第91話 レベル90
ユランに数日間、頑張って貰って、魔石からダンジョンコアを作れないか試して貰ったが、結局、ダンジョンコアは作れなかった。代わりに完成したのが、複数の魔石を融合して大きくする事だけ。
魔石を融合すれば、ダンジョンコアの様に大きくする事は可能だが、籠められる魔力量が全く違う。
ダンジョンコアのサイズはバレーボール程度だったが、魔石を融合して、コアと同じ魔力量にしようとすると、龍形態のエキドナ2体分位の大きさになるそうだ。
そこで、ダンジョンコアサイズに融合した魔石を、コアと交換したら、ダンジョンの機能が回復するまでの期間が短くなるか聞いてみたが、数年は早く回復すると言われた。100年が90年になっても何も変わらない。
次に確認したのは、コア同士の入れ替えが、可能かどうかだが、ダンジョンコアの大きさは、ダンジョンの階数が多くなれば大きくなるが、極端に大きくなる訳じゃない。
階数の少ないダンジョンから、階数の多いダンジョンへのコアは移動可能だが、逆は不可能。これはダンジョンコアの台座にコアが収まる大きさじゃないと、魔力供給が出来ない為だと言われた。
そこで、ダンジョンコアの回復年数を正確に聞いてみたら、正確に測定した訳じゃないので、確かな事は言えないが、1年で1階層分は回復する様だ。
グロスターのダンジョンは64階層なので、ダンジョンコアの台座に魔石を入れておけば、64年程度でダンジョンの機能は回復すると思われる。
そして、コアの代わりに、台座に置いておく魔石を、融合した大きな魔石なら数年の短縮が可能だ。
そうなると、階数の少ないダンジョンを攻略して、融合魔石とコアを交換し、そのコアと階数が多いコアを入れ替える。極端にダンジョンの機能が落ちる様なら、ダンジョンコア同士の入れ替えを、段階を踏んで行うしかない。
ユランが言うには、ダンジョンが出来上がると、少なくても50階はある。
そこで、ダンジョンの機能が極端に落ちない様にする為には、50階クラスのコアと70階クラスのコアを入れ替え、その70階クラスのコアと90階クラスのコアを入れ替える。
最初の、50階クラスのダンジョン機能低下は避けられないが、それ以外は、気にならない程度に抑えられると言っている。これはあくまで、ユランの言い分だが。
これがエキドナの言い分だと、90階クラスのコアを融合魔石と交換しても問題ないと言って、この程度で人が衰退する事はないと断言している。
俺もエキドナの意見に賛成だが、国を治めている者だと、意見は違う。
ある程度は、統治者の意見を反映させようと思うが、最終的には強奪してでもコアは入手する。
ダンジョンコアの方は、大体の入手方法が決まったが、俺には、もう1つの方が重要だ。それは、90階クラスのダンジョンコアを守っている魔物だ。
グロスターのダンジョンコアを守っていた魔物のレベルは、階層数と同じ64レベルだった。攻略したダンジョンは1つなので、確かな事は言えないが、90階クラスのコアを守っている魔物のレベルは90レベル以上になると思われる。
フレイヤさんやエキドナ、ユランも協力してくれると言っているが、俺達のレベルは87だ。
これでも数日に1回は、フレイヤさんと分身狼にボロボロになるまで鍛えられているのだが、90レベル超えのボスとの戦闘は避けたい。
避けたいのだが、80階クラスのコアに変えると、コアが4つも必要となるので、90階クラスのコアを使うしかない。
今は、俺と浩史、フレイヤさんの3人でファンドラ王都の城にお邪魔している。当然、フレイヤさんはファンドラ国の人に囲まれて、ちょっと煩わしそうだ。
「兄貴、ダンジョンコアをどうするか決めた?」
「そんな事は最初っから決まってる。
90階クラスのダンジョンは、ファンドラ王都と小国群の2つだから、そこのコアを使う」
ファンドラ国とは話が付いているし、小国群は街ごとに支配者がいて、好き勝手やっているので、ダンジョンの管理などはされていない。
それに、元の世界に帰るのが俺の目的なので、そこは譲れない。
「ファンドラ王都のコアも使うの?」
「ネイビスファー共和国に70階クラスのダンジョンがあるから、そのコアをファンドラ王都のコアと交換する。
カーロイ陛下に話してファンドラ国にもOKを貰った」
「えっ、ネイビスファーの方には?」
「ネイビスファーには、融合魔石で数十年頑張って貰う。あそこの法律を調べたけど、コアの持ち出し禁止は書いて無かったからOKだ」
気になって調べてみたが、コアの持ち出しを禁止している法律は、どの国にも無かったので、コアを持ち出した事が判明しても言い訳は出来る。
「そんな言い訳が通るの?」
「…じゃあ、しらばっくれるから問題ない。
それより、コアを守ってる魔物の方が心配だ。俺達もレベル90までは上げたいな」
今現在の俺達のレベルは87なので、後3レベルをどうにかしないと、まともに戦う事も出来ない。
「フレイヤさんに猛特訓して貰う?」
「浩史、今でさえ、腕や足を噛み千切られたり、剣で切られたり、魔法で吹っ飛ばされたり、これ以上やられたら、死ぬ!!
ドラゴンだ!老龍を狩るぞ!」
高レベルの魔物を他に知らないので、ドラゴン狩りを提案してみた。エキドナ達も他の龍の事を仲間だと認識していないので、倒しても問題ないと言っていた。
「ドラゴン狩りか、ゲームではよく狩ったけど、老龍のレベルは?」
「エキドナとユランに偵察を頼んであるから、もう直ぐ分かるだろ」
レベル上げを効率よくする為、エキドナとユランには龍になって、レベル87前後の老龍を見付けに行って貰った。
浩史とフレイヤさんの3人で、装備を整え待機していると、エキドナから連絡が入った。
「マサキ、89レベルの老龍を見付けたぞ、どうする?」
「ターゲット設定をして、ユランと合流してから、老龍を平地まで誘い出せますか?」
「我等に掛かれば余裕だぞ」
まあ、エキドナもユランも、龍体形ではレベル100だし、人に変身している状態でもレベルは96だから問題ない。
「俺達も直ぐにヘリで向かいます」
ファンドラ王都で待機していたので、城のヘリポートから直ぐにヴェノムで飛び立った。
ヴェノムで飛び立って暫くすると、エネミー1から3のターゲットが設定された。どうやら3体の老龍と戦闘になる様だ。
「やっと解放された。マサキ、ファンドラ王都での待機は、二度とやらんぞ」
「覚えておきます。しかし、ヘリポートがある場所は限られていますので、無理だと思いますよ」
ヴェノムの操縦は、最初は浩史が操縦席に座ろうとしたが、フレイヤさんが操縦すると言って、操縦席に座っている。俺はフレイヤさんの隣で操縦を代われる様に待機し、浩史は後部座席でHTIを装備して待機している。どうやらヘリからの狙撃をする様だ。
3体の老龍と戦闘になるのに、浩史とフレイヤさんは気にしていない様だが、頼もしい事だ。
「あっ、レベルが上がった」
「本当だ。エネミー2が消えてる。エキドナかユランが倒したのか?」
「エキドナに聞いてみる?」
「行けば分かるからいいだろ」
エキドナ達とフレイヤさん、俺達の5人でチームを組んでいるので、エキドナが倒しても、俺達に経験値が入る。素晴らしい!
俺達が到着するまでに、もう1体、倒してくれないかな?パワーレベリングは楽でいい。
俺の願いが叶う事なく、もう直ぐエキドナ達が戦闘している所に到着する。
「ヒロシ、ヘリのレーダーに老龍を捉えたぞ」
「距離1kmから狙撃するので、ホバーリングして下さい」
「待て!私も狙撃したい。マサキ、操縦を代われ」
2人共、ヘリからの狙撃をする様だが、対物ライフルを使っている俺達なら1kmからの狙撃は可能だが、フレイヤさんが使っているドラグノフの有効射程は600mだ。
「じゃあ、距離500mでホバーリングしますから、思う存分狙撃して下さい」
レーダーで見る限り、エキドナとユランは老龍と接近戦をしている。
「エキドナ、ユラン、今からフレイヤさんと浩史が狙撃します。最初はユランと戦っている老龍から!3!2!1!0!」
俺の秒読みと同時に、ユランが射線を避け、アサルトライフルのAK-47で老龍を牽制する。0と同時にヴェノムから2発の弾が発射され、老龍の額と頬に着弾し炸裂。
流石に老龍の鱗は頑丈だが、額と頬の鱗が剥がれて、物凄く怒っている。
追い打ちを掛ける様に、ユランが頭を狙いAK-47を連射すると、数発が鱗のない額と頬に当たり老龍が倒れた。
「マサキ、もう1体の老龍の真上に付けろ。私が切り込む」
ドラグノフを仕舞って、刀を取り出し、ヘリから飛び降りる気満々のフレイヤさんには悪いが、もう直ぐ片付きそうだ。
エキドナが、老龍の体の至る所にC4を取り付けて遊んでいる。後はボタン1つで終わると思うのだが、エキドナも老龍の近くに居るので爆破が出来ない?
「フレイヤさんは待機して下さい。エキドナの方も終わりそうです。
エキドナ、C4の爆破はこっちでやりましょうか?」
「我がやる。後は額にC4を取り付けたら、爆破させる」
エキドナの宣言通りに、老龍の額にC4を付けると、一気に距離を取り、C4を爆発させると老龍が崩れ落ちた。
あれ?死んでないぞ。
「エキドナ、レーダーからエネミー3が消えてません。どうしますか?」
「ヒロシ、狙っておるか?」
「いけるよ」
「やれ」
浩史のHTIから発射された弾が、C4で鱗が無くなった額から頭部に入り、中で炸裂すると、目や鼻から血が流れて来た。
またレベルアップした。これで89になったが、最低でも、もう1レベルは上げたい。
倒した老龍から魔石を取り出し、エキドナとユランが1体ずつファンドラ王都まで運び、もう1体は首と尾を切り取り、カーゴトラックに乗せて俺達が運んだ。
ファンドラ王都では龍が現れたので、一時騒然としたそうだが、俺達が到着した頃には落ち着きを取り戻していた。
なぜ老龍の遺体を運んだかと言うと、龍の肉は美味いと聞いたからだ。
老龍の大きさは、エキドナ達よりも一回り大きいので、運んだ2体はファンドラ国に進呈し、1体は俺達で持ち帰った。
持ち帰った老龍を、エキドナとユランは食べなかったが、フレイヤさんやデボラ達は喜んで食べていた。
「兄貴、食ってみる?」
美味そうに食べている皆を眺めて、浩史が聞いて来た。
「蜥蜴は無理だぞ」
近くにエキドナ達が居ない事を確認して、本音を話す。
「蜥蜴って言うより、恐竜だと思うけど?
昔の人も、マンモス食べてたから、いけそうだけど?」
マンモスと恐竜は違うが、恐竜だと言われると、食べれる気がするから不思議だ。結局、食べなかったけど。
まだレベルが低いので、エキドナに老龍を狩っていいか確認すると、問題ないと言われた。
成龍や幼龍も居るので、この大陸の龍が全滅する事は無い。そもそも龍が死ぬ原因は、龍同士の縄張り争いなので、数を減らしても、大きな縄張りを主張している老龍が減れば、その分、縄張り争いが減り成龍の生存率が上がると言われたので、気にせず狩る事にした。
老龍のレベルは80~90位なので、エキドナとユランに協力して貰って、レベルの高い老龍を平地まで誘い出して倒した。
老龍をもう5体倒した所で、念願のレベル90となった。
レベル90で何か機能が追加されるかと期待したが、普通にレベルⅹの武器や弾薬が購入出来るだけ。フレイヤさん達もそうなので、期待薄だったが。
ユランと話して、集めた老龍の魔石は、融合させてネイビスファーのダンジョンコアと入れ替える事にした。
ユランからの質問で、90階クラスのコア2つで魔力が足りない場合はどうするか聞かれたので、魔法学院に上げたグロスターのダンジョンコアを使うか、旧カーマン帝国に70階クラスのダンジョンがあるので、そちらから調達する予定だと説明した。
90階クラスのコア2つで、足りるか足りないかは、揃えて見ないと分からないので、小国群のダンジョンから攻略する事にした。
ヴェノム:12人乗りの汎用ヘリ。武器は機関銃かミニガンの取り付けが可能。レーダー範囲半径2km。
HTI:ブルパップ式ボルトアクションの対物ライフル。12.7×99mm NATO弾、10.6×83mm弾、10.4×77mm弾を使用。
AK-47:1949年にソビエト連邦軍が採用したアサルトライフル、7.62×39mm弾を使用。端末ショップで購入出来る。
ドラグノフ:ソビエト製のセミオート式スナイパーライフル、口径は7.62×54mmR弾。端末ショップで購入出来る。
C4:プラスチック爆薬の一種。耐久性、信頼性、化学的安定性が高い。起爆装置は無線式でボタンを押すと爆破する。有効範囲は5m。
FMTVカーゴトラック:2.5t・5tタイプの2種類で、荷台には多連装ロケット砲や指令室など色々なバリエーションのユニットが存在して換装出来る。但し、換装するには換装設備も必要になる。




