ep32 2つの業
『粛清』
ハッキリとしたスピーカーの音で、アリスの意識は現実へと引き戻された。刹那、青龍の機体から放射状に光が伸びた。
ヤバいと悟ったのか、親衛機は距離をとった。その距離をうめるかのように、青龍も前進する。
『清流が如し。“青の正拳”』
光を放つ青龍が大きく踏み込むと、全体重をのせてパンチを放った。
紙一重で親衛機が後ろに避けた。……が。
『くっ……!』
ギミックだったのか、青龍の掌から光線が放たれた。後ろに避けていた親衛機は、体勢を戻しきれずに直撃した。
直撃した衝撃で、音をたてて親衛機が倒れた。
『粛清』
ふたたびスピーカーから声がした。青龍は親衛機に馬乗りになり、構えている。
『憤怒。“青の連掌”』
青龍が連続パンチを繰り出す。
親衛機はなすすべもなく、攻撃を受けている。
--このままでは、中にいる操縦者が死ぬぞ
麒麟の声にハッとして、アリスは声を張り上げた。
「エイド、止めろ!! リリも声をかけて!」
『! エイド、お止めなさいっ! 聞こえないんですのっ!?』
珍しく、リリも声を張り上げた。 しかし懸命な呼び掛けもむなしく、親衛機は火花を撒き散らしながら壊れていく一方だ。
『お止めなさいが聞こえないんですのっ!?』
リリがさらに声を張り上げる。
手を出せず、待機していた玄武が動き出した。見かねたリリが止めようとしているようだ。
玄武が青龍の後ろへ回ると羽交い締めにした。それでも青龍は拘束を解こうと、暴れる。
『目を覚ましなさい! エイド!!』