんて作れないですし。それ以前に普通は食べようなんて思わないですけどね。特殊性癖の持ち主とか、それ用のAV関係者くらいでしょう」

 本物の便での食糞行為を扱うAVでは、撮影の数日前から排泄者の食事を制限し、出来るだけ食べやすいうんこを出してもらうらしい。

「だ……誰がそんな嘘に騙されるものか……! 必死か……! 助かろうと……!」

 ボスカトーレもすごい剣幕でオレの発言を否定する。

「大体さっきだって、あの女騎士もうんこを我慢し続けていたじゃないか! 貴重な素材を我々に渡さないために抵抗して……!」

「いや、恥ずかしいからですよ。人間にとって……特に若い女性にとって、排泄行為を他人に見られるというのは死ぬより辛いことだったりするんです」

 あと小学生な。学校でうんこすることすら無理だったりする。

 んで、結局下校時刻まで持たずに、教室で漏らしちゃうんだよなぁ……認めたくないものだな。若さ故の過ちというやつは。

「ぐ……ば、バカバカしい! そんな嘘八百を並べ立てて、我々を煙に巻こうなどと……! そんな陳腐な作戦が通じるわけが……!」

 強気な発言とは裏腹に、スカトロールの群れには明らかな動揺が伝播している。もし揺さぶりを掛けることが目的の計略であるなら、もう充分に成功していると言えた。

 ただの事実説明なのだが。

「じゃあオレも一緒に行って事情を説明しますから、アルナクセスの城下町を見に行きましょうよ。多分下水処理系のインフラがまともに機能してないせいで、道端に大量のうんこが捨てられてますから」

「ボ……ボス……!」

 垂涎。夢かと見まごう程の嬉しい話であるのか、イシュワールは涎をだらだら垂らしながら、オレの提案に乗りたい熱視線を、これでもかとばかりにボスカトーレへと向ける。

「そ……それには及ばん! ワヌマーン! 先日入手した隠身のマントがあっただろう! それから通信用のスマートストーンも持って、アルナクセスの偵察へ向かうのだ!」

「は、はい! 直ちに!」

 多分ステルス機能を搭載した魔法のアイテムがあるのだろう。それにしたって結構な危険を伴う任務のはずだが、いかにも慎重そうなワヌマーンは二つ返事で了承した。浮足立っていることは明らかだ。

「これではっきりする。お前の言っていることが本当かどうかな……覚悟しておけよ。嘘だった場合、お前には他の者より過酷な、相応の処遇をさせてもらうことになる……! 胃袋が張り裂けるギリギリまで無理矢理に食わせ、大量のうんこを放出させてやるからな……!」

 まるでフォア・グラだな。

 激しい怒りに、そしてそれでも隠しきれない多大な期待感を撒き散らすスカトロールたちの前で待つこと1時間ばかし。漸く鳴動したスマートストーンをボスカトーレが引っ掴む。

「ど、どうだワヌマーン……! やはりただの戯言……」

 焦燥して上擦ったボスカトーレの問いを遮るようにして、ワヌマーンの絶叫が洞窟内に鳴り響く。

『ほ、本当です……! そいつの言っていること、本当でした! 街中の至るところに、湯水の如くに溢れんばかりの……うんこの山が……! まるで桃源郷……いえ、こげ茶源郷です!』

 報告を受け、洞窟内は水を打ったように静まり返り、そして、湧いた。

「うおおおおおおお! すげえ! 人間たちは本当にうんこがいらないのか!」

「じゃあオレたちが全部貰ってもいいってことだよな! あんなに美味いものを!」

「もう我慢しなくていいんだ! 人間たちと戦わなくても、いくらでも手に入るなら……!」

 洞窟内は収拾不可能なまでに盛り上がり、乱痴気騒ぎの様相を呈する。

 しかし、出来ればもう少し人間側にもメリットのある条件を付けたいところだ。

「え~っと……状況は正しく飲み込めてもらったみたいで何よりなんですけど……その上で取引をさせてもらったらなぁ、と」

「取引……? 交換条件というわけか……ふん、強欲な人間たちの考えそうなことだ……自分たちには不要でも、相手が欲しているとなれば、存分に吹っかけるのは常套手段……!」

 ボスカトーレは油断すればすぐに溢れ出てしまいそうな喜色をどうにか抑え、平静を保ってオレとの交渉の続きに応じる。この辺りは流石に抜け目がない。

「が……構わん、言ってみろ! 我々にとってうんこは、何を犠牲にしてでも手に入れなければならない最優先目標……! 応じざるを得ん……安定した供給元の確保ともなれば……!」

「じゃあその……うんこを食べて出来た魔原石を、全部」

 オレの出した要求に、洞窟内は再びざわつきを取り戻す。

 そして今度は、ボスカトーレも冷静を保ってはいられなかった。

「ば……ばっかもーん! 全部!? 魔原石を全部だと!? いくらなんでも要求しすぎ! 通るか、そんなもん!」

「最後まで聞いてください。魔原石を精製する技術は人間たちの方が遥かに進んでるんですよね? だから魔原石を一旦全部人間側で預かって、半分を人間用として使用して、もう半分はあなた達の必要な魔石に精製して返却する、という取引を提案したいんです。悪くない話だと思いますが」

 心頭に発していた怒りが、みるみる内に沈静化していくのが見て取れた。反論が来る前に更なるダメ押しを叩き込もう。

「オレの元いた世界で、戦争に大敗した日本が高度経済成長を遂げる原動力となった、加工貿易ってやつになるんですかね。資源に乏しい人間側と、技術に乏しいスカトロール側。お互いの足りない部分を補い合う、ウィン・ウィンの関係になれるんじゃないかなー、と」

 技術者を奴隷扱いして軽視し、金を動かす連中ばかりが得をする仕組みが確立されてしまった、昨今の日本ではもう逆転の目はないだろう。泥舟だ。

「確かに……悪くない話ではある。が、保証はどうする? 預けた魔原石を、きちんと半分返却されるという保証はどこにある? 蓄えた武力で、一転攻勢を仕掛けてこないとは限らんだろう?」

「そうですね。逆もまた然りですので、そこはお互いがきちんと協定でも作って、戦争を禁止にでもするしかないかもしれません」

 オレが元いた世界だと、多分無理だろう。世界規模で泥舟だ。

「ただ、さっきボスカトーレさんが言っていたように、必要な資源を安定して確保できる供給源というのは非常に重要で、魅力的なんです。わざわざそれを潰すほどのメリットがあるとは思えません。目先の魔原石をちょっと多く確保するより、半分の量でも永続的に入手できた方がお得ですし」

「……まぁ、一理、あるか」

「そちらとしても、オレたちをうんこ製造機として利用するにしたって、食わせていくコストや手間もバカにならないでしょう? 寿命とか病気の健康問題もあるし、数が減ったら補充もしないといけない。強力な魔石をこの先精製できるようになったとして、戦争での被害がゼロになるわけでもないわけで」

「ボス! 乗りましょうよ、この話! めちゃめちゃ旨い話じゃないですか!」

「イシュワールは黙っとれ! 確かに、確かに旨い話ではある……だが、旨すぎる。何か裏があるのではないのか……?」

 脳筋とは違い、ボスカトーレは慎重だ。そうでなくては組織を纏めることなど出来ないのだろう。

「手放しで信用できないのは仕方ないと思います。けど、疑い始めればきりがないのも事実です。なのでこの条件で選んでください。今の有利な状況を活かして人間たちを支配するか、騙されて状況が不利になり、そこから全面戦争に突入するリスクを負ってでも、有意義な共生関係を築く可能性に賭けるか」

「賽を振る権利は、今ワシらにあるということか……」

 ボスカトーレは顎に拳を当て、熟考を始めた。

 オレはそれ以上口を挟むことなく、その決断を待つことにする。

 そういえば、転生して異世界を救う話が流行し始めた頃、思っていたことがある。

 折角凄い力を手に入れるなら、異世界を救う前に元の世界を救えばいいのに、と。

 しかし今になって、それは違うのだと理解した。

 今回オレが提案した条件は、お互いにとって有益となるものだ。だが相手が約束を破るかもしれないという疑心の存在を考慮すると、話はまるで変わってくる。

 協定なんて知ったことかと、相手から一方的な裏切りを受けた場合、致命的な損害を受けることとなってしまう。既に敗色濃厚な人間側はともかく、スカトロール側からすれば、精製用に渡した魔原石で人間側の戦力を増強され、折角築いた優位をみすみす手放すこととなる。

 この交渉にさえ応じなければ、最低限の利益を確保することは可能だ。捕獲したうんこ製造機の生育や維持のコストは掛かるものの、敗北してすべてを失うことはない。

 囚人のジレンマというやつだ。論理的に考えれば両者損をすることなく、最大限の利益を享受できるはずなのに、疑心を交えた結果、みすみす得の少ない選択をすることも往々にしてある。

 多分おそらく、みんな薄々気付いていたのだろう。

 元の世界の人間たちは、疑心を捨てることなど永遠に出来ないということを。

 裏切り、裏切られ、出し抜き、出し抜かれることがあまりに多く。

 当たり前で、一般的で、普遍的になりすぎた。

 思考に気をつけないと、言葉だの行動だの、なんやかんやあって運命になる、だなんてマザー・テレサあたりが言っていた気がする。

 元の世界の人間にとって、『裏切り』はもう運命になっていたのだろう。

 そして人は滅ぶ。滅ぶべくしてな。

 ラウ・ル・クルーゼの言っていたことは、何も間違っていなかった。

 あの世界はもう手遅れの出来損ないだ。救えないよ。

 けれど異世界ならば、可能性はまだあるかもしれないと、期待と願いを込めて書き続けるのだろう。

 正しくあろうとする心と、誰かを思い遣れる優しさに満ち溢れた世界を、架空の世界ならば創造できるかもしれないと、足掻き続けているのだろう。

 だからオレも願おう。

 この世界が、ここに生きる者たちが、そうであることを。


 そして長い逡巡の後、沈黙を破り、ボスカトーレの口が再び開かれた。


 洞窟内に運び込まれたのは巨大な樽だった。

 期待に輝かせたスカトロールの注目を一心に集めたボスカトーレが斧を振り下ろし、大樽の蓋を真っ二つに両断する。

「うんこの香りだあーっ!!」

 溢れ出す臭気。思わず顔を顰めたくなるようなえも言われぬ臭いだが、スカトロールたちにとっては堪らない快感を覚えるのだ。

 五感というのは大抵、危機管理の為に備わり、発達してきたものなのだから、それも当然だ。必要な栄養源に嫌悪感を抱くような生き物が繁栄を続けられるわけもない。

「どうも、お疲れ様です、マサシさん。どうです、駆けつけ一杯?」

 ボスカトーレからキンキンに冷えた缶を手渡される。

 中身は勿論うんこなどではなく、生ビールだ。

「ありがとうございます。んっ、ぐっ、ぐっ……ぷはぁ~! 沁みるぅ~!」

「そんなに良い物なんですかね? ワシらにはいまいちピンと来ないのですが」

「まぁ、人間とスカトロールでは味覚が全然違いますからね」

 かくいうオレも、転生前はビールなどあまり好きではなかった。

 酒を愉しめるかどうかというのは、気の持ちようという部分が大きいのだと思う。

「アルナクセスからここまでは、結構な距離ですからね。一仕事終えた後のビールは格別ですよ」

「ほう、そういうものですか。種族的な差異なのか、我々には酒の味というものがよくわからないものでして」

 つまりこれはオレのためにわざわざ冷やしてくれているもの、ということだ。

「ああ、それなら……いや、無理か……流石になんとなくでやるのもな……」

「どうかしましたか?」

「あ、いえ、別に」

 オレの提案に、スカトロール一同とリアナ姫は応じてくれることとなり、うんこ貿易が始まって早1ヶ月。

 物流のコスト面や、効率良い排泄物の回収手段の確立、これまで双方に出ていた決して少なくない戦争被害に対するわだかまりなど、まだまだ解決しなくてはいけない問題は山積みであるが、取り敢えずの運用としてはまずまずの滑り出しと言えた。

 橋渡し役となったオレはその責任もあってか、荷馬車を使ってのうんこと魔原石の運搬業務に就くこととなった。

 数日置きに、長くとも6時間程度の実働時間で、何不自由ない暮らし。

 それなりに実入りはあるものの、過酷で劣悪な労働環境が問題となっていた長距離トラックドライバーと比べれば、なんと恵まれた待遇であることか。

「マサシさん、これ、前回の分で出来た魔原石です」

 こんもり膨らんだ布袋2つを載せた台車を押しながら、チョビ髭痩せ型のスカトロールがやってくる。

「ありがとうございます、ワヌマーンさん。必要な魔石のリストは……これですね」

 大樽を置いて出来たスペースに、大きな袋を積み込んでいく。といってもサイズ・重量ともに大分余裕が生まれた形だ。馬への負担も和らぐことだろう。

「さて、じゃあそろそろ行きますね。次回もよろしくお願いします」

「もうですか? そんなに急がなくても、ゆっくり休んで行かれても……」

「お気持ちだけ頂いておきます。リアナ姫たちの仕事はオレが戻ってからなので、あんまり遅らせるのも申し訳ないんですよ」

 ボスカトーレの社交辞令を失礼なく断り、オレは御者台へと戻る。

 ある程度慣れては来たものの、やはり人間にとってうんこの臭いは本能レベルで不快なものだ。それを嗅ぎながらではリラックス効果も望めない。汲取式便器だった頃には、便所飯なんてきっと拷問の一種でしかなかったことだろう。


「お帰りなさいませ、マサシ様」

 アルナクセス城下まで戻り、馬車を降りると、恭しく出迎えてくれる女性がいた。

 親衛隊長のレオナだった。

「ただいま……うーん、やっぱりその態度、どうにかならない? 違和感が全然消えないんだけど。前みたいにタメ口でさ……っていうか寧ろもう上から目線で」

「そういうわけには参りません。マサシ様はこの国を救った英雄なのですから」

 スカトロールたちとの和平交渉が実現してからこっち、レオナはオレに対してずっとこんな態度だ。第一印象とのギャップがあり過ぎて、まったく馴染める気配がない。

「レト、マサシ様と一緒に、城まで魔原石を運んでくれ」

「わかりました。行きましょう、マサシ様」

 レオナの支持で副隊長のレトネーラが荷台から布袋の1つを取り出して、肩口に背負いあげた。迷うことなく大きい方を選ぶ辺りに性格が現れている。もしもつづらだったら、きっと小さい方を選ぶのだろう。

「しっかし、本当に融通利かないよなー、レオナってさー」

「ははっ、しょうがないよ。昔っからああだから。そこが良いところでもあるし、ね」

 副隊長のレトネーラの方はこんなにも柔軟だというのに。

 城まで運搬には、ほぼ毎回彼に手伝ってもらっているため、対人関係を不得手としていたはずのオレでも、今ではすっかり打ち解けて、こうして友達感覚となっていた。

「にしても毎回毎回手伝ってもらってて、本当にいいのか? 親衛隊の仕事じゃないだろ、本来」

「いいんだよ。スカトロールとの戦争機運も盛り下がって、魔王ブラック・デスの魔の手もなりを潜めている。平時の親衛隊なんて、ただのお飾りに過ぎないんだから、このくらいの雑用は進んでやらないと、罰が当たるってものだよ」

「そういうものかね。それはそうと、どうなん? 新婚生活の方は?」

「勿論、まったく問題ないよ。昔っから気心の知れた仲だし」

 和平条約が締結して程なく、レオナとレトネーラは結婚し、夫婦となった。幼い頃からいつも一緒だったため、逆に一歩を踏み出すタイミングが掴めないパターンだったらしいが、囚われの身となったことが切っ掛けとなったのだろう。

「ふーん、じゃあ夜の営みの方も?」

「お前ねー、そういうことをズケズケ聞くかなー。デリカシーなさすぎだろ。しかもこんな昼間の街中で」

「だからモテないんだよ」

「自分で言うな。まぁ……上手くは行ってるよ」

「ん? 今なんか言い淀んだよな? もしかしてなんかやらかしたのか? 興奮しすぎて入れる前に暴発してばっかとか」

「違うって! ちゃんと出来てはいる……んだけど、その……さ。レオナ、スカトロールに捕まったとき……浣腸されて、アレを……漏らしちゃっただろ……オレや、マサシの前で」

「……つまり、その時のトラウマで……?」

「ああ、トラウマ……っていうのかな。そういう、さ。恥ずかしい姿を見られることに、快感を覚えるようになっちゃったみたいで……頼まれるんだよね……また、浣腸をしてみてくれないかとか、漏らす所を見ていてほしいとかって」

「……あ、そう」

 斜め上のカミングアウトに、オレは返す言葉を失ってしまった。

「でもオレは、そういう性癖ないからさ……取り敢えずその場はお茶を濁したんだけど……やっぱり夫としては、妻のそういう趣味にも理解を示すべきなのかな!?」

 こちらから話題を振っておいてあれだが、知らんがな。

「うん、まぁその……生きてりゃ色々あるって」

 返答のしようもないので、オレも適当にお茶を濁すしかなかった。

 クソ真面目そうなツラして、何に目覚めてんだあのアマ。

 クソにも真面目か。

「そうか……うん、まぁ、そうだよな。こんなこと聞かれても答えにくいよな。悪い。でも、最後かもしれないだろ。一応、聞いておきたかったんだ」

「最後って……ああ、そうか。今回の分の魔石で完成するんだな。異世界間の扉を開く装置が」


 この世界は無事救われた。

 未来のことはわからないにしても、当面の危機は払拭された。

 まだ解決されていない色々な問題についても、リアナを中心に一丸となり、皆で対処しようとする意思を見せているから、おそらくは大丈夫だろう。

 そうなれば異世界から来た英雄は、帰還するのが常道であるらしい。

 地上との出入り口が閉じてしまった某ゲーム3作目の主人公も、なんだかんだで元の世界へ帰ったそうだし。クリア後用の村人のセリフ追加を減らすための処置だったとか。

 確かにもう、この世界にオレがいる必要性はどこにもない。

 馬車による運搬作業なんて、ぶっちゃけ誰にでも出来る仕事だから、代わりはいくらでもいる。

 別に厄介払いというわけでもないとは思う。

 死んだときより若返った身体で、戸籍の作成なんかに使える記録や記憶改竄の魔石を持って帰れば、元の世界で新しい人生を始めることが出来る。

 何か必要な魔石があれば、それも別途用立ててくれるというし、ちょっとした工夫1つで、向こうでも何不自由なく遊んで暮らすことは難しいことではないはずだ。物体をコピーする魔石を使っての、純金の複製転売とか。

 なんだかんだ、文明や娯楽の面でいえば、元の世界の方が発達していることは間違いない。

 楽しく自堕落に遊んで暮らすだけならば、その方がいいに決まっている。リアナが発案したのも、きっとそういった配慮なのだろう。

「おかえりなさい、マサシ様。それにレトネーラも、ご苦労様でした」

 城へ着くと、すぐに従者を引き連れたリアナが出迎えてくれた。

 オレの持っていた荷物を引き渡すと、リアナの従者はレトネーラと共に城の奥へと向かっていく。早速魔石の精製を始めるのだ。

「あのさ、リアナ。この前言っていた、元の世界との扉を開く装置なんだけど……」

「はい。今回の分の魔石で造れると思います。急を要するものは大体精製し終えましたので」

 現国王、つまりリアナの父親を筆頭に、不衛生を元凶とする体調不良に陥っていた者たちは、皆快方へと向かっている。街の清潔性が保たれていることと、治療用の魔石がふんだんに使用できるようになったことによって。あと食物の育成・栽培用の魔石補充による、栄養面の増進も大きいか。

 これから先は城下町のトイレを水洗式に変えるなどにより、インフラ整備を進めていくことで、スカトロールに提供するうんこの集積業務も効率化を進めていく方針だとか。

「その……さ、装置の設計を変更することって、出来ないかな? オレが通るんじゃなくて、電子情報だけ行き来できるって形に。それなら魔石のエネルギー負担も少なくなって、継続的に利用できるようになるんじゃないかなー、なんて思ったんだけど」

「え……? それは、確かにその通りだと思いますけど……」

「本当か? じゃあそれで頼む。こっちの世界にない発明とかを伝えたいと思ってたんだ。スカトロールにもトンスルとか紹介してあげたいし。けど、仕組みなんていちいち知らないからさ。やっぱ異世界はスマートフォンとともに、だよ」

「……この世界の発展に尽力していただけるのはとても、本当にありがたいのですが……でも、いいのですか? 元の世界へお帰りにならなくて……あ、ではその2つの仕様の装置、両方とも造りましょう。帰りたくなったときに、いつでも使えるよう……」

「いや、その必要はないよ」

 リアナの提案を、オレは迷わず遮った。

「……いいのですか? 本当に、元の世界に帰らなくても……あなたの、これから生きる世界を決めてしまっても……」

 とっくに決めていた。ボスカトーレに共存共栄の提案を申し入れた時から既に。

 オレの生きる道は。

 オレの生きて行きたいと感じた場所は、ただ1つしかない。

「うん、この世界だ」

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