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異世界に転生してきたやつ全員ブチ〇す  作者: 今夜が山田
序章 招かれざる客
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第4話 絶望と切望



少女と魔術師。にらみ合う両者───

その場一帯には、凍りつくような殺気が充満していた───



この都市に暮らす市民にとってみれば、騎士とは憧れの存在として一目置かれる。


王都オーラムにて市民権を得たものは、すべからく騎士証明の申請条件を満たす…がしかし、そこから騎士として認められるためには厳しい学術試験の突破と、しかるべき戦闘力を要求される。


狭き門を越えた先には、名状しがたい地獄のような鍛錬が待っている。全ては王都を護るために。

そしてその試練の末にようやく国王陛下から正式な騎士として認められ、市民からの羨望を受ける彼らの立場がある。たとえ階級が低かろうと、賊に遅れを取るような事は万に一つにでもあってはならない。


そんな歴史ある都市の象徴シンボルが、たったの一撃でされた。それも互いに構えた状態、つまり互角の形勢から。


しかもこの騎士は王立国軍きっての精鋭の中の精鋭『輝ける十三騎士サーティーン』が一人、まかり間違っても歴戦の手練てだれ。大楯に刻まれている紋章は王立国軍の中でも際立った多大なる権威と栄光を表すもの。


とすると、異常なのは対峙たいじする魔術師らしき者の方だ。

目的は何であれ、手を出すと厄介になることはこの街の者なら誰でも分かる。

否、この街のもので無くても周囲の様子を一瞥いちべつすれば十分に分かり得ることだった。だというのに、少女は敢えて揉め事の只中ただなかに躍り出た。


『なんだ?女。その愚者を、弱者を、枚挙にいとまのないグズ共の寄せ集めを…かばうというのか?』


「なんだっていいでしょ。ムカつく態度ね。あんたみたいな自信過剰なヤツはぶっ飛ばさないと気が済まないわ。」


場の威圧感は予想を上回るものだった。

機嫌を完全に損なったらしい魔術師らしき者は、落ち着き払い静かに、それでいて強烈な敵意と怒気を少女に対して向けた。


「その目。退く気が無いのなら、実力でこの街から排除する。」


『小娘……。お前からまずこわしてみせようか。』


そう互いに発すると、魔術師らしき者は自身の紹介を始めた。


『我が名は、亡霊(スペクター)。恐れを植え付け、貴様らを蹂躙じゅうりんするもの。』

『さっき戦争…といったな……フハッハハハハハ!!!それもいいだろう、王都の陥落かんらくなぞ私1人で十分に事足りる。』


下手な刺激をしたら余計に被害が増す。

ヒーロー気取りの少女は何も分からない愚者であると確信するアーサー。

予定より早いが、テスラを始末する事に決める。戦闘で王都が破壊されては大きく【根源リソース】の回収率に関わってくる。

何としても避けなければならない。と心の中で方針を決定し、その場から【権能ちから】の発動を試みた。


(派手でないもので、被害も抑えるとなるとやはり虚火スカラか)


すると、スペクターの敵意の対象は少女から外野の民衆に紛れる、厚手の布をまとった民族衣装風の男へ向けられる。


『(なるほど、予言通りだな。お前が神の遣いか。)』


『(貴様とは本気で殺り合いたかった。だが皮肉にも、この世界では貴様はまるで力を出せないだろう?)』


『(大いなる加護も、権能ちからも能力はわずかなものしか発揮できない……そして)』


スペクターはアーサーの脳内に直接語りかけてきた。


(なぜそれを───)


アーサーは自身が全能神の遣いであることをスペクターがどうして知っているのか納得がいかなかった。

他の世界から時空移動してきた事を観測されてたとしても、依頼主クライアントまで分かるはずは無い。

とすると仮に幻惑、精神操作や考えを読み取るスキルや魔法だった場合、通常なら大いなる加護で弾かれる事を鑑みるとやはり、何かが引き金となり神の力が滞っているのか。


(間違いない、こいつは俺の知らない何かを知っているッ。)


思考を必死に巡らせていると、スペクターの姿はその場から消えアーサーの前に現れた。


『今はこんなにも無力か。』


吐き捨てるように呟いた後…時間にして約0.1秒未満。

反応の猶予ゆうよ無くスペクターの右腕が、アーサーの下腹部を容易たやすく貫いた。

鮮血を流しながら鈍い痛みが徐々に鋭くなり、すぐに死を予期させるものとなる。

全能なる神から絶えず供給されるはずの根源が先程から一切送られてこない点に気が付き、一抹いちまつの不安…当初から感じていた違和感はアーサーの中で確たる不可解な謎に発展した。

大いなる加護が無くとも、根源があれば再生効果も発揮出来るがそれもこれまで。

薄れゆく意識の中で、スペクターの一言が頭の中で強く響く。


『゛見えざる手は、全てを呑み込む。゛』


『せいぜい、もがいてみせろ。生きていられればな……クックック。』


その言葉を最後に視界からは光が完全に失われた───



×××

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