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5匹目



 近づいてみると、それはツタの絡んだ古木でした。

 木の枝には、あふれるほど白いツバキが咲いています。しかも、一輪一輪がホタルのようにぼうっと光を帯びていたのです。たくさん集めて花束をつくると、それはそのまま、白い灯りになりました。

 キョーコは、白い花束で道を照らしながら、ときどき立ちどまっては大きなこえで


「アヤちゃん!」


 と、よびました。

 さぁっと暖かな風がふきました。

 ツバキの花がいくつか風に乗り、淡い闇を飛んでいきます。キョーコはツバキを目で追いかけてみますと、どうでしょう。岩陰に、白い一輪のユリが咲いていたのです。それは、いままで見たどのユリよりも白く透き通っていました。光輝くような花弁からは、たっぷりと黄金の蜜を垂らしています。


「イノチノユリ!」


 キョーコは駆けだしました。

 ぱらぱらと白いツバキが地面に落ちましたが、もう灯りの心配はありません。キョーコは震える指でユリをつかみます。


「ようやく見つけましたね」


 ふいに、キョンの声が空間に響き渡りました。

 いつのまにか、キョンはキョーコの足元に腰を下ろしていたのです。


「場所を知っていたなら、どうして教えてくれなかったの?」


 少し恨みを込めた口調で言いますと、キョンはケロッとした様子で言い返してきました。


「それでは見つけられないのですよ。フクロウたちの言葉を思い返してごらんなさい。

 『イノチノユリは、どこにでもあって、どこにもない』

『本当にほしい人のまえにしか、あらわれない』と。

 貴方は本気で欲しいと願いました。必死に必死に考えて、闇に負けず、懸命に足を動かしました。

 だから、あなたの前に現れたのです。

 さあ、願いを口にしながら、その蜜を地面にたらしなさい」

「……本当に?」


 キョーコはじろりと見つめました。

 また、願いの代償なんてとられた日にはたまったものではありません。すると、キョンはやれやれと首を横に振りました。


「私は嘘をつきません。

 イノチノユリは無償で願いを叶えてくれる不思議なサクユリなのですよ」


 キョンの目はまっすぐで、ウソをついているようには見えませんでした。キョーコは真剣な顔でイノチノユリを見つめます。ユリの蜜は先ほどより減り、あと数滴しかなくなってしまっていました。

 時間はありません。キョーコはすぅっと息を吸うと


「アヤちゃん、どうか もとにもどって」


 と、唱えるように言いました。

 黄金色の蜜を花弁から落とします。とぷり、と黄金色の蜜は地面に吸い込まれていきました。その瞬間です。蜜が吸い込まれた地面から眩い光が四方に飛び散ったではありませんか。

 キョーコは、思わず目を覆いました。

 やがて、だんだんと光が収まっていきます。指の隙間から覗いてみると、光の洪水の向こうに小さな女の子のシルエットが見えました。


「アヤちゃん!」


 キョーコはイノチノユリを放り出すと、疲れていることなんて忘れ、一目散で走りました。

 それは、間違いなくアヤちゃんでした。


「キョーコちゃん!」


 アヤちゃんは、はっきりと言いました。キョーコは大きく手を広げながら、アヤちゃんにだきつきました。


「ごめんね、わたしのせいで、ごめんね!」

「キョーコちゃん、ごめんねなんて いわないで。

 キョーコちゃんのおかげで、戻ってこれたんだから」


 二人は、おいおい泣きました。

 いっしょに、いつまでも いつまでも泣きました。

 そして、泣きながら、とうとう眠りに落ちてしまいました。






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