ep54 2回の異変
ツバサはすこし変わった少年期を過ごしていた。
毎日、家の近くの丘へ出掛けては景色を眺める。時おり――それは、軍の機体演習だったのだろう――ロボットを見かけては、その日はいい日だとはしゃいでいた。
それの音が聞こえない日は、自然の中ですこしだけ遊んでは家に帰るという行動を毎日繰り返していた。そんな中、異変が起きた。今まで誰も居なかった丘に、1人の少女がいた。その少女は、ツバサが時おり見ていた機体に乗っていたようだった。驚きつつも、話をすると妙な具合に気が合った。
いつしかツバサは、その子に会うために丘へ行っていた。いつもサヨナラは少女の方からだった。――お父様にしかられちゃうから。彼女はいつもそう言っていた。話しすぎた次の日は、彼女は現れることはなかった。だから、ツバサを引き留めることはせずに見送っていた。
そんな毎日の中、再び異変が起きた。ほぼ毎日来ていた少女は、ある日を境にピタリと来なくなった。それと同時期に、頻繁にロボットを見かけるようになった。
何体も同じ機体が視界の中を埋め尽くす。あの中に彼女はいるのだろうか?――思いつつにらめども、ツバサに機体の判別が出来るわけもなかった。もし――俺が同じようにロボットに乗っていたら。……乗っていたら、彼女と再び会えただろうか?
「ツバサ! やっぱりだよ! オレのにらんだ通りさ。ここにもあったぜ!!」
エイドの声が聞こえる。もしかしたらロボットが手に入るかもしれないと、彼は言っていた。祠でロボットのパーツのようなものを見つけたと喜んでいた。
「おう、今行く」
また会おうと約束したのだ。彼女にもう1度会いたい。機体にさえ乗ることができれば、また会える気がしていたのだ。