ep28 1体の伝説
『アリス! 今のどこからか……』
「あっち! えっと、東の方向から」
悲鳴が聞こえてきたほうを指差しつつ、答えた。
『行こう!!』
急行すると、黒色の親衛隊の機体が何かを羽交い絞めにしている。暴れまわるそれは、誰でも1度は聞いたことのある生物だった。
「うそ…… ドラゴンって実在したんだ……」
赤色に染まったウロコ。時々口から漏れる炎。それはどう見ても、あの伝説上の生物だった。
『こんなところにいたなんて……』
リリの言葉をさえぎるように、エイドの何かに気づいたような言葉が聞こえた。
『ここって…… 東の祠の近くじゃないか!!』
探してみると、たしかに親衛隊の機体の向こうに何かの祠らしい跡が見える。装飾は親衛隊とドラゴンの激闘を物語っていたが。
ふと視界の隅に緑色の光が映った気がした。
「なんだ…… あれ?」
よく見ようと目を戻しても、それを見ることはできなかった。見えたのは、ボロボロになった祠の装飾だけだ。
『アリス? なんかあった?』
「いや、見間違えだったみたい……。ごめん。それよりも」
『ああ…… 助けないとな。ドラゴンなんて希少種』
そういって、エイドは親衛隊のほうを見た。押さえ込まれたドラゴンが炎を吐き、よりいっそう暴れまわる。
助けようにも、こちらにも危なそうな暴れ方だ。うかつに近寄れない。
『どういたしましょう? このままでは……』
『ああ。助けられないよな……。でも、行くしかないだろ!』
エイドの乗る青龍が親衛隊のほうへと動き始めた。