ep17 1人の近衛兵
ジジジ……。
「通信だ……」
ナインに通信が入った。どうやらエイドからのようだ。
「分かった。でも、できれば荷物の移動はさせてほしい。幸いワープポイントに近かったし、すぐに合流するから。…………ありがとう」
「何かあったの?」
「幻獣が出た。たぶん、近衛兵にも気づかれているって」
「分かった。でも、荷物少ないから大丈夫。すぐに合流できる」
そういって、ナインが通信に応じている間に準備を済ませた箱を見せた。ダンボール2箱分。ほとんどが本と機械のパーツだ。
「行こう。近衛兵よりも先に幻獣を助けないと」
それなりに重いダンボールは運ぶのに時間がかかった。大体、20分ぐらいはかかったように思える。部屋には運び込まずに、壁際に置いたままロボットに乗り込む。……はずだったが――
「――無い……。メテオが……無い」
「え?」
修理中と布をかけられていた朱雀と応急処置された白虎を除いて、ロボットは残っていない。モニター室のほうに向かう。朱雀が残っているということは、ツバサも残っているということだ。
「ツバサ! メテオは!?」
「おぉ!? びくったぁ。メテオなら……」
そういってモニターを指差す。モニターにはメテオの機体が映っている。パイロットは――
『ルファ、アリスのお帰りだぜ。交代の時間だ』
ツバサが通信でメテオのパイロットに呼びかけた。
『分かった。……って言いたいけど、無理そうだ。ごめん』
機体から見える景色が映っているモニターには、深緑の近衛兵の機体が映っている。
『こいつを倒して、帰還する。絶対に』
「見たこと無い機体……。青いのと黒いのは、元からいた人たち。白いのはいない。戦うことになるのは、アリス……かな」
見たことの無かった機体が、リョイの前で戦闘体制に入る。
「ごめん。アリス。嘘……嫌いだったよね……」
そういいながらも、弓を引き絞る。
「でも、戦わなくちゃいけないの。それが、軍に生まれた宿命だから」
涙とともに弓を放った。