表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生してきたやつ全員ブチ〇す  作者: 今夜が山田
序章 招かれざる客
25/26

第24話 分水嶺



どれだけ理屈を並べても、反証が叶わないこともある。


逆もまた然り。


それを矛盾と呼ぶ者もいるだろう。


だが、私はそれを『希望』と呼びたかった。




×××


地表と飛来物の距離が、目測で200mを割った時。夥しい熱波が周辺の草木を瞬く間に燃やし尽くす。

王都随一の魔導を誇る精鋭である魔術師団は、ジブネイルを筆頭としその場からの即刻退避が難しいもの達に対し、最高硬度の古代魔術による多重の防御結界を形成し一同は、直上で発生している事の顛末を凝視せざるを得なかった。


「これが…この世の終わりか。」


目の当たりにする文字通りの神業に、狼狽えるでもなく兵士達は口々にする。

多くの者の脳裏には、自身の歩んできた歴史、紡いだ時の中での恩讐や懺悔、または幸福の映像が高速でフラッシュバックしており、文字通り祈ることしか許されない状況に追いやられていた。


我々を救うべき神は、何処に居るのだろうか。そんな愚考を巡らす余地は無かった。


何者かが口に出した「残すところは…」その言動には、終焉そのものを予期させる確かな悲哀が感じられる。

創世から幾億年という年月、人類ではその全てを観測することなど到底不可能な歴史の重みを蹂躙する行為そのもの。凡そ、人ならざるものによる不合理に思える選択の結実。


澱んだ水に浮かび上がった、不和の波紋に笑みを浮かべたような全能神たる者の意図の残滓は、図らずも真なる終わりを告げようと更に推力を増したように感じさせる。


不死の呪いを消し去ろうともとれるその熱量が、十三騎士が1人の肉体を焼き尽くそうとした刹那に、単身微かではあった希望がその場に馳せ参じる。


少女は、見据えていた。

方程式を構築するにあたり不可解ともいえる点も数多く、誤算も視野に入れなくてはならない不確定な状況ではあったが、迫り来る直径100kmをゆうに超える巨大質量と唯一張り合うことの出来る、一つの生命体が持てる性能の限界を大きく超越した、極限とも言える神秘。


認識した力の名が「根源」と呼ばれる事を少女は知らなかったが、可能性を見出すには十全の期待値を持っていた。


惑星の中心にあたる、核部分から人の住む地表までエネルギーを分配する区間を自分の身体と接続する事に成功し、並々ならぬ熱源の影響を受けて少女の精神状態は非常に不安定なものとなっていた。


差し迫る死への恐怖、言うなれば自分が存在したことの罪科を償うように。自身を容器として正しく認識出来るように。異端であると自覚した己を飲み込むが如く、容器は本来の許容範囲を大きく超えてその指先までもが、根源の力によって満たされ全身が太陽の様に燃え盛った頃に、この場においてもう1人の神に近い存在である青年が降り立った。


「まぁ、落ち着けよ。」


先刻から、打ち明けられずにいた思いの丈を一頻り伝えた後にその全能神の御使いであった青年はどうにか、少女が命を失わない方法を頭の中で考えていた。そして、代案を1つ少女に対して提起する。


「実はな俺も、少しだけヤツと同じ力を使うことが出来る。術理や組成式は完璧だが、どの程度の質量を弾き出せるのかはやってみないとわからないが…いっちょ隕石同士をぶつけて粉々に破壊するって案はどうだ?」


突拍子もなく感じられるが、高位魔法の類やダールトンの魔剣の固定術式を用いても破壊は愚か動きを止めることすら叶わないのであれば、同程度の性質を持つ物体を強引にぶつけるというのはある種、試みとしては真っ当であった。


「だから、その技を実行するために、お前が吸い上げたその力を、俺に供給してくれ。」


少女は、疑問を投げかける。


「それじゃ、被害が広がるだけ。仮に衝突した後の残留物が性質を失わずに、力を保った状態でそのまま落下したらどちらにせよ王都の近隣を含む地域に大きな被害が出てしまう。リスクが大きすぎる。」


疑念はもっともだった。

少女の持ち得る、千里眼は何よりも状況を観察するのに長けており、この場において1番適切な方法を思案するのに最適である。

そこに感情のつけ入る余地はなく、現実的な計算結果に基づいた被害予想によれば青年の意見を否定せざるを得なかった。


「んな事言ったって…とにかくこの大きさはどうにもならねんだよ!小さくなりさえすりゃ破壊するなり何なり出来るだろ!」


どれだけ攻撃を行っても、破片すら落下してこない「それ」がどれだけの硬度を持つのかは青年にとっても明白であったが、最悪のケースを想定しなければいけない状況においては、感情的な側面は命よりも優先度を下げて考慮しなければならない。


「あの…王都の冒険者ギルドマスターのジブネイルさんの使ってた原典?とかいう突飛な魔法はどうなの?時間と空間を操ることができるんでしょ?」


全能神ですら、解読不能と発言した未知の領域であればあるいは。


「たしかに一理ある、だが俺も詳しくは知らねぇけど多分あの技はどれも不完全だ。全部を消し去るやべぇ光を巻き戻せたのは、時間と共に拡散するという性質と、技を発動する際の空間座標を限定したからだと思う。コイツの場合、例え時間を巻き戻したとしても発動されるという大元の結果が変わらないのであれば、結局魔力のムダ使いだ。」


どのような方法で、考えるほど話は大規模に飛躍し付け焼き刃で実行するにはどれも大きなリスクを拭うことは出来ずにいた。


「いや…待てよ。1つ、妙案がある。どうせ命かけるなら確率の高い方を選ぶべきだよな…うん。」


少女が持つ神の依代としての素質と、彼女が過去に経験しているかもしれないという俄な期待を青年の概ね当てずっぽうな、ギャンブルに近い千里眼を持って閃いた仮説を組み立てる。


「俺の持ってる、「狭門」っつー魔道具があるんだ。あのクソガキから、くすねてきてもんで、原理は俺も知っちゃいないが、コイツは見た目はチンケな小袋だが中身は無限に近い容量を内包できる、異次元へ物体を飛ばすことができる代物だ。」


マリーが身体の自由を全能神に奪われていあまさにその時に、大権能を食い止めるために使用された小道具であるそれを、おもむろに懐から取り出した。


「ただ、どうにも袋の入口を広げるのは限界がある。見たまんまだな。」


訝しげに、小袋を見つめた少女は発言した。


「内部が無限と思える容量だったとしても、入口やその袋自体が物理的な制約を持つのだとしたら魔力なんかで外的に構造をどうにかするのは、難しいと思うけど…」


「その問いは、真っ当だな。しかし考えたことはないか?あるいは、そうだな。お前ならば既にそこへ迷い込んだ事があるかもしれない。」


青年の言葉を聞き、思い当たる節を1つ思い出した。かつて少女が研究所にて、発動した技能『白日』と呼ばれる外界の一切と隔絶された特異点へ、指定した人や物を瞬時に移動させる能力を。


「この珍妙な小袋をヤツが大事そうにしてたのには、きっと何かしらの理由があるはずだ。恐らくは無限に及ぶ空間、または時間に関する現象を発生させたりする実験。その一端がコイツで、たとえばそれらを操作できる様な能力をヤツが保有していたならば、もっと確実な方法で目的を達成していたに決まってる。」


幸い、それについて詳しい重要参考人であるテスラもこの場にいた事が、少女の期待を膨らませた。やってやれない事はないだろうと。むしろ、それ以外ありえないのではないかと思えるほどの確信が思考を占領した。


「おっと、話しこんでたらあまり時間が無いな。まずは星核から得たその力で最大級の「不可侵領域」を展開しろ。時間を稼いで、お前が計画を完全に理解した状態にする必要があるからな。」

なんとかなれー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ