ep16 1人の少女
「おはよう」
本を読んでいたナインに声をかける。
「おはよ、どっかでかけるの?」
アリスの格好を見たナインは、そう聞いた。
「うん。ちょっと、荷物を取りに」
「そっか。手伝おうか? 一人じゃ大変でしょ?」
本を閉じて、ナインが立ち上がる。
「ありがとう」
「いいよ。ちょっと外の空気吸いたいところだったし。じゃ、行こっか」
普通に扉から出たところは思ったよりも目的地に近かった。ちょっと急ぎ足で、10分。
「ここだよ」
そういって指差したのは、極力目立たないようにかかれた看板。
「『獣研究所』? ここにいたの?」
「うん。おおっぴらに、幻獣とか書けないし。ちょっと名前があれだけどね」
扉を開けると、前まで毎日見ていた後景。窓の位置、家具の位置。そして、
「ただいま、リョイ」
見慣れた後姿に声をかける。
「お帰り、アリス」
聞きなれた声で返された“オカエリ”。長い三つ編みがゆれる。彼女はあどけない笑顔を見せた。彼女は後ろにいたナインに気づき、立ち上がった。
「はじめまして。リョイといいます」
「はじめまして、ナインです」
ナインの声を聞き、リョイは軽く驚いたようだった。ほぼ気づかれないような程度だったが。
「どうしました?」
「い、いえ。よろしくおねがいします。で、アリス。もしかして……」
リョイはアリスのほうに向きなした。
「うん。ここから出て行くよ」
言われる前に、自分から切り出した。リョイは悲しそうな顔をした。
「そう……。さびしくなるよ、ここも」
「たまには顔出すし、大丈夫だって。じゃあ、荷物もってくね。ナイン、こっちに来て」
アリスはナインを連れて、使っていた部屋へ小走りで去っていった。
(アリス……。まさか、あの“白い疾風”をつれてくるなんて……。戦いたくはないよ、アリス)
そう思ったリョイに通信が入る。「幻獣と抵抗軍が現れた。至急、城に集合」と。