表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/52

5.キメラになった双子のエルフ:イヨーヌとペイリー

5.キメラになった双子のエルフ:イヨーヌとペイリー


エルフ種というのは双子を忌み嫌います。

それというのも、生まれた子供が双子であるということは、普通の赤ん坊に比べて能力も寿命も半分になってしまうと考えるからです。


イヨーヌとペイリーはエルフ種の双子でした。


本来ならば両親の手によって殺されるところを、双子は偶然居合わせた人間に買われます。

言うまでもありませんが、双子は人里の娼館に転売されました。


鋼紀1600年前後のことです。

人権なんてものはありません。


イヨーヌとペイリーは10歳までを雑用として働き、それからは店で春をひさいだとされています。

(ご存じだとは思いますが、エルフ族は12歳前後までは人間とおなじように成長します)

珍しいエルフの、しかも双子ということで話題になり、客は大金を払い、店はあっという間に大きくなりました。


ですが、その金の卵をうみおとす双子は、ある日、忽然と居なくなってしまいます。


さらわれたのです。

娼館の店主は双子に褒賞をかけて探しましたが、結局、見つかることはありませんでした。


それから25年後。


とある貴族が悪魔崇拝者の容疑で摘発されました。


そこに、双子はいました。

変わり果てた姿で。

あの人間は、ボクあたしのことを『神』だと言った。


新しい『神』だと。


ココでの暮らしは安楽だった。

前の棲み処に比べて、おいしいものも食べれたしね。

けど、暇だったじゃん。

暇だったけど、痛いことはなかったよ?

嘘ばっかだ! 最初はすんごく痛いことばっかされたじゃないか!

そうだったね、最初はすんごく痛いことばっかりだったね。


けど


今では痛いことなんてない。

今では寂しいと思うこともない。

今では何時か引き裂かれるんじゃないかと怖がることもない。


ボクあたしは、本物のエルフになれたのだから。

悪魔崇拝者の貴族邸にのりこんだ捕縛者たちが地下で見たのは、おそろしいキメラでした。


そのキメラの詳しい姿形は文書に残っていません。

悪魔、ということで書き残すのがためらわれたのでしょう。

ただ『おぞましい獣』とだけしたためられています、件のキメラの核となっていたのがイヨーヌとペイリーだったのです。


キメラは捕縛者たちの半数を殺害して逃げました。


そうして街に潜伏し、夜な夜な人間を狩るようになったのです。


キメラに明確な意思があるのはハッキリとしていました。

それといのも、惨殺死体に弄んだような跡があったからです。


また、イヨーヌとペイリーの意識があることは、ある夜、キメラと遭遇した娼婦が見逃されたことから確認されました。


娼婦は、もと双子のはたらいていた店の女だったのです。

娼婦は言いました。

キメラが「姐さん、久しぶりだね。ボクあたし、本当のエルフになれたんだよ」そう言って笑ったのだと。


キメラが街で殺害した一般人は、実に30名に及んだそうです。


そんなキメラは、ある夫婦の冒険者によって駆除されました。


記録によれば、夫婦はエルフ族だったそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ