27.顔のない天使:アネラ
27.顔のない天使:アネラ
その女は山奥にたった1人で宿を営んでいました。
港町から国の首都へと至る最短の山道にある宿ではありましたが、道が険しいこともあり、せいぜいが月に10人泊まればいいほうだったと言います。
それでも、評判は上々でした。
ベッドは清潔で、風呂もあり、食事も美味い。
とても好い宿だったのです。
ただひとつ。
女将である女が顔の鼻から上を覆う仮面をつけていることを除けば
それ以外は、とても好い宿だったのです。
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「あ~、極楽だ」
顔見知りの商人がお酒を飲みながら歌うように言う。
「ほんとにココは素敵な宿だよ」
言いながら立ち上がって、一緒にお酒を飲んでいた私の後ろに回る。
「これでさ……女が抱けたら…」
そっと、私の胸に手を這わせる。
そして言う。
「なぁ、女将。その仮面の下。どうなってるんだ? 火傷でも隠してるのか?」
いいえ。私は首を振る。
「なら、何で隠すんだ?」
私はブサイクだから。
ハハ、男が笑う。
「見えてる部分だけでも、ふるい付きたくなるほど色っぽいのに。それはないよ」
男が私の首筋に唇を這わせる。
「仮面、とってよ」
そっと囁く。
「俺が、確かめてやるよ」
そう言ってくれたから。
私は仮面を外した。
「!」
男が目を見開く。
男が息をのむ。
やっぱり。
ぶさいく! 母の罵声が思い出される。
ぶさいく! かつては花柳でも1、2を争うほどの美姫と謳われていた母。
ぶさいく! 目尻の皺を、濃くなったほうれい線を、憎々し気にゆがめて。
ブサイクだよ! あんたは!
怒鳴る!
気付けば私は……。
男を肉を切り分けるナイフで刺し殺してしまっていた。
母親と同じように殺してしまっていた…。
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商人が幾人も行方不明になっている。
捜索が始まりました。
やがて山奥で宿を営んでいた女が逮捕されます。
鋼紀1744年のことです。
女は仮面をつけていました。
本人は、その仮面を外されることを拒みましたが、そうもいきません。
仮面は取り上げられ。
その場に居た捜査関係者は息を呑んだそうです。
あまりにも。
あまりにも。
女が美しかったのです。
女は終身刑を言い渡されました。
しかし、その美貌に魅せられた人々から差し入れが届けられ、果ては看守までもが彼女に肩入れして、外出できないことを除けば、死ぬまで何不自由をしなかったそうです。
後に顔のない天使と言われた殺人鬼。
彼女の本名はアネラ。
ある国の言葉で『天使』をあらわす言葉です。
名付けた親は、娘のことを天使のように思ったのでしょう。
そんな天使がどういった理由で人を殺すようになってしまったのか。
本人は死ぬまで語りませんでした。
顔のない天使、というハリウッド映画があります。
今回は、その題名から想像をひろげて考えてみました。
で、映画ですが。
全然ちが~う! まさに名作! 感動しまくりです!
90年代前半の映画は本当に名作ばかり。
個人的には『フライドグリーントマト』て映画。これが最高!
ホラーが好きな人は、ぜひ見て欲しいです!




