ep50 2つめの勝敗
「も、もう許してくれよ…… 参ったって言ってるだろぉ!」
ガコンッと何かが外れる音がして、急に視界が数メートル下に落ちた。ダメージを負った関節が、ついに自重に負けたんだろう。
今のモニターには恐ろしげな表情だった面ではなく、テラテラと光る鎖をさげた腕と胴が映っている。――片腕がなく、ひどくバランスのとりづらそうな機体が。その他にも、ヒビが映り込んでいる。
「これ以上、もう……」
そこまで声を出したときだった。大きな音と共に、コックピットに静寂と闇が訪れた。
ついに電気系統までいかれ始めたか。電磁波の音――ヒートの感覚で言うなればで、一般的には耳鳴り――が、耳の中でこだましている。
マイクも、外部スピーカーも、通信機も、全部が全部電気に頼っていた。――つまり、相手に降参の意を伝える手段がなくなったのだ。これで、壊れるまで戦いから離脱できなくなってしまった。
ヒートはムチャな突攻するために、不要なパーツとして予備電源を外してしまったことを後悔していた。
が、突然断続的に続いていた衝撃がピタリと止み、機体が後ろへと引きずられるような感覚に変わった。しばらく引きずられ、コックピットハッチが外部から開けられたとき、ヒートは思わず安堵に包まれた。
「ル、ルイ!!」
『……ぶざまね、ヒート』
青色の見慣れた機体がコックピットをのぞいていた。
『あなた、自称最強じゃなかったの? またこんなに壊して。相手が急に攻撃を止めたから良かったものの』
ルイの嘲るような声音には、心なしか安堵の色も含まれているようだった。