31.英雄だった男:リーム
31.英雄だった男:リーム
英雄。
こう聞いて、みなさんは誰を思い浮かべるでしょう?
熱砂の強行軍で知られる、将軍バルドワ。
従卒でありながら国を落とすまでに成り上がった、ジェシ。
魔物の大繁殖による暴走を6度も食い止めた、ワルド。
住んでいる国によって、思い浮かべた英雄は様々でしょう。
今回、紹介するリームは大陸の南にうまれた英雄です。
祖国に侵略せんとする蛮族を退けること10年で26回。
その蛮族を追撃して隷属させると、都に召喚されて、本国軍隊の将軍となり。
敵対していた国を5年で3つまで併呑。
そんな人気絶頂の最中で、クーデターを起こし、腐敗した貴族を粛清すると、見事に国の刷新を成功させながら、自らは罪を認めて将軍職を降りた。
そんな清冽な英雄です。
将軍職を辞したリームは、時に42歳。
まだまだ若いリームは、後進を育てんと欲して軍人の養成校の校長に赴任したのです。
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昔から他人を見る目があった。
才能を見抜くとでも言おうか。
その眼力のおかげで、俺は優秀な人物の配下となって立場をあげた。
立場をあげると、見込んだ優秀な部下を手なずけて、俺を盛り立てるようにした。
おかげで英雄と呼ばれるまでになったわけだ。
しかし。
所詮、俺は平凡な能力しか持たない。
英雄の器ではないと弁えている。
こんな俺如きを凌ぐ才能をもった連中はゴロゴロしていた。
そのうち、俺を越えるような英雄が現れるだろう。
「許せんな…」
俺を越える英雄?
そんなもの要らんだろう。
俺がいるのだ。
この国に俺以外の英雄なんて必要がない。
だから俺は、今日も事故に見せかけて若い才能を潰す。
アイツは魔物に襲わせて。
アイツとアイツは仲違いをさせて同士討ちさせて。
どいつもこいつも、才能をもった連中は葬った。
英雄は、俺だけでいいのだ。
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その3人はそれぞれが併呑された国の出でした。
彼等はリームを恨んでいました。
復讐の機会を狙っていました。
常にリームの行動に目を光らせていた3人は、ある日、知ってしまったのです。
リームの恐ろしい本性を。
鋼紀1102年。
英雄リームは逮捕され、即刻、首を刎ねられました。
リームは活躍が大きいだけに敵もまた多かったのでしょう、抗弁を許されることもなく、すみやかに処置されたといいます。
鋼紀1106年。
リームの国は併呑した3つの国の独立を認めます。
鋼紀1120年。
蛮族を退けることができなくなったリームの国は、3つに分割して、先の3国に保護されるようになりました。
ここに、リームの盛り立てた国は滅亡したのです。
英雄が死んで、わずか18年目のことです。
リームは他人の才能を見抜けたといいます。
もしも彼がその才能をつかって、まっとうに校長職に励んでいたのなら、きっと国は滅びなかったことでしょう。
それこそ真の英雄として称えられていたことでしょう。
リームは目先のことしか見ていませんでした。
その先にあるものを見ようとしませんでした。
そんなリームは今では英雄ではなく、愚か者の代名詞として南では知られています。




