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最強な冒険者は異世界を放浪する  作者: 弱腰ギャンブラー
16/22

15,憎まれ勇者、世に制裁を喰らう

 ……………………なんていうか、もうまじでしねよおまえら。


 人が精魂込めて作った設定ぶっ壊しやがって。


 このド腐れ無能ども(デンプンと冷たいこたつ)が、マジでリンチにしてミンチにしてメンチカツにして食うぞクソどはああーーーーーーー。


 あ、すいません。今、ちょっと元気なくて。


 とりあえず、投稿だけはしときます。


 はああーーーーーーー。疲れた。

「……何だったんだろうな、今の?」

「さあな。それよりフェルトよ」

「うん? 何だ……ごふっ」


 脇腹のあたりにドスッと何かが突き刺さる感触がしたかと思うと、後ろから刺された黒い刃がオレの体を貫通して前の方から飛び出ていた。


 ぐっ、な……!?


 見れば、その刃は魔王の闇魔法で作られたもので、徐々にではあるがオレの体を闇の気配が侵食している。


 慌てて前方に飛ぶ。ズボッと刃が引き抜かれ、鋭い痛みが走るが、気にしていられない。


「……おい、魔王……! どういうつもりだ……!」

「どういうつもり? ハッ、それをお前が言うか、この腐れ勇者が」


 え、あれ? この娘、オレに惚れてるんじゃないの?


 この様子だと、明らかにオレに殺意を向けている。先ほどまでの子供っぽさは微塵もない。


 ただ禍々しいまでの殺意と憎悪に彩られた視線でオレを射抜いている。


 彼女は、動揺するオレを見下して、その艶やかな唇をうっすらと歪め、


「俺の愛する弟がどこかに行ってしまった、その命で贖ってもらうぞ、勇者ァ!」


 叱声とともに、先ほど俺を貫いた黒い闇の刃が無数に出現し、オレに向かって殺到する。


 その攻撃には、甘やかな愛情や、慈悲や容赦などは一片も含まれていない。


 感覚が希薄になってきた四肢に鞭打って後方へと飛び退く。


 しかし、闇の刃はあきらめず、軌道を変えて突っ込んでくる。


「せっかく、せっかく、滅多に帰ってこないジェストが帰ってきたのに……! お前が、お前のせいでええエエエェェェ……!!」


 血を吐くような絶叫の一瞬後、オレに向かってくる攻撃の圧力がさらに数十倍に増加した。


 必死に魔法を使って防ぐが、正直ジリ貧だ。これだけの魔法、前に殺しあった時も使わなかったのに。


 魔王の言葉から察するに、今、魔王が激昂しているのは、オレがジェストを止めなかったから、ということか。


 あれ。ってことは……。


 魔王がオレに借金を快く貸してたのは……借りるときにジェストが来て会えるから?


 魔王がオレに惚れてるように見えたのは……後ろにいたジェストを見てたから?


 あれー。ってことは……オレの勘違い?


 っと、ヤバいヤバいヤバい。


 オレを刺し貫こうとする闇の刃は、すでに津波ともいうべき物量に増えていた。


 通常の魔法だけでなく、聖剣やこの地に住まう精霊の力を借りた精霊魔法で何とかそれを凌ぐ


 そうしながら脇腹の傷を治癒し、魔王に向けて必死に叫ぶ。


「ちょ、まっ、わ、悪かった! 謝るから! ど、どうすりゃ許してもらえる!?」


 オレがそう叫ぶと、魔王は一気に表情を冷たくして、


「ならば、今すぐ弟を連れ戻せ」

「え?」

「だから! 今すぐにジェストをここに連れてこいと言っている!」

「りょ、了解!」


 魔王の叱責に、オレは慌てて探知魔法を発動する。


 オレの魔力なら魔界全土に探知網を張り巡らせることができる。さらにいえば、ジェストの魔力は特徴的なので、すぐに見つけることができた。


 魔王の冷たい視線から逃げるようにして、続けざまに転移魔法を発動。


 一瞬でジェストの居場所の転移。何かの遺跡を調べていたジェストの腕を引っ掴む。


「あ? フェルト? 何だよ、俺はここで抜けるって……」

「いいから来い! いや、来てくださいお願いします!」


 ジェストの返事も待たずもう一度転移。魔王の元に再び戻って――


「ジェストーっ♡」

「だーっ、引っ付くな、鬱陶しい!」


 ――きた瞬間、オレですら捉えられない速度で魔王がジェストに抱き着いていた。


 何というか、目やら何やらからハートマークが飛び散っていて、非常に嬉しそうだった。


 しかし対照的に、ジェストの顔は苛立ちに彩られていて、本気で鬱陶しがっていた。


「あーもう、だから付いて行きたくなかったんだよ。姉ちゃんがいると、絶対こうなるからな!」


 どうやら、ジェストが旅から離脱したのは、魔王が付いて来るのを悟って、早々に逃げ出したというだけらしい。


 魔王はそんなジェストの苦情も気にせず、ジェストの胸板に頬を摺り寄せている。非常に幸せそうだった。


 というか、ジェストは知ってたのか。魔王の溺愛っぷりを。


「……ああ。俺が魔王城にいる間は、姉ちゃんはこんなもんだったよ。信じたくなかったけどな」

「何を言うか、ジェスト! 俺のお前への愛は本物だ、信じて構わん♡」

「そっちじゃねえよ! 魔王ってんなら、それ相応の威厳とかなんとか見せやがれ!」

「はっはっはー。何を言う。俺の魔王としての権能のほとんどは、前にお前に明け渡しただろうに」


 ……………………。


「……なんだかなあ」

「仲いいですね、あのご姉弟」

「ああ、うん……って、え、クリス!?」


 帰ってきた相槌に驚いて己の傍らを見ると、さっき魔法で木にしてしまったクリスが腕組みして立っていた。


 何で自力で戻ってんだ?


 オレがそう聞くと、クリスは怒気を濃厚に滲ませて、ジトッとした目で答える。


「……私たちエルフ族には、精霊たちが味方をしてくれます。彼らはこの世界の理に縛られないため、時には貴方のように超越した物より遥かに強力な力を発揮します」


 あとは、分かりますよね? と、クリス。


 な、なるほど。精霊たちに頼んで元に戻してもらったってわけか。


 変化させたのが木だったのもいけなかった。彼女たちエルフ族にとっては木などの植物は終生の相棒なのである。


 鉄などよりもよほど、干渉しやすかろう。


 納得しつつ、先ほどの魔王の剣幕に匹敵する炎のような怒りを、オレはクリスから感じていた。


 つつっと冷や汗が頬を伝う。


 …………どうやら、まだこの災難は続くようだ。


 とはいえ、自分で蒔いた種、喜んで受け止めよう。

 あ、ちなみに日曜日から新しくメンバーが追加されます。


 次は黒い白鳥の比喩という、まあなんというか厨二満載な、僕たちの友達です。


 他にもあと一人追加されますが、よろしくお願いします。


 それに伴い、二人いたお茶濁しどもは一日減らされるので、ご安心ください。


 でわ。

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