ep34 1人の王子
「俺が隣国の王子なのは、この前知ったよな?
名前は、ルルゥリア・ゴールデンハーツ。あ、ルファは一応偽名な。キティとは双子でも姓が違うんだ。
それは俺らの国の決まりで、王族は所属する宮の名前を使うからだ。俺は男だし、王位継承権がある方の宮に所属している。
今はちょっとした事情で、キティが王位についてるけどな。
それはともかく、ゴールデンハーツの姓を持つヤツには、もう1つ仕事があるんだ。それは、この国--独立する前はいっしょだった国の危機を救うこと。
俺らは代々、守護神を目覚めさせる鍵を受け継いでいる。守護神っつーのはこいつら、麒麟とか青龍とかだな。
今、俺の伯母にあたるんだが……この国に逃走したワンダーっていう人物が、名目上は摂政としてこの国を動かしている。それも、悪い方向にな。
実際は、ラビ王子に秘術の類いでもかけて意のままにしているみたいだな。
アリス。俺の勘違いじゃなければ、お前はその摂政の娘、アリス・I・ワンダーじゃないか?」
ルファは、そこでプツリと話を切った。
話を振られたアリスは固まった。
「……オレは……」
意を決したように、口を開いた。
「オレの名前は、アリス・I・ワンダーだ」
アリスは軽く首を振った。
「でも、オレの親がそんなことをしてるだなんて、知らなかった!」
「ま、母親が生きていることすら知らなかったって顔してるしな」
ルファは軽く笑った。ルファは「精神体は精神感応だけが取り柄だな」と、小さく呟いた。