表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/57

膝枕

儀式を終えた女王は俺から離れ、町民達に指示出しを行なっている。

やっぱり慣れてるんだろう、俺の想像を超えるテンポで家の修復が進み、

いくつもの骨組みが見る見るうちに出来上がっていく。


「シツ、何を突っ立っている」


「ゾデ……さん」


フルメイルのゾデが俺に声をかけてきた。

俺にも作業を手伝えと言うのだろうか。

俺は痩せてるから頭数にはならないし、余計な筋肉が付いても困るので、

チカラ仕事は遠慮させて貰いたい。

所で今平時なんだから、せめて兜くらい取ったらどうよ?


「そこに居ると邪魔になる。

あそこの木陰にでも行って、休んでいると良い」


ゾデが俺の後方を指差す。

良かった、強制労働じゃなかった。

俺が振り返ってその指の先を追うと、

走って数秒程度の所に、樹齢が3桁に達しているであろうゴツゴツした巨木が。


「あれは、メツェンさん……」


巨木の下にはメツェンさんが座っていて、俺と目が合うなりニコッと笑い、

自分の膝をポンポンと叩いてみせた。

あれって、膝枕してあげるからこっちにいらっしゃい、の意味だよな。

それとも俺の知識と全く違う、この国特有の意味を持つボディランゲージなのか。


前者でした。


「あのー……」


「どうしたの?シツちゃん」


「俺、どうして膝枕されてるんでしょうか……?」


しかも頭を撫でられている。

天使の輪っか、邪魔でしょうに。

そもそもウィッグ越しだし。


「嫌?」


「嫌じゃないですけど……」


ある種の理不尽さと気恥ずかしさから、俺は発言の後半になるにつれて声を小さくし、

最後なんかはメツェンさんの耳に届かないほどだった。

この太ももの暖かさと絶妙な弾力は、決して嫌じゃないですけど。


「なら良いじゃない。

ねえシツちゃん、これなあに?」


メツェンさんは天使の輪っかを指でつついて揺らした。

この問いに、俺はどう答えたもんか。

この国、いやこの世界にはコスプレなる文化が存在するのか?するなら話は早いんだが。

あとで面倒な事になっても困るだけだし、無難に正直に行こう。


「特別な意味は無いです。

ただのアクセサリーで……」


「そうなの。

私も付けてみようかしら」


ウィッグの付属品なんだよね、これ。

もしどうしても付けるなら、ウィッグごと装着しないといけないよ?


「今までも何人かのアンチエージェント達に会ったけど、

シツちゃんは特に変わってるわね。

なんだか男の子みたいですもの」


男の子みたいじゃなくて、男の子です。

まあ、女装趣味の俺は性別なんてさして気にしてないし、

女装する上で女扱いされるのはむしろ本望ですらあるから、

ぶっちゃけどっちでも良いしどうでも良いんだけど。


そういや、結局アンチエージェントって何なんだろ。

メツェンさんも知ってるみたいだし、この機会に聞いてみよう。


「あの、アンチエージェントってどういう意味ですか……?」


メツェンさんは俺を撫でながら答える。


「シツちゃんみたいに、別の世界から来た人をアンチエージェントって呼ぶの。

アンチエージェントはみんな、ラスティアンを倒せる特別なチカラを持ってるのよ」


「そのラスティアンって言うのは?」


「シツちゃんが倒してくれたバケモノの事ね」


「バケモノって、あのイセエビですか?」


「……イセエビ?」


メツェンさんが首を傾げ、豊かな緑髪が揺れた。

俺の知る限りだとあれはイセエビで間違いないのだが、

メツェンさんには通用しなかったらしい。

元の世界とここでは、その辺の常識が全く違うのか。


「えっと……」


会話が途切れてしまった。


「この世界にはあんな感じのバケモノが沢山居て、

それを倒せるのはアンチエージェントだけなの」


「ゾデさんが剣で斬っても、再生してましたね」


「そうでしょ?

だからシツちゃん達アンチエージェントは、私達の救世主なの。

一杯可愛がってあげるから、その分頑張ってね」


可愛い顔して腹黒っぽい事言うなぁ、メツェンさん。

やたらベタベタしたり今こうして膝枕してくれてるのも、全部その為っすか……?


「はは……」


俺は苦笑いした。

毎回あのイセエビみたいに上手く行くなら良いんだが、

何分まだ1回しか倒してないからなあ。


それにしても女装癖持ち引きこもりの俺が救世主だなんて、ちゃんちゃらおかしい。

て言うか結局、俺はどうしてここに来ちゃったんだ?

異世界転生なんて、所詮2次元のおとぎ話だろ?

それに、


「メツェンさん、いつまで膝枕を……」


メツェンさんが、またもニッコリ。


「嫌?」


嫌じゃないですけど、このままだと駄目になっちゃいそうです……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生チームハーレムいずれも初挑戦です。 評価や感想、レビュー等下さると更新の励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ