4.養父母殺しの幼児:ピオラ
4.養父母殺しの幼児:ピオラ
鋼紀1753年のことです。
さる孤児院を血にまみれた幼児が訪ねて言ったのです。
『両親が死んだ』と。
院長は慌てて警察に通報。
幼児の住まいに駆け付けた警官がみたものは、刃物で心臓と首筋を切り裂かれた男女でした。
当時の警察は物取りの犯行として片づけました。
ですが、真相は違ったのです。
これはピオラの犯行でした。
幼児の初めての殺人だったのです。
ピオラには親類縁者がなく、そのまま孤児院に引き取られます。
ピオラ4歳。
天使のような容姿に、賢いこともあり、直ぐに養子先は決まりました。
ですが、養父母は殺されてしまいます。
もちろんピオラの仕業でしたが、まさか幼児が殺人を犯すはずもないという先入観から警察はまたしても強盗の犯行と決めつけてしまいます。
ここでまた、ピオラは他の孤児院へと移されました。
そうして、直ぐに養子縁組が決まります。
決まると、しばらくして新しい養父母は殺され。
そんなことがピオラが6歳になるまで、8件で起こったのです。
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大好きな義父さんと義母さんの、虚ろな眼が、ぼくのことを映している。
どうして? と言いたげに軽く驚いた顔をして。
『ぼくはね…』
血にまみれた自分んの手の平をみる。
『愛が…こわいんだ』
最初の両親。ぼくを産んだ人たちは、何時もぼくを殴って蹴った。
だから。
殺した。
そうしたら、直ぐに次の両親ができた。
とても好い人たちだった。
大好きだった。
幸せだった。
嬉しかった。
でも。
だから。
その大好きがなくなるのが。
幸せがなくなるのが。
嬉しいのがなくなるのが。
何よりも、好い人たちに愛されなくなるのが。
こわかった。
だから、愛されなくなるまえに殺した。
愛されたままでいられるように、殺した。
2番目のパパとママも、3番目のお父さんとお母さんも、4番目の父さんと母さんも、5番目も6番目も次も次も。
『もう限界だよね』
ぼくは頭がいい。
だから、そろそろ周りの人たちが、警察が不審の目を向けてくるだろうということが分かっていた。
『死んだら…だれか迎えにきてくれるかな?』
ぼくは血まみれの手に新しい包丁を握った。
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新聞配達の少年から異臭がするという通報を受けて警察が駆け付け、凄惨な現場を目撃します。
老齢の夫婦と幼児の死体。
警察は現場を調べ、遺体の身元を調べ、そこで気づいたのです。
ピオラという幼児の周辺に相次いでおこっていた殺人に。
丹念に調べた結果、信じられないことですが、4歳の幼児が連続殺人事件の犯人であることがわかりました。
ピオラの手にかかった人数は16人。
史上最年齢の殺人犯として記録されたピオラの死因は自殺だとされていますが、理由は謎のままです。