第66話 脅迫
謁見の広間に進みながらレーダーを確認して、足元の生き残りに止めを刺しながら歩いて行き、広間に入る前にリロードしてMDRを武器スロットに戻し、エキドナから貰った刀を取り出した。
スロウを発動して、間合いを一気に詰めて、3人の騎士に切り掛かる。
1人目の騎士の剣を弾いて首を落とすと、残り2人の騎士が驚きながらも切り掛かって来たが、後ろに下がって相手の間合いから出て、剣が通り過ぎた後に、2人目の腹に突き討つ込み、そこから3人目に向けて逆袈裟斬りで仕留めた。
2人目に突いた騎士が生きていたので、頭に刀を突き刺して止めを刺して、刀を振って血や脂を落として鞘に収めて、アイテムBOXに戻す。刀を振って血は少し落ちだが、脂は落ちないので帰ってから、手入れをしなければならない。
王の前まで歩いて行き話し掛ける。
「降伏しますか?それとも続けますか?」
「陛下の御前である!膝を付け!!」
左右に並んでいる貴族の中から、豪華な服を着た貴族が、俺に跪く様に言って来たが、次の瞬間には頭が無くなっていた。
「俺は日本国、徳川皇帝の代理として、敵国、ナミル王国代表のミッシェル・ランカスターと話している。貴族の分際で誰の許しを得て、話に割り込んで来た!」
俺が怒鳴ると一斉に静まり返ったので、王に向き合い続きを話す。
「降伏か継続か、返答は?」
「マサキ殿が保護している者に、暴行した冒険者を引き渡す。所属冒険者ギルド長には1年間の減給をして、減給分は暴行を受けた被害者に支払いをする」
「それは戦争前の条件では?今更その内容で事が収まるとでも?」
「新しい条件が?」
「戦争賠償金、貴族には賠償税を課税、アルクドロ教の財産没収及び現司祭の逮捕、奴隷の廃止、大使館と外交特権、ナミル王国が所有している書の閲覧を認めて頂きたい」
王に直接、内容を認めた書状を手渡す。
戦争賠償金:日本国に対して1年以内にミスリス硬貨500枚の支払い、その後は毎年ミスリス硬貨100枚を支払う事。
貴族には賠償税を課税:領地持ちの貴族は日本国に対して賠償税を支払う。領地持ちの貴族全体で、毎年ミスリス硬貨100枚を日本国に支払う事。貴族以外課税は認めない。
アルクドロ教の財産没収及び現司祭の逮捕:没収した財産は全て孤児院の予算とし、グロスターの司祭が、日本国の大使に脅迫した罪を連帯責任とし、司祭以上の者は全て死罪。アルクドロ教は建物や土地の所有を禁止。借地でも教会としての機能を有した時点で、その土地を没収する。
奴隷の廃止:奴隷制度の廃止、隷属の首輪の使用禁止。但し、罪人には隷属の首輪の使用を許す。それ以外の使用は無条件で死罪。
大使館と外交特権:グロスターの家を日本国の領土とし、松岡正樹と松岡浩史の両名は、ナミル王国の法は適用されない。又、両名が保護した者も同様に、ナミル王国の法で裁けない。
ナミル王国が所有している書の閲覧:ナミル王国が所有している書庫への出入りと書の閲覧権限。
戦争賠償金と貴族の賠償税は、期間を10年間とし、支払いが滞りなく行われたら、10年後には失効する。
王が書状に目を通して、後ろに控えているクリフォード宰相に渡した。宰相も書状を読んで、顔を顰めている。宰相の顔を見て王が口を開いた。
「こんな一方的な条件では、条約を結ぶ事は無理だ」
「そうですか、残念です。30分後にこの城を瓦礫に変えますので、避難して下さい。更に30分後にカーマン帝国との国境ある北の砦を破壊します。書状の条件を了承する準備が出来たら白旗を上げて下さい」
「待ってくれ!降伏はするが条件を見直して欲しい」
戦闘継続の意思はない様だ。まあ7000人の兵士を数分で壊滅させられたら、普通は戦争継続などとは思わないが。
「それは無理です。これからネイビスファー共和国にも同様の書状を作りますので失礼します」
「待て!北の砦を壊せば、カーマン帝国がナミルに侵略するぞ!そうなればマサキ殿にも都合が悪かろう」
「勝手に滅べ。祖国でもない国が亡ぼうが、植民地にされようが、一向に構いません」
「トクガワ皇帝と話がしたい!」
「ご勝手に、皇帝からの停戦命令が出たら戦闘を中止しますが、それまでは継続しますので、早く日本に辿り着けるといいですね」
この世界に日本はないけど、頑張って探して欲しい。
「マサキ殿から連絡を取って欲しい」
「そこまでする義理はありません。この場で皆殺しにされないだけ感謝して貰いたい。後25分です。避難を開始された方が身の為です」
これ以上、話す事はない。謁見の広間から出て行こうとすると、コンラード将軍が立ち塞がった。
「余りに一方的な話ではないですか?」
「そう言えば、あなたも私を脅した者の1人でしたね。この場で私の身柄を拘束してみますか?」
「あれを脅しと言われるのか、ナミル国では、あの程度なら脅した内に入りません」
「国王も同じ考えですか?」
振り返って、王に確認をする。
「…確かに、その程度なら…、脅した事にはならない…」
警戒して明確な発言を避けている。さて、どうしようか?
「あれがナミル王国の普通なら、この降伏条件も日本国の普通です。問題でも?」
「マサキ殿に、もう一つお聞きしたい。王都の空を飛んでいたのはヘリなのか?」
「あれはヘリではありません。戦闘機です」
「そのセントウキは、二ホン国で保有している数は?」
日本が保有している戦闘機の数なんて知らん。適当に答えるか、軍事機密として回答を避けるか、どっちがいいかな?
「1000程度ですか、何か?」
「1000!?あれが1000もあるのですか?」
「そう言いましたが?」
「陛下、あのセントウキ1台でも、ナミル王国軍では太刀打ち出来ません。これ以上被害が出る前に降伏した方がいいと具申します」
確か、コンラード将軍は国王を除けば、軍の最高責任者だ。これは一気に降伏する流れになるのか?
「将軍、マサキ殿が言った事を、確認もせず鵜呑みにされるのですか!」
「クリフォード宰相、お言葉ですが、マサキ殿の言った事が本当で有ろうが無かろうが、これ以上の戦闘継続は無理です。それこそ北の砦に居る兵士を呼び戻せば可能ですが、それではカーマン帝国からの進軍を許す事になります。どうされるお積りですか?」
「それは…、今後の会議で決める事、今この場で決める事は早計では?」
「しかし、時間がありません。マサキ殿、攻撃時間の変更をお願い出来ませんか?」
「無理です。20分後には城を破壊します。私は退避しますので、ご自由に」
もう、ここに用はないので、安全な所まで早く移動する。
「浩史、後10分で城を破壊するから用意して。誘導方法はレーザー誘導で、突入角度は0°にして真上から攻撃して」
「10分後に着弾させるの?」
「10分後に離陸を開始して」
「了解。ナミル国は、まだやる気なの?」
「コンラード将軍は降伏を進めていたけど、会議で決めるみたい」
浩史に謁見の広間での遣り取りを説明して、降伏するなら白旗が上がる事を話す。
残り2分で城から白旗が上がる。
「浩史、白旗が上がった。城の破壊は一旦中止だ」
「一旦?」
「条約を破ったら、城の破壊から始める。ナミル王国の次はネイビスファー共和国だな」
「ネイビスファー共和国って、代表者が議会政治をしてる国だっけ?」
「そう。20人の議員が議会を開いて、多数決で国の政策を決める国だよ。議員は腐ってると思うけど」
「何で?」
「そんなもんだろ」
「また無茶苦茶な自論だね。それでネイビスファーには、どんな条件を突き付けるの?」
「戦争賠償金、奴隷の廃止、大使館と外交特権、所有している書の閲覧の4つ」
「アルクドロ教はいいの?」
「違う宗教が主流で、アルクドロ教は少数派で、吹けば飛ぶ様な宗教だって。その内、勝手に潰れるだろ」
「ライトニングはホームに戻して、俺も帰るね」
「分かった」
浩史は一足先にホームに戻って、俺の方は、これからナミル王国で条約の締結をする事になる。自分で考えた事だが面倒だな。
城に戻ると案内役として、クロード外交大臣が待機していたので、後に付いて行き応接室より豪華な貴賓室?に通された。
貴賓室の大きな机には既に、国王を始め各大臣とコンラード将軍が揃っていた。
「それでは条約の締結をしたいと思いますが、こちらの条約を認めた書状の下に、サインと印をお願いします」
バスクル語と日本語の2枚の書状を机に並べて確認して貰う。
「マサキ殿、条約を執行するまでの猶予期間は3ヶ月を見ております」
クリフォード宰相が執行猶予期間を3ヶ月と言って来たが、俺が考えていたのは半年なので、何も問題ない。
「それで構いませんが、3ヶ月を過ぎたら迷わず武力行使を行います」
その他にも、条約で想定していない事が起きたら、その都度、話し合いの場を設けて、対応する事になった。
外交特権の証明書として、ナミル王国から外交員と記載したカードを作って、対応する事になったので、外交員や保護している者のリストを渡す。
「それでは、次の予定がありますので、これで失礼します」
「次の予定ですか?」
「はい、ネイビスファー共和国にも、同様の条約を結んで貰います」
「少しお待ち下さい」
ナミル王国の出席者が集まって話し合っている。どうやらナミル王国の戦争に協力して貰ったので、ネイビスファー共和国に賠償金の支払いを求めると、ナミル王国に賠償金の負担を要求される事を心配している様だ。
「マサキ殿、この度の戦闘行為は貴国と我が国の事、ネイビスファー共和国とは関係ありません。ご納得頂けませんか?」
「陛下、私と戦闘行為に及んだのは、ナミル王国とネイビスファー共和国に2国です。今更、『ネイビスファー共和国は関係ありません』は通じません。何、こちらの戦力を体験すれば直ぐに首を縦に振ります」
全員が苦い顔をしているが、俺の知った事ではない。これ以上話は無いので帰る事にした。
ホームに戻り、ネイビスファー共和国の代表議員宛に条約項目を記載して、議会館に届ける。
議会館の門には警備兵が在中していたので、日本国の大使だと説明して、主席議員に面会を求めて、暫く門で待つと、綺麗なエルフの女性がやって来た。
「初めまして、チェーザーレ・ビアジーニ主席議員の秘書官をしております、ラヴァーナ・プロネルです」
「初めまして、日本国、大使の松岡正樹です」
「マツオカ様、二ホン国の大使と伺いましたが、二ホン国とは聞いた事がない国ですが、この大陸の国ですか?」
「違います。この大陸から約1000ファル離れています。私は徳川皇帝からの勅命で、異世界の情報に付いて調べに参りました。しかし、日本国をご存じないのですか?不思議ですね戦争中の国を知らないなんて」
「我が国では、今現在、戦争を行っていませんので、勘違いではありませんか?」
「ナミル王国からの要請で兵を出兵しているのに、戦争を行っていないと?もしかして日本国を馬鹿にしていますか?このまま戦闘を継続しますと主席議員にお伝え下さい」
「お待ち下さい!主席議員と直接お話下さい!」
「いえ、もう結構です。貴方と話して、ネイビスファー共和国の対応が判りましたので、交戦準備に入ります」
「行き成り戦争を始めるのですか!そんな非常識は許されません!!」
「行き成り?先程も言いましたが、戦争は既に始まっています。貴方の国がナミル王国と一緒に、日本と戦闘を始めたのですから」
ナミル王国と一緒に戦闘行為を行っているのに、日本国と戦争はしていません。だと?この国も一度、俺との戦争を体験して貰わないと、素直になってくれない様だ。
秘書官がこれでは、主席議員と話しても無駄だと思うので、デモンストレーションで門を破壊して様子を見る事にする。
「お待ち下さい!待って下さい!憲兵!この人を捕らえなさい!!」
秘書官を無視して帰ろうとすると、警備をしていた4人が俺を取り囲む。
「他国からの大使を捕らえるのですか?」
「主席議員とお話下さい!」
「少しでも俺に触ったら酷い事をします」
俺が歩き出すと、憲兵の1人が腕を掴んだので、膝を蹴って関節を砕く。他の3人の憲兵も同様に膝を蹴り、最後に秘書官も前に立つ。
「右膝か、左膝のどっちがいい?」
「…私は秘書官です」
「それは最初に聞いた。右?左?」
「…」
答える気配はない様なので、こっちで決める事にして、左膝を蹴り砕いた。
4人の憲兵と秘書官が1人、膝を押さえて痛みに耐えている現場には、人集りが出来始めていたので、早急にその場を離れる。




