第20話 それぞれの想い
────元来、森羅万象は六十余の神々が結集し、作り上げた叡智とされている。
宇宙創世から程なくして、彼らの派閥は2つに分断されることとなった。
×××
『全く手間をかけさせるね?もういいや…いっその事作り直した方が早いかなぁ、この惑星』
王槍からの指示により集まり始めた王都の精鋭達(王立国軍)は、アーサーの一行より先んじて全能神と邂逅を果たしていた。
敵は一騎当千などという領域ではない、並大抵の攻撃は最早かすり傷すら与えることが難しい防御力を前に尻込むしかない。
「ぐっ…なんだあの硬さは…。頭数揃えて掛かっても全く歯が立たないぞ…」
「対巨龍火焔砲の準備を急げ、隊列を崩すな!!重装兵を前面に展開して、時間を少しでも稼ぐぞ!!」
「神様ぁ…なんとかしてくれぇ…先日娘が生まれたばっかりなんだ…こんなとこで死にたかねぇよ…!」
一様に、各々が口にするのは淡い期待。
この歴然たる不利な状況を好転させるキッカケが訪れるその瞬間を皆が一刻も早く待ちわびていた。
振り上げた右腕を静かに降ろした全能なる者は、少し遠くを一瞥した。
『とはいえ、まぁもう少し様子を見てあげようじゃないか。家畜を殺すのはボクの仕事じゃない。どうせ代行者くんもこの場に戻って来るだろうしね。僕を唯一止められる可能性を持つとしたら、僕の複製(変わり身)であるキミしか有り得ないだろ?』
×××
───同刻
巨獣を仕留めた座標にたどり着いたアーサー達は、ダールトンが身柄を拘束中の女を捜していた。
「おかしいな。確かにこの位置に俺の大剣と共に身動きが取れんようにしておいたのだが…」
地面に滴る歪な色合いの血痕と、ひたすら巨大な横たわる魔獣を尻目に辺りを見回していた。
『何者かの手によって、拘束を解かれたってことか…?チッ、厄介な事になりやがったな。』
唸る声を出しながら、苦虫を噛み潰したような面持ちでダールトンは続けた。
「それが解せんのだ。俺の持つ大剣は、空間呪縛の効力を持つ言わば魔剣。術式の解読は古代魔法にも匹敵する難物…易々と出来るはずはない。」
「その魔剣の事を少なからず知ってるヤツが、その女を連れ去りやがったのか。」
「私も王槍で観測していたよ、双大剣イヴァンドだね。資料も少ないアレの情報を予め知っている人間がいるとすれば数はそう多くないはずだ。なんせ、古くからその呪いについてはここいら一帯の民衆に恐れられていたからね。」
軍事諜報部門長殿が、昔噺を始めようとするところ手短に釘を刺すシスコ。
「とりあえずはこの際、誰がってのを考えるより~その場所を割り出す方が~先決じゃないですか〜?」
「確かに…この状況では、速度こそ何より優先すべきだ。しかし何か手はあるのか」
『ダーさんは、その片割れの大剣の位置を察知出来ないのか?』
「生憎だが、呼び寄せることは出来ても位置を特定するのは不可能だ。」
「では、その逆はどうでしょう。今手元にある片方の大剣をもう一方に向けて投げてみては?」
『いやいや、いくらなんでも、そんな単純なモンじゃないっしょ…』
「やってみる価値はある。」
「放り投げる前に、この剣には通信機を取り付けておこう。こちら側でも観測して位置を特定出来れば我々でもってその女の居所を割り出せるはずだ。」
『なんだか、アホらしいが。他に打つ手がないなら仕方ねぇ。最悪この作戦が無理でも、大剣は呼び寄せられるし、王槍側でも女の所在は掴める可能性だってあるもんな。』
「おっと、すまないね。君たち。少し待ってくれたまえ。」
声の主は、一同に軽い静止を促す。
『あっ、アンタ!なんで、こんな所にいやがるんだ?』
「いやはや、キミ達に依頼してた件だがラドックシリアの討伐…まさかこんな大事になってしまうとは…済まないね。」
そこに突如、現れたのは先刻にアーサー達が訪れた冒険者ギルドの長ジブネイルであった。
(いま、気配も無く現れなかったか?この男)
「ここに居た女は、今私の方で身柄を拘束させてもらっているよ。非常に危険な奴だからね…彼女に用事があったなら、私に要件を伝えてくれれば都合をつけよう。」
ギルドとの試験である課題についての報告もほどほどに、話を本流に戻す。
『で、なぜ魔剣の持ち主にも気づかれることなく術式を解除して、そして女を匿うようなマネすんだ?アンタただの冒険者ギルドのマスターにしちゃ不自然がすぎるぜ。』
「一片に今語るのはよしておこう。なに、隠すわけでもないが、今は一刻を争う緊急事態なのだろう?であれば、まずすべきなのはこの世界に現れた異物を排斥することに他ならない。良ければ私も連れて行ってくれるかな?」
刹那、大規模な爆発の余波が、数キロ先の方向から届いた。
『浅からず事情を知ってるようだな、アンタも随分ときな臭いが今は話をしてる時間も惜しいとこだ。まずはその女に伝えろ。今すぐヤツ(全能神)を止めに行くから協力しろと、お前の目的はヤツをとっ捕まえることなんだろって。』
「どういうことだね、アーサー氏。その女が一枚噛んでいるということか?」
『ダールトンの話を聞く限りだと、そいつら(亡霊ども)の組織の目的は、恐らくヤツを捕縛するってトコだろう。あんなでけぇ魔獣を操って、アホみたいな魔術を利用して、惑星1つ犠牲にしてでもやらなきゃいけないってほどに切羽詰まってるらしいからな。でなきゃ、こんな滅茶苦茶なやり方をする道理がない。』
『俺が先にあそこに行って、もう一度、ヤツを全力で食い止める。そこまで長くは持たねぇし、もしかしたら間に合わないかもしれんが…その時はお前たち人間に事の命運を託そう。』
「待て、アーサー。俺も共に行こう。戦力にはならぬかもしれんが、注意を引き付けるための囮くらいにはなるだろう。」
『いや、ダールトン。アンタはそのギルドの兄ちゃんと一緒に女の所へ行ってくれ。もしまた暴れる様子なら、アンタの力でそいつを止めて欲しい。』
ここで、王槍の本部から通信がダイナー宛に入る。
「緊急時の特例措置における、王都守護命令レベル5の発令あり。十三騎士一同が現場へ急行中とのこと。」
「ジブネイル殿、我儘を言って済まないが、その女への伝言は貴殿に任せてもよろしいか。我もまた王都を守る1人の人間として、一矢報いたい。」
「あぁ話しが終わり次第、私もすぐに向かうとするよ。任せておいてくれ、こう見えて僕も結構やる方だからさ。」
×××
───同刻、???にて
「手駒の方は如何いたしますかな。」
「我々に与する転生者共には、この世界の最も邪悪なる者として、彼の者を最優先に消し去るべきと伝えてあるが…まぁこの騒ぎでは最早敢えて再三通告する程でも無かろう。」
「かしこまりました。」
「しかし、これは面白いことになってきた。」
「とおっしゃいますと?」
「全能神の犬、確か代行者とかいうあの小僧が、まさか謀反を起こすとはな。またとない好機ではないか。」
「問題は…ヤツの根源の保有量。対神結界の効果によって依代を用いての直接の現界を避けざるを得なくなった全能神が、現状でどの程度の力を発揮できるのかというところにある。」
「依代の耐久性もあるでしょう。もうあれだけのことを為した後では、それほどの自由が効かないのではと推測しておりますが。」
「追跡可能状態になるまで、もう少し泳がせる必要がある。ヤツに力を使わせすぎず、飽きさせない事が重要だ。」
「ところで亡霊が一体、霧散したそうだな。さすがに権能を行使させるには性能が足りなかったか。…太陽系で回収したあの女の方はどうだ。」
「それが…現地の魔術師に拘束されているようでして、現在あらゆる通信が無効状態になっております。」
「一部とはいえ権能の使用権限まで与えておいて、捕縛される始末とは…何たる失態か。」
「どうやら、その魔術師が只者では無い様子でして、急ぎ手筈を整える必要があるかと。」
「何者であろうとそこまで警戒する必要はない。たかが人間風情に出来ることは限られておる。それよりも過ぎたことは仕方あるまい、まだ手駒はいくらでもある。この惑星にヤツが留まっているうちはな。」
×××
第一陣の総攻撃は概ね、完了を迎える中
彼らが目にしていたのはまるで御伽噺のような、あるいは空想上にのみ存在し得るおよそあり得ざる光景であった。
火器、銃器、刀剣類での攻撃の一切を受け付けない
鋼鉄というには美しすぎる絶望漂う異形の存在。
それを目の当たりにして心が挫かれた兵士も少なくなかった。
「今しがた、参上した。我ら王立国軍騎士団の頂点に君臨する〝輝ける十三騎士〝」
「急ぎ、戦況報告を。我らとてここでヤツを打ち損じては王都永劫の恥となろう。」
「俺たちの方も準備出来てるぜ。」
現れたのは、様々な世界から放たれた群雄割拠の転生者達である。
この瞬間を待ち侘びたと言わんばかりに、英雄になれる力を持った存在が集結し、その数は優に三百を上回っていた。
最も力を持つと目される、第二陣の到着であった。
『あちゃー。全く懲りないもんだ。君たち…可哀想だね…揃いも揃って烏合の衆が。』
『少し数を減らさせてもらおうか。これで息絶えるようなら、威光有る全能なる神を拝顔する価値のない凡百って事にしといてくれよ。』
『権能:星砕』
空が裂けたような悲鳴を上げ、天から降り注ぐのは目を疑いたくなるような質量を持った岩石。地表から観測し、王都全体の土地と比較して僅かに上回るほどの巨大すぎる直径、地上に衝突しようものならば、星の半分を蒸発させてしまうような悪夢の塊。
『防御できるものなら、してみなよ。半端なな魔法じゃ少しばかり難しいとは思うが。』
『テメェの好き勝手にさせるかァァァ』
宙から飛来したそれを、空中で受け止め落下を受け止めたのはアーサーであった。
推力が大きすぎるが故、徐々に押され気味にその場にいる者たちへ声を振り絞った。
『テメェら、俺の話を聴け!!!この術の行使の完了つまり地面に激突して爆散しない限り奴は次の術を発動することが出来ねぇ!!!今の一瞬の隙のうちに全力でぶちのめせェ!!!』
『おぉ代行者くん!良いとこに来たねぇ。そしていきなり無茶をする、でもボクを打ち崩せるほどの術があるとするなら是非この身に受けてみたいものだ』
『チートスキル?そんな生半可な能力じゃこいつはビクともしねぇ、とにかく絶え間なく己の持つ最大限の威力の魔法でも戦技でもいい。かましまくれ!自由を与えなけりゃ活路は拓けるはずだ!!』
三百を超える大規模な異能の波動が、輝ける十三騎士の放った絶技が、あらゆる物理現象における力の集結が、上質な観測装置の観測値の上限を大幅に超越する量のエネルギーを生み出していた。
凄まじい熱量にその場一帯の地形が小刻みに振動するほどに、全能神の容れ物の皮膚を焦がしていく。
『なるほど。この程度の規模か。剰えボクの防御機構を持ってしてなお蒸発出来そうではあるが。まだまだ足りないよ。確かに、この星砕を解除しなければボクは自動防御すら疎かになってしまう事実は認めよう。』
「いや、これは始まりに過ぎん、ゆくぞ十二の兵共…」
「今しがた、私の力の奔流を受け取るがいい。忌まわしき脅威よ。」
「ヴァリアブル!!」
「十三騎士が共に力を合わせ、闘わなければ勝てぬ敵がいるなど思いもしなかったが…この瞬間の為と言っていいだろう。貴様ら全員、死せる時まで封じよと陛下に仰せつかった、究極奥義を今こそ。」
それぞれが持ち合わせ、馳せ参じた己が伝説を準えた武器には強力な魔力とは異なるエネルギーを秘めた怪物が宿っていた。
「第一席、万雷要塞アガスト」
「第二席、黒炎の番人ルアラ」
「第三席、聖光の大賢人ダイダロス」
「第四席、戴冠の魔神******」
「第五席、極死老獪」
「第六席、暗澹を巣食う魔女」
「第七席、天の趨勢超えし稀人イザル厶」
「第八席、不知火斬」
「第九席、神聖殺しソル」
「第十席、法練の異身デュオ」
「第十一席、光喰みローアドル」
「第十二席、海王タビュラー」
「第十三席、調停者アルカナ」
「十三の魔人の降霊術式により、これより我々は自身をこの世の理から外れた怪物とし、際限のない力を以って、対象を撃滅せしめてみせよう。」
グダグダです、終わらない序章、始まらない1章
もう少しです…頑張るのでもう少しだけ待っててください




