ep49 1つの魂の姿
頭の奥で響き続ける声と変わらない声。その声は玄武と名乗った。
「妾は玄武じゃ。信じれぬか?」
首をかしげ、かわいらしい表情を見せる玄武。その表情と裏腹に、敵対心をむき出しにした蛇が威嚇をしてくる。
「これ! 客人に威嚇なぞ無用じゃ。のう、主もそう思うであろう、リリよ?」
蛇を注意すると、長い黒髪を揺らし、問いかける。無意識のうちか、玄武は蛇の頭を撫でる。蛇は嬉しそうに舌の出し入れを繰り返す。
「……あなたは」
「む?」
首をかしげた玄武は華奢だ。抵抗軍の所有している機体の中で、1番ゴツい玄武らしくない体つきなのだ。同じである想像がつかない。
「本当に玄武なのですか? その……」
「本当じゃ。華奢だからのう、疑うのも無理はなかろうが。妾は雛形というよりも、魂に近いものじゃからな」
ゆるいウェーブのかかった髪をもてあそぶ玄武。ウェーブというよりロールと呼べるリリの髪。2色の髪が暗闇に漂う。
「……むぅ」
急に玄武の眉間にシワが寄る。
「なかなか、くたばらんの」
「くたばる? 何がでしょうか」
リリは質問を口にしてからハッとする。――まだ、戦いに決着はついてなかったと。
「“奴”じゃ。見るかえ?」
刹那、玄武の姿と共に闇が晴れた。霧が晴れるのを早回しで見ているような、そんな晴れかただった。
闇が晴れた景色はいつものコックピットだった。が、1つだけ未知の光景があった。それは――
「!」
――自重に耐えかねた関節が使い物にならなくなる様。装甲がグシャグシャにへこんで、色と相まって潰れトマトのようになっている様。――敵機の無惨な様だった。