ep56 2つの謝罪
『我々の勝ちですね。よくやってくれました、ルイ』
『……ぃ……ぁい』
雑音が入った音声は、近衛兵の勝利とルイのウィスパーボイスを届けた。ルイの呟きは誰にも正確には届いていなかったが、同じ言葉を繰り返しているようだった。
『悪い……。負け、ちまった……』
リリに拾われたらしいツバサは、そのコックピットから謝罪の言葉をつむいでいた。言葉につまり、本当に面目なさげな声音でゆっくりと。しかし、アリスはその言葉をしっかりと聞くことはできなかった。
――『ごめんなさい』と繰り返しておるようだな
「勝ったのは向こうなのに?」
――そうだ
対話しているのは麒麟。ルイのウィスパーボイスが何を言っているのか気になったアリスは、麒麟に問いかけたのだった。何と言ったか分かるかと。
――なぜ、あんなにも謝罪しておるのかは分からんがな
「そっか……。あー、もう、どうしていいのか分かんねぇ!!」
この戦いが始まってから、異変が多すぎる。
ファーストが戦いの前に言っていた“繋がり”という言葉。それを示すかのように、敵の中には知り合いがいて。ナインとエイドもファーストとかいうリーダー格を知ってるようだし、ツバサもさっき戦ったルイという敵のことを知っていた。それに、リリの執拗なまでの攻撃。こうも色々起こってちゃ何が何なのか分からなくなってくる。
『……ス! ……ァリス!』
「! な、なに!?」
いつのまにか、エイドから通信が入っていた。
『こっちのセリフだ。次の戦い、どっちが出るか。決めないと』
エイドの声色には、緊張と怒気が含まれていた。