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33.美しい女性の上半身と蜘蛛の下半身をもった古代種:アラクネ

33.美しい女性の上半身と蜘蛛の下半身をもった古代種:アラクネ


ギー、ガッコン。

ギー、ガッコン。


隣りの部屋からはたる物音が聞こえる。


50年。

聞いてきた音だった。


ギー、ガッコン。

ギー、ガッコン。


彼女と出会ったのは、ワタシが13歳の頃。

当時のワタシは…いいや、村は貧しさから誰もが飢えに苦しんでいた。


ギー、ガッコン。

ギー、ガッコン。


そんな時にあらわれたのが彼女だ。

若く美しい女性の上半身と、蜘蛛の下半身をもった半身半妖の魔物。


ギー、ガッコン。

ギー、ガッコン。


彼女はワタシに取引を持ち掛けた。

素晴らしい機を織って反物たんものを捧げる代わりに伴侶となって欲しい、と。


ギー、ガッコン。

ギー、ガッコン。


ワタシは受け入れた。

彼女の織った反物は非常な高値で売れ、以来、村は貧しさとは無縁になった。


ギー、ガッコン。

ギー、ガッコン。


あれから50年。

ワタシはもう、死ぬ。寿命だ。この10日間ほど枕をあげられなくなっていた。


ギー、ガッコン。

…………。


50年、聞き続けていた機織りの音が止まった。

隣室との仕切りがけられて、相変わらず若く美しい彼女が姿をあらわす。


「さぁ」とワタシは笑顔で彼女を出迎えた

「死んでしまう前に、ワタシを食べておくれ」

愛する人を生きたままむさぼる。


「ごめんなさい」


苦痛の呻きをもらす人に謝りながら、食べる。


「愛してます」


一片の肉も骨も残さずに食べる。


愛と栄養を、腹に宿して。


「ああああああああ!」


子を産んだ。


もはや、立ち上がるちからさえない。


「さぁ」愛する人が、そうしてくれたのと同じように、笑顔で子を迎える。

「ワタシを食べておくれ」

アラクネ。


美しい女性の上半身と蜘蛛の下半身をもつ魔物は、人間の男性をたぶらかしてはその体を喰らうと不老長寿の古代種だと言い続けられてきました。


その寿命は最初期の文献からすると1000年前にさかのぼり、犠牲者は300年の内だけで10人にものぼっているのです。


しかし、です。

とある学者が、それまでのアラクネの生態を否定したのです。


いわく。

アラクネの寿命は人間とそれほど変わらず、愛した男性に健気なほどに献身する、と。


学者は述べています。


我々はアラクネを不老長寿の種と勘違いしている。

アラクネは死期を悟ると、その体を子供に栄養として捧げて、そうして代替わりをするのだ、と。

代替わりした子の容姿が、親と相似しているので、不老長寿だと思い違いをしているのだ、と。


異端とされている学者の説です。

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