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第025話 マジック・フェスティバル

「やっぱり仲間だよな。パーティメンバーを増やしたい」


 昼前でまだ誰もいない城の食堂にて、今後についての方針を相談していた。

 資金を稼ぐこと、装備を整えること、仲間を増やすこと、どれも冒険者に取っては大事だ。

 魔物を討伐することが基本的な資金源となるが、そのためにはダンジョンへ潜ることになる。地下迷宮ダンジョンは、初心者向けということもあってどうにでもなったが、今のパーティでは大群で来られたときに処理しきれなくなる場合がある。実際、サリナ達のパーティが敵を引き付けてくれたおかげで切り抜けられた場面もあった。


 仲間が増えれば、それだけ敵を殲滅するのが楽になるし、探索もスムーズに進めることができるだろう。そうなれば、魔水晶の回収も鉱石などの素材の収集も(はかど)るというものだ。


「どういう人をパーティに加えるか、ですよね」


「そうだな。戦士、魔術師、それから罠や宝箱の解錠(かいじょう)()けた人も欲しい。しかし、どんな能力を持つかよりも大事なことがある」


「それは?」


「『美しい女性であること』。それが一番大事な条件だ」


 美しいとか可愛いとか色々表現の仕方はあるが、つまり俺の好みの女性かどうかという話だ。パーティに加えるということはハーレムに入るということなんだから、妥協(だきょう)することはない。

 エルノアが何か言いたそうにジッと見てくるが、ハーレムはこの世界に生きる男の義務なんだ、許してくれ。もっとも、その義務はむしろ積極的に果たすつもりだが。


「それから、武器や防具は基本的に店では購入しない。高いからな。よっぽど良い品物があったら買うこともあると思うけど、そうでない限りは素材を集めてエルに作ってもらうことにする。場合によっては、売ってもいいしな。目指せ、世界最強の装備だ」


 折角(せっかく)鍛冶錬金(かじれんきん)を持つ者が仲間にいるんだから、それを利用しない手はない。合成錬金(ごうせいれんきん)で貴重な素材を生み出し、強力な装備を作るのも楽しみの一つだ。


「が、頑張ります……」


「ま、これから徐々にやっていけばいいことだから、焦らずに挑戦して欲しい。さて、肝心の仲間探しだが……何かいい情報はないか? 美人がいる場所とかさ」


 冒険者ギルドで依頼(クエスト)を眺めていたとき、行き()う人々の顔はかなり拝見させてもらった。確かに美人も多く、強そうな人もいたが、あまりピンと来る女性はいなかった。

 外見(がいけん)だけで判断するわけじゃないが、第一印象とか、自分の直感(ちょっかん)は大事にしたいと思っている。


「それなら、うってつけの場所があるぞ」


 背後から低い声がしたと思うと、騎士団長のベルナルドが立っていた。

 あまり気にしなかったが、周囲には少しずつ人が増えている。はやい昼飯にする兵士や、ここで食事を取る冒険者が集まってきているようだ。


「ベルナルドさんか。詳しく聞かせて欲しい」


「ベルナルドでいい。今は休憩中だし、堅苦(かたくる)しいのは無しだ。君とは上下関係があるわけでもないし、数少ない男同士仲良くしようじゃないか」


 焼けた肌に茶色の短髪、そして高身長の騎士団長だ。歳は三十台(なか)ばか後半といったところだろう。その傷だらけの鎧を見ただけでも歴戦の騎士だとわかる。

 その中身は意外と気さくなオッサンだった。堅苦しいのが苦手な俺と気が合いそうだ。


「一週間後に、帝都のオルデイン大魔術学園にて『魔導祭(マジック・フェスティバル)』が開催されるのは知っているか?」


「まじっく、ふぇすてぃばる? 聞いたことはないな。魔法の使えない俺には無関係な祭りに聞こえるけど」


「いや、冒険者にもおおいに関係がある。魔導祭は、魔術学園で学ぶ魔術師達が卒業を賭けて(のぞ)む戦いの祭りなんだ。毎年恒例の行事だから、名前くらいは聞いたことあるだろう。そこにいる、グリムさんもご存知では?」


 騎士団長がグリムを『さん』()けするとは。もしかすると結構偉いのか、グリムよ。


「僕はあの学園には行っていないが、魔導祭については聞いたことがある」


「そうでしたか、それは失敬(しっけい)。とにかく、その祭りでは学園の魔術師が冒険者に依頼する形でパーティを組み、いかに強力な魔物を倒すかが競われるんだ。そいつが落とした魔水晶やドロップアイテムなどを証拠として持ち帰る。数で勝負してもいいし、質で勝負してもいい。合格ラインに達することが出来れば、晴れて学園を卒業だ。この祭りで優秀な成績を(おさ)めた場合、学園の魔術師と組んだ冒険者の双方に褒美(ほうび)が与えられるんだ」


 なるほど、魔物の討伐(とうばつ)大会ってところか。実に興味深い。


「そりゃ面白そうな(もよお)しだな。つまり、学園の可愛い女の子をゲットするチャンスってことか。俺にも参加資格はあるんだろうか」


「冒険者ギルドに登録してある人間なら大丈夫だ。騎士団の連中にも、参加するやつはいるぞ。俺も参加予定だ。異変が起きたという報告を受けて遠征から急いで戻ってきたが、君が活躍してくれたおかげで大きな仕事もなくなったしな」


 気に()めていなかったが、騎士団長含めて騎士の多くは遠征に行っているとサリナが言ってたな。帰ってくると問題が一応解決していて、良くも悪くも暇になったわけだ。


「強い魔物と戦うなら、パーティ人数は多いほうが良さそうですね。」


「うむ、君たちは三人しかいないからそれまでにあと一人か二人は増やしておいたほうがいいかもしれんな。魔術師と冒険者側、双方の同意があってパーティが組まれるのだから、優秀なほど相手を選ぶことができるわけだ」


「優秀な魔術師なら優秀なパーティを選べるし、優秀なパーティなら優秀な魔術師を選ぶことができる。ということは、上位に入るメンバーってやる前からある程度わかってたり?」


「……まあ、少なからずそういうことはあるかもしれん。学園でも一二(いちに)を争う魔術師なんかは冒険者にも有名だからな。この祭りで組んだパーティとその後も一緒に活動するっていうのは良くある話だ」


 仲間が欲しいと思ったタイミングでの新たな魔術師の獲得イベントだ。なんという僥倖(ぎょうこう)。帝都にある学園が主催という規模の大きそうな祭りだし、絶対に参加したほうがいいだろう。


「わかった、良い情報をありがとう。俺たちも必ず参加するよ。その時は敵同士か」


「ガハハ、相手は魔物だから敵ってわけじゃないけどな。競い合う相手が知り合いだと力も入るってモンだ。一週間後にはパーティを組む事前のエントリーが始まって、実際に戦闘が始まるのはその後だ。詳しいことが知りたいなら一度帝都に寄って確認してくるといい」


 そう言うと、ベルナルドは親指を立てながらニカッと歯を見せてくる。笑顔のまま食堂のカウンターへ行き、飯を取り始めた。

 兵士達がぞろぞろと入って来る。冒険者も混じって、かなりの人数だ。どこにこれだけの人間がいたんだと思いながら、逃げるようにして食堂を出る。

 昼飯は、女将さんのところでゆっくり取るとしよう。


「一応、目標は決まったな。祭りで魔術師を見つける。その前にもう一人仲間を加える。問題は、どこで探すかだ」


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