表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/52

14.生まれ変わりを信じたハーピー:ライライラ

14.生まれ変わりを信じたハーピー:ライライラ


おととし、海獣の巨大な胃袋に熱を溜め、そこにゴンドラを吊るすことで、人種はようやく空へ飛ぶことができるようになりました。


これから、だんだんと空の世界は人種のものになってゆくことでしょう。

知り合いの学者さまは、何時の日にか空の上のエーテル世界の高みにすら人種は昇り、尽きることのないエーテルをもって人種は更なる繁栄を遂げるだろうと息巻いております。


ということで、今日は空つながりからハーピーの殺人鬼の話をしましょう。


え? ハーピーを知らない?

さもありなん。ハーピーはリバイア山の噴火と、工場の煤煙によって幾十年も前に絶滅してしまいましたからね。


ハーピーというのは、亜人の一種です。

腕の代わりに鳥の翼が。脚の代わりに鳥の足が。胸元から頭にかけて羽が生えており、顔かたちは目鼻口こそありましたが、鳥を連想させるものであったとされています。


そして、言っては何ですが、ハーピーは頭が良くありませんでした。


よく鳥頭とか言うでしょう? 三歩で忘れてしまうとか。

ハーピーは、そういった類だったのです。


だから、他の人種と共存することができずに滅んでしまったのです。


さて、話を殺人鬼のライライラに戻しましょう。


ライライラはメスのハーピーでしたが、ある時ある日から人間の男性と愛し合うようになりました。


はじめこそ2人は人間からもハーピーからも奇異の目で見られておりましたが、その睦まじさから、やがて微笑ましく見守られるようになります。


でも。人間は弱いのです。

病気か? それとも寿命か? 男性は死んでしまいます。


生まれ変わっても、きっと君を探す。だからライライラも。ボクのことを忘れないで。


そう言い残して、男性は息を引き取ったのです。

ボクの両親はハーピーのせいで死んだ。


連中が大挙して遣って来て、農作物を食い荒らしたのだ。


そのせいで税を払えなくて、村主だったボクの両親は責任を取らされて領主に殺された。


ああ! 憎い!

ハーピーが! 憎い!


だから、ボクは連中の1匹と付き合って、あることを吹き込んでやった。


魂は生まれ変わると。

強く憶えていれば、生まれ変わっても魂がひかれあって再び出会えるのだ、と。


ハーピーはバカだから、強く憶えてなんていられない。

それを知っていたからこそ、吹き込んだ。


愛し合って。

心の底から愛し合って。


アイツが次の生では、ボクと出会えないのだと絶望する顔が見たくて。


なのに。なんで、そんな絶対に忘れないとか。

言うのさ。


涙がこぼれる。


こんなに憎いのに!


ああ!


愛おしい! こいつが! ライライラが愛おしい!


ボクはもう死ぬ。


でも本当に。来世とか言うので…。会えたのなら……。

どんな…に……。

ライライラは愛した男性を失って、直ぐに同族を殺し始めます。


『あたしはバカだから、彼のことを長く憶えていられない。だから他の人に憶えててもらうんだ!』


そう言いながら、殺し続け、やがて海の向こうに逃げ去ったとされています。


ライライラの言った通り、ハーピー族は滅ぶまでライライラのことを口伝として残しました。

個としては憶えてられなくとも、族として憶えさせたのです。


ライライラのその後は杳として知れません。

そもそもハーピーの体力で海を越えることなど出来はしないはずなのです。


ライライラは洋上で死んだのでしょうか?


それとも愛した男性との約束を信じて。

今でも何処かで生きながらえているのでしょうか?


たった一人ぼっちで。


何時か会えると信じて。


もう1度、言いましょう。

ハーピーは滅んでます。


けれども、未確認ですが、西の小島でハーピーを見かけたという噂もあります。

1匹のハーピーが、空に向かって悲し気に鳴いていたという噂があります。


投稿は週に1篇ぐらいでいきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ