ep55 2つの刃
キンッ、カキンッと鋭い金属音がその場に響いている。リーチは互いにそう変わらない。
ツバサはカッター型の小型ナイフを。ルイはチャクラムを握りしめたまま、メリケンサックよろしく拳を突き出している。
先の金属音はその2つの武器の交わる音なのだ。
「これじゃ、ラチがあかねぇ……」
ツバサの呟きも最もだ。ルイの実力はツバサと互角、もしくはそれ以上。攻撃をいなすことしかしてこないゆえに、断言はできないことだが。
『うん。そうだね……。これじゃあ、ラチがあかないね』
金属音は長い間響き渡り続けていた。
『……でもね、ツバサも分かるでしょう? とどめをさしたくはないって気持ち』
「……あぁ」
“トモダチ”だったがゆえに、させないとどめ。“トモダチ”だったがゆえに、ささなければいけないとどめ。
金属音が響く。
『でも、もう、さよならだね』
強く、金属音が響いた。そのまま空を切り裂く音をたてていた金属は、それなりの質量を持った物体らしい音をたて、地面へと突き刺さった。
『ごめんね、ヒート、それにファースト。私にはムリだった』
カッターナイフを落としたツバサのメインカメラに、ルイのチャクラムが迫る。ガリガリと削られるような音をたてたレンズは、衝撃のためか、バリンと音をたて割れた。
それでもなお、勢いの落ちることのなかったチャクラムはツバサの機体の回路を断ち切った。
音をたて、緊急電源でわずかに動いた機体は、主にひざまずくポーズをとり、停止した。