ep8 2人の敵
――アイツが来る
「誰っ!?」
聞き覚えは無いが、どこか懐かしさを感じる暖かいような声だった。が、その声と重なるように、氷のように冷たく槍のように鋭い殺気を感じた。メテオの後ろに、黒い機体が立っていた。
『……ワキンヤンを渡せ。さもなくば、汝らを破壊する!!』
やばい。絶対にやばい。そう直感的に感じた。
「お前は何者だ? ただの軍人ではないな!?」
『ラビ王子の近衛兵だ。さて、交渉の返事は?』
「……NOだ!!」
ラビ…… ラビ=リア…… この国の第一王子だ。昔は、やさしい子だったのに……。
『NOですか。では、あなたたちの機体を破壊させていただきましょう!』
すごい速度で、黒い機体が飛んでくる。避けるには、時間が足りないだろう。
「武器は……。くそっ! どこにあるかわからない……!」
「残りのAIは…… 10機。増兵が無けりゃ、10分で」
近くにいた1機のAIを破壊し、宣言した。
「片付ける!」
――右上にあるパネルを
まただ。あの、なぞの声。確かにこの声のとおり、モニターの左右には映像に支障が無いように薄くすけたパネルが3つずつ並んでいる。
――なぞれ
ほかに方法があるわけではない。この声に従って、右上のパネルをなぞった。
「あと、3機」
2機のAIとエンジンを同時に破壊した。残りは1機だ。
「次で……!!」
振り返ると、目の前に最後の1機がいた。
『AIのなかにも、本物は混じっているんだよ。そろそろ、手柄が欲しいなぁ。下級兵に戻りたくはないしね、ケケッ』