第40話 ストーカー被害?
フレイヤ邸で明日のフレイヤさんとジャック卿の顔合わせについて話をしに来たがフレイヤさんが屋敷に居なかった。
また覗きの犯人に仕立てられたら面倒なので書庫で本を記録しながらフレイヤさんの帰りを待つ事にしたが、一応庭に出て大声で「マサキです。書庫で待ってます」と言って聞えたか聞えてないかは不明だが現状ではこれ以上やり様がないので書庫へ戻る。
書庫で本を記録しながら1時間程でフレイヤさんが書庫のドアを開く。
「また来たのか?それ程、私に会いたいか?」
「フレイヤさんの顔を見るのも楽しみですが、明日のジャック卿との顔合わせをどうすればいいのか聞きに来ました」
「珍しい土産を期待している。それ以外は適当に連れて来い。水浴びをしていたなら応接室で待て」
「最近暑くなってきたので水浴びですか?」
もう直ぐ7月になるので段々と暑さが増してきた。コンバットアーマーを展開している時は温度調節が可能だが展開していない顔や腕は動くと少し汗ばむ。
「ああ、最近の日課は水浴びだ」
「バンパイアロードでも暑いのですか?」
バンパイア達をサーモグラフで確認すると大気の温度と同じなので熱を外へ放出していない。体内で熱を作らないのか、結界などで体温を外に放出しないのか、体の構造がそうなっているのかは知らないが暑さを感じるなら体温はあるの?
「人間よりも体温は低いし汗も掻かないが暑さは分かる」
「水浴び必要ですか?」
「気持ちがいい、マサキも私が使っていない時にやってみるといい」
「毎日お風呂に入っているので水浴びはいいです」
「毎日入っているのか?」
「毎日ですよ。汗掻きますし」
「水汲みは魔法でやっているのか?」
「いえ、異世界の家もこの世界に持ってこれましたので、声に出して言えば勝手にお風呂が沸きます」
「勝手に風呂が沸くのか!」
「早く結界を解いてホームに遊びに来てもらえば体験出来ますよ」
「そうだな古代龍も、もうそろそろ来る頃だから聞いてみるか」
「古代龍が来る時期は決まっているのですか?」
「ああ、決まっているぞ。大体夏頃になると湖に水浴びに来るぞ」
「遊びに来るんですか?」
「5~10日間程、湖で泳いでから帰るのが恒例だな。夜は屋敷の庭で寝るので聞きたい事があれば、その時聞ける。昼間でも泳いでいない時は話が出来るが長話は嫌いの様だ」
「食事はどうしているのですか?」
「古代龍ともなれば食事はさほど必要ない。魔力を動力にして動いているからな。私も血を少し飲めば数ヵ月は食事を摂る必要はない」
「便利な体ですね」
「人サイズなら便利だと思うけど、古代龍は不便だと言っていたぞ。デカいからな」
「魔力量も大きいんじゃないですか?」
「サイズで魔力量が決まる事はない。幼龍や成龍は私よりデカいが魔力量は私の方が上だ」
「そうなんですか、成龍よりフレイヤさんの方が強いのですか?」
「ああ、昔はよく成龍を狩りに行ったぞ」
「フレイヤさん1人で狩りに行っていたのですか?」
「いや、よく行ったのは兄か妹と2人だが、多い時は父も加わって4人だ」
「妹さんと2人で行った時は苦戦しましたか?」
「成龍如きに苦戦する訳ないだろう」
そうすると、成龍はフレイヤさんよりレベルが低い!そこから考えると成龍はレベル80以下だと思う。幼龍はレベル75以下。ゲーム感覚だと5レベル差があると致命的、余程相性がいいか卑怯な事をしないと勝てない。
「例えば、フレイヤさんが2人居たとして老龍には勝てますか?」
「老龍か…。私が2人でも厳しいか…。勝てる気はしないがやってみないと判らないな」
フレイヤさんの話からすると老龍はレベル90程度、それを踏まえて考えると幼龍がレベル70、成龍がレベル80、老龍がレベル90、古代龍はレベル100?古代龍に会った時にレベル確認と異世界の事、他にも色々聞きたい。楽しみだ。
「では、明日の15時頃にジャック卿を連れて来ますので宜しくお願いします」
「15時だな、それまでに水浴びは済ませておく」
明日の紹介の事を決めてフレイヤ邸を後にして、ジャック卿の屋敷に行き執事に14時にジャック卿の屋敷まで迎えに来ると告げホームに帰宅した。
午前中にコリーナとユルクをジゼラさんの所へ預けて、フレイヤさんのドレスを確認したら後3日で完成予定だったので現物を見たが中々の出来栄えだった。これならフレイヤさんも納得するだろう。
3日後にドレスをフレイヤさんの屋敷に届けて手直しする為、ジゼラさんも同行する事になった。早速伝えなければ!
ジゼラさんの家を出ると通りの反対側に2人の人虎が立っていて俺を睨んでいる?レベルを確認すると24と22だ、知り合いでもないし相手にもならないので無視する事に決めて町の門へ歩いて行くと睨んでいた人虎に声を掛けられた。
「おい!ジゼラとどういった関係だ!」
呼び捨て?親しい知り合いか?
「子供の世話を頼んでいるけど、お前は誰だ?」
「お前に関係ない!」
話し掛けてきて俺に関係ないだと?馬鹿なのか?兎に角ジゼラさんに確認する為、もう一度家のドアをノックしようとした時に、また声を掛けられた。
「ジゼラに近づくな!」
無視してノックをするとジゼラさんが顔を出した。
「マサキさん、何か忘れものですか?」
「こいつら誰?」
少し困った顔で「この町の冒険者です。マサキさんに何かしましたか?」
「何もされてないけど『ジゼラさんに近づくな』と言われた。恋人か何か?」
「いえ、最近言い寄って来た方ですかお断りしました」
ストーカー発見!
「俺はこの町のB級冒険者の「黙ってさっさと失せろ、理解出来たら行け」」
最初は何を言われたのか理解出来なかったのか、少ししたら理解出来たのか物凄く怒り出した。ホルスターに手を掛けてもう一度繰り返す事になりそうだ。
「俺はこの町のB級冒険者の「黙れてさっさと失せろ、理解出来たら行け。2度目だぞ」」
今度は直ぐに俺に襲い掛かって来たのでハンドガンを抜いて2人の爪先を撃ってみたら転げ回って喚いている。煩いのでどうしようか?
ファーネス港町の冒険者ギルドに2人を引きずって連れて来たが、道中の人の目が気になって仕方なかった。喚く男2人を引きずる男、俺でも注目してしまう。
ファーネスの冒険者ギルドはグロスターの冒険者ギルドよりも小さくて活気もない。ドアを開けて受付に聞いてみた。
「この2人に襲われたんだけど、ここで対処してもらえる?」
「ギルド長を呼んで来ますのでしばらくお待ち下さい」
しばらく待つと人虎のギルド長がやって来て俺を嘗め回すように見て話し掛けて来た。
「お前がこの2人に危害を加えたのか?」
お仲間?
「グロスターのイレール卿に話を通した方がいい?」
「代理領主様と知り合いなのか?」
「だったら何だ?態度を変えるのか?それとも俺を加害者にするのを止めるのか?まあ、先に教えてやるイレール卿とは余り面識がない」
「そうだと思った。おい!こいつを捕らえて牢に入れろ!」
いい終わったのを確認してから、こう繋げてみた。
「イレール卿とは余り面識ないがコンラード将軍なら親しくしている。で牢が何?」
「領主様と知り合いなのか!?」
「正樹を捕らえたと王都に手紙を出したらコンラード将軍自ら確認しに来るぞ。でお前の首が飛ぶからやってみろ。コンラード将軍じゃなくてクリフォード宰相か?プレット大臣?クロード大臣かも?この内、誰が来るかな?」
「…」
黙り込んでいるギルド長は、ほっといてギルドの衛兵を見て手招きする。
「1、俺を牢に入れてコンラード将軍から罰を受ける。2、3人を牢に入れてイレーヌ卿に連絡する。3、この場は何もしなくて俺がイレーヌ卿に報告して後から罰を受ける。どれがいい?」
「お前が代理領主様の知り合いである保証は?」
「ない」
その時、騎士達がギルドに入って来た。
「マサキ卿!如何しましたか?」
「えーと、誰でしたか?」
「イレール様の護衛をしておりました」
「そうでしたか、今から牢に入れられるそうなので、コンラード将軍に話を通して貰えますか?」
「…コンラード様に、ですか?イレール様に連絡した方がいいのでは?」
「この場に居るギルド職員が結託して罪を着せられましたので牢に入り次第、戦闘行為に移ります」
「お待ち下さい!最初からお聞きしても宜しいでしょうか。ギルド長!説明を!!」
「このお方が冒険者2人に襲われて事情を聴いていただけです!」
「マサキ卿との話が違う様だが!!」
「衛兵が勘違いしただけです!」
埒が明かないのでここで介入する事にした。
「1人限定!本当の事を話したら罪なし!」
受付嬢が最初に他のギルド職員を売ったのを皮切りに衛兵の2人もギルド長のこれまでの行為を話し始めた。
3人の話を聞いた騎士が他の騎士にギルド長と衛兵2人を連行させ俺に謝罪をして来た。
「申訳ありませんでした。今後この様な事が無い様に注意します」
「宜しくお願いします。それと俺を襲った2人はどうしましょうか?」
「私が連行して事情を聴きます」
「知り合いのジゼラさんに付き纏わない様にして下さい」
「了解しました!」