第一話
ーカキーンー
夏空に快音が響き渡る
やはりこの音は格別だ
野球部の代名詞といっても過言ではないと思う
俺はもう夏の大会を終えた
しかし進学先でも野球を続けるつもりなのでこういう風に後輩に混ざって練習をし続けている
大学で活躍して憧れの舞台へ行きたい…
ただそれだけを目指して努力する毎日だ
「っしたっ!」
「「っしたっ!」」
今日も練習を終えた
すると監督が
「お前どうだ?勉強もちゃんとしてんのか?勉強もちゃんと周りに追いつけるようにしとけよ?」
と声をかけてきた
それも当然高校自体が文武両道であり、俺が進学する大学も文武両道で知られているからだ
「もちろんですよ、野球でも勉強でも負けるつもりないっすから!」
「それならいいんや。頑張ってくれよ!」
そう言って監督は去っていった
ーざっざっざっー
「「お疲れ様でした!」」
「おう!気いつけてなー」
明日からはテスト週間で後輩達は練習が無い
テスト週間の間は俺も家での自主練だけなので
休憩日みたいなものだ
「明日はどんなメニューをすっかな」
そんなことを考えながらいつもの帰り道を通っていた時だ
フッ…
と目の前が急に暗くなったのだ…
「…しー…も…し…」
なんだ?…
頭がふわふわする…
誰かに呼ばれている気がするが…
「もしもしー!」
「うわぁ!」
「えぇ!?」
「ここは?…」
「ここはバセバルという街です、あなたは見たところここの人間ではなさそうですが…」
「バセバル!?そんなところ聞いたことない…」
「あなたはどこから来たのですか?」
「日本です。」
「ニホン?…」
どうやら、俺はとんでもないとこにとんでもない感じで飛んできたのかもしれない…
と思ったその時だ
「ドロボー!ウチの大事な商品を盗むんじゃあないよ!」
「ド、ドロボー!?しかもこっち来てない!?」
知らないところに飛ばされたにもかかわらずすぐにトラブルとは…
悪いことしたのか?…そんなことを考えながらも俺は素早くカバンに手を突っ込み硬式ボールを取り出した
そして大きく振りかぶり渾身の1球を泥棒目掛けてぶん投げた
ードゴッー
鈍い音が響いた
俺が投げた渾身の1球は泥棒の顔面にクリティカルヒットしたのだ
「す、すごい…」
俺を起こしてくれた少女が感嘆したように小声で言った
そして、お店のおばちゃんらしき女性が近寄ってきて
「そこのあんた!どうやったかは分からないけどありがとうよ!おかげで捕まえられたよ!」
「いえいえ!お役に立ててよかったです!」
「にしてもあんたが投げたこの丸い球っころといいあんたの服装といい見たことないねぇ」
「この人ニホンって言うところから来たらしいの、お母さんはニホンってところを知ってる?」
え?この人お母さんなの?
心のツッコミとほぼ同時に
「知らないねぇ…でも、そうなると泊まるところなんもないんじゃないのかい?」
それもそうだ
なぜなら…
バセバルなんて街を俺は知らないからね!
「お母さん!ウチで泊めていったら?客人用の部屋だってあることだし」
「それは構わないよ、あんたはそれで大丈夫かい?」
こんな知らない土地で何もわからない俺を助けてくれるだなんて…
未だに頭の中はこんがらがっている状態だが親子の好意にあずかることにした
「お願いします!」
「元気のいい挨拶だね!私はトロワって言うんだ!こっちは私の自慢の娘さ!」
「アンって言います!おつかいの帰りに道端に倒れていたあなたを見つけたの、あなたの名前は?」
「俺はタケルって言うんだ、よろしく!」
「「よろしく!」」
ここから俺とアンとトロワから広がるお話しの始まり始まり…
「というか…ここについて詳しく教えて貰えますか?笑」