28.魔物に恋した女:クージョ
28.魔物に恋した女:クージョ
世界に人種が広がるに従って、魔物の生息地が段々と減ってしまいました。
そうなると世界の各地に生息する龍種を筆頭とした強力な魔物が腹をすかして人里を襲わないとも限りません。
だからこそ必要となったのが、ゴブリン牧場やオーク牧場といった、人工的に魔物を増やす施設なのです。
こういった牧場で育てた弱い魔物を、保護区域に放つことで、食物連鎖のピラミッドの土台が盤石になるのです。
今回紹介するクージョは、ゴブリン牧場で働く女性でした。
こういった魔物の牧場で女性が働くというのは珍しいことです。
キツイ、キタナイ、キケン、の3Kであることに加えて、女性はゴブリンやオークに襲われる心配があるためです。
誰もがクージョを酔狂だと言いました。
どうせ、直ぐに音を上げるだろうと思っていました。
けれどもクージョは辞めなかったのです。
そのうち、献身的に働くクージョに男のスタッフも一目置くようになったと言います。
ですが、そのクージョの献身は度が過ぎていたのです。
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人間は、わたしを裏切る。
親は、わたしを捨てた。
友達は、わたしを見捨てた。
大人は、わたしを売った。
人間は、信じられない。
そんなわたしが、唯一こころを許せるのがゴブリンだ。
ゴブリンは知性の低い魔物だ。
人種を目の敵にして、女を犯す。
そう考えられている。
でも、それは大きな間違いだ。
ゴブリンは餌を与えてくれるボスに対しては群れで従順になるのだ。
この餌というのがミソだ。
餌は、人間の肉じゃないといけない。
そのことをわたしが知ったのは、わたしを裏切った男と、その女を殺して、証拠隠滅にゴブリンに死体を食わした時だった。
以来、ゴブリンどもは、わたしをボスと認めて従順だ。
この餌の秘密は、おそらく世界中でわたししか知らない。
だから、今日も。
人間を殺して、わたしはゴブリンどもに与える。
わたしが、ボスであり続けるために。
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浮浪者を撲殺しようとしたクージョが通報されました。
鋼紀2028年のことです。
指名手配されたクージョは、働いていたゴブリン牧場に逃げ込みます。
そして始まったのです。
ゴブリンの狂乱、が。
最初は、追い詰められたクージョがゴブリンを解放したのだと思われました。
しかし、違っていたのです。
クージョは明らかにゴブリンの群れに護られて、ゴブリンの群れを使役していました。それこそ手足のように自由自在に動かしていたのです。
幸いにもゴブリン牧場は山奥にありました。
おかげで街にこそ被害はでませんでしたが、牧場の近隣にあった幾つもの里村がゴブリンに蹂躙されました。
死者103名。重軽傷者26名。
軍隊に鎮圧されるまでに出た被害です。
クージョは近代になって最悪最凶の殺人鬼として名を残しました。
なお。クージョがどうやってゴブリンの群れを使役したのかは謎のままです。




