ep41 3つめの声
チャクラムが空を切り裂き、白虎へと近づく。
“冷静”をどこかに置き忘れたナインは、そのチャクラムの放つ威圧感とも取れる気配に圧倒され、見えるけれど動けないという現象を味わっていた。
「……っ!」
やっと動けたころには、チャクラムは目前へと迫っていた。当然、避けきれるはずもなく被弾した。
「なんでこんなときに動けないのよ……!」
――今は見えすぎているの。落ち着いて、ナイン
「!?」
ナインの脳裏に声が響いた。
聞き覚えがないのに懐かしく感じるそれ。その声はナインに助言を授けた。
――ブースターを使いなさい。出力は70%に抑えて
「出力を抑えるの?」
――100%で使い続ければオーバーヒートするけど、それぐらいの出力ならこの戦いの間ぐらいは使い続けられるはず
「……分かった。アドバイスありがとう」
誰の声だか分からないが、戦いに勝つことを考えるナインは助言を信じることにした。
横にある、ほとんど使ったことのないスイッチ。
タブをつまみ、ひねる。それにあわせて機体がうなりをあげる。
(50…… 60…… 70!)
画面に表示された出力を確認すると、いつの間にか外部スピーカーが切れていたことに気がついた。スピーカーを入れ、宣言する。
「この戦い、負けられないから。勝ちにいくよ!!」
『そう? 私も負けられないし、そろそろ決着つけちゃおうかな?』
リョイの武器がチャクラムから弓矢へと変わる。
白虎も武器である鉤爪を装備する。
『「絶対に、勝たせない!!」』