ep18 1人の期待と覚悟
横移動で目の前の矢を避ける。それでも、精確に絶え間なく矢は飛んでくる。ここまで精確に連続となると敵ながら尊敬できる。
「やっばいな……」
少しずつだが矢が刺さり、動きも鈍くなり始めた。あまり高威力でなかったのは幸いだ。近づかなければ反撃できないが、避けるのに精一杯で動けない。
「……いっそのこと前に進むか……?」
ただ、敵の腕前を考えると得策ではない。それに機体がバージョンアップしてからは乗っていないし、どんな能力があるのか分かっていない。武器がどこにあるのかも含めて。
「しかも、何のデータか分からないし……」
とりあえず、前回のデータが残っていたからそれで起動はできた。だが何のデータか分からない限り、有効な戦術を使えないだろう。
「どうする……」
しかし、返事が無い。無いと分かっていたけれど、期待していた。その期待は見事に裏切られた。
「オレにはもう興味ないってか……。いいさ、“運命の人”がオレじゃないと分かり切っていたことだしな。受け付けてくれただけ、まだマシか……」
――汝、覚悟はあるか
聞こえた。ハッキリと。求めていた、声が。
そして、思いだした。この声が前回言っていたことを。
『汝、戻らない覚悟が必要となる時。長き戦いに深く身を投じることになる』
「覚悟は……あ……」
――どうした? 有るのであろう? 無いなら無いで、さっさと答えるがいい
有る、とは答えるのが怖く、言えなかった。
(『深く身を投じる』か……)
「ごめん……。みんな……。メテオ!」
――む?
「オレの覚悟を受け取れ!」