第38話 新しい仲間
フレイヤさんの分身狼との戦闘訓練に浩史とやって来たがフレイヤさんが見当たらない。下僕はフレイヤさんとしか意思の疎通が出来ないので、レーダーで確認すると屋敷には居ないしレーダー範囲の600m圏内に居るのは下僕のみ。
浩史を屋敷に残して屋敷の周りを探すと魔物の反応を見つけたのでそちらに行ってみると森を抜けた先に湖が見えた。ついでに全裸で水浴びしているフレイヤさんも見つけた。
不味いと思って屋敷の方向へダッシュしようとしたら後ろから声を掛けられた。
「マサキ、どこへ行く?」
フレイヤさんの優しい声が聞こえたが冷汗が止まらない。
「狼との戦闘訓練をお願いしようと思って屋敷に行ったらフレイヤさんが何処にも居なくて心配で探しましたよ。無事で良かった!あー良かった!」
そのまま屋敷の方向に歩いて去ろうとすると生身なら肩の骨が粉々に砕けるほど強く掴まれたが振り返るのが怖い。前に覗いたら目を潰すと言われている。早くこの場から立ち去らないと本当に目を潰される。
「私に何か言う事はないか?」
「おはようございます?」
「違うな」
「こんにちは?」
「違うな」
「今日もお綺麗ですね?」
「それは何を見ての発言だ?」
「何も見ていません」
「湖で私が水浴びをしている所を見たな?」
「いえ、何も見ていません」
「水浴びしている時、目が合ったな?」
「いえ、何も見ていません」
「正直に言ったら許してやる、見たな?」
やっぱりフレイヤさんは馬鹿なのか、そんな嘘に騙されるか!
「いえ!何も見ていません!この発言が変わる事は永久にありません。まだ続けますか?」
目を潰されない様に必死で否定すると、その思いが通じたのかフレイヤさんも理解した様だ。
「まあ、今回は大目に見てやるが、次はない」
「何も見ていませんが目を潰さずにいてくれて、ありがとうございます」
「しばらくしたら屋敷に戻るので待って居るがいい」
「それでは屋敷で待たせて貰います」
屋敷で待つ事になったので足早に屋敷へ向かう。フレイヤさんの気が変わらない内に立ち去る事にする。それにしてもフレイヤさんの外見は完璧だった。裸だったので矯正はしてなくてあのスタイル、バンパイアだからずーっとあのスタイルを維持出来る。凄いねバンパイア。
屋敷に戻って浩史と書庫で本を記録しながら待つ事にした。しばらくして書庫のドアが開いてフレイヤさんが仁王立ちで佇んでいた。何?
「さっさと始めるぞ」
あれ?フレイヤさん怒っている?まだ根に持っているのか、一瞬裸を見られただけで心が狭い。
「怒っています?」と聞いたら睨まれた。
「兄貴、何かしたの?」
「いや、何もしてない」
「私の裸を覗いたくせに何もしていないだと!」
「覗いていません」
「兄貴!覗きは犯罪だよ!」
実の弟にも犯罪者呼ばわりをされる始末。最悪だ。
「だ・か・ら、覗いてない!フレイヤさんもはっきり言うと、湖を見て直ぐに視線をそらしましたので裸は見ていません。視線は一瞬合ったかもしれませんが本当に裸は見ていません。ご納得頂けましたか?」
「全くしてない、私の眼は誤魔化されない。さっさと認めてしまえ」
「百歩譲って認めたらどうするのですか?」
「眼を潰す」
「例え裸を見たとしてもその条件では絶対認めないと思いますよ」
バンパイアなら眼を潰しても再生出来るのかお手軽な罰の様に言うな!こっちは眼を潰されたら回復しないんだ!まあ現実ならそうだがこの世界では魔法があるので手軽な罰になるのか?
「もう諦めた。さて狼との訓練だったな、今日はマサキ一人で相手をしてみてはどうだ?」
何が『諦めた』だ!狼を使って仕返しをしようと気が変わっただけだろ。
「嫌です」
「では戦闘訓練はなしだ」
「了解です。ドレスもなしで、生地はお返しします。それでは失礼します、浩史帰るぞ」
「待て!卑怯だぞ!」
「湖の場所も記憶しましたので今後は注意します。これで怒りを治めてもらえませんか?」と頭を下げてお願いしてみた。
「それで良い。2人とも用意をして庭で待て」
一応怒りは治まったようなので、そのまま分身狼との戦闘訓練に移り狼との戦闘は5体を2回行ったがレベルは上がらなかった。4レベル差があって経験値1.5倍を装備していたが次回に期待したい。
子供達は現在、戦闘フォーメーションの練習を雑魚魔物で試して体に叩き込んでいるし、コリーナとユルクはジゼラに子守を頼んだら快く引き受けてくれた。と言っても1ヶ月で金貨1枚を支払う事になっている。金貨2枚を提示したが1枚でいいと言われた。
戦闘のフォーメーションは1度見せて貰ったが問題はないと思う。デボラが敵の足止め、同じレベル程度なら2体は足止めが可能だ。その他の敵はイリアとロンが牽制と攻撃を担当、マールとアネットで攻撃と回復をする。中々理想に近いチームだと思う。
イリアの装備はファビオに頼んで剣のみ魔造鋼で特注したが防具は既製品で済ませた。イリアとロンは成長過程だしスピード重視なので急所を隠す皮鎧なので既製品で十分の様だ。
フォーメーションの訓練が終われば、いよいよダンジョンでイリアのレベル上げを開始してグロスターのダンジョンでレベル36までは上げたい。そうすれば他の子供達のレベルと同等になるのでバランスも良くなるだろう。
ファンドラ国のダンジョンはグロスターと違いファンドラ国が管理しているのでジャック卿に頼んで入場許可書は発行して貰った。当然、俺と浩史の2人分だが1人が許可書を持っていれば1チームは入場出来る。カーマン帝国以外の冒険者ギルドのチーム登録人数は1チーム8人と決まっているので俺か浩史が居れば全員入場出来ると聞いている。
ゲーム設定では1チーム6人だったので少し多い気もするが、こっちの世界では戦闘は殆ど接近した状態で始まり、攻撃魔法を一回撃つと後は剣で届く距離になる。当然多い方がいいから8人なのか、ダンジョンの転移室が荷物も含めると8人で満員になるからなのか、チーム登録は8人だ。
子供達は現在5人と少ないがレベルは冒険者ギルドでも高ランクに属しているので問題はないと思う。いざとなれば、俺か浩史が入れば大抵の事は何とかなるので少なくても良かったが俺達が帰った時の事を思うと最大人数までは揃えた方がいい。
そんな訳で子供達と年齢の近い冒険者を探していたらファビオから紹介された。息子を!ファビオさん結婚していたのと驚いた。ファビオから呼び捨てで『さん付け』は必要ないと言われていたが、これから『さん付け』しようかな?
今から浩史と子供達を連れてファビオの鍛冶屋で息子との顔合わせがある。年齢は13歳で魔法は使えない。デボラと一緒で攻撃より防御が得意なので敵を引き付け防御に徹する。これでガード役は2人になったので前衛は揃った。
俺が考えているチームの理想は残り罠の解除役と攻撃魔法特化の魔法使い、これで8人になる。ダンジョンに入るなら罠の解除役は必須だ、今まではダンジョンで宝箱を見つけると子供達は少し離れて俺か浩史で対処している。
罠解除の盗賊はマールとロンが知り合いを紹介したいと言っているので、ファビオの後に盗賊ギルドで合う事にしているが、盗賊は戦闘フォーメーションには入れないのでファビオの息子をみんなが気に入れば、早速フォーメーションを変更しないと。
鍛冶屋に到着して中に入るとファビオと息子のレオンが既に待っていた。最初にレオンが自己紹介をして子供達の紹介を済ませ早速本題に入る。
「このチームに入るなら、俺や浩史が同行した時の事は秘密にして欲しい」
「はい約束しますし、父さんから既に色々と聞いていますので秘密は守ります」
「それと鍛冶屋を継がなくていいの?」
「鍛冶屋は継ぎますが、その前に武器や防具を実戦で使って何が重要かを自分なりに理解したいと思っています。なので10年は冒険者をやります」
鍛冶屋になる前に冒険者か、ドワーフは長生きだから10年何て直ぐなのかな?まあ10年冒険者をやるんだったら問題はない、後は子供達がOKなら合格だが仲良く喋っているのでこれで決定かな。
次はレオンも連れて盗賊ギルドに行ってマールとロンの紹介したい盗賊と会う事になっている。盗賊ギルドに到着して猫人の女の子が既に待っていた。
盗賊ギルド内の食堂で全員を紹介して盗賊のソニアに挨拶を済ませた。
「マサキさんとヒロシさんはマールやロンの師匠なんですか?」
「違うよ、同居人で少し手助けしてる」
「マサキさんとヒロシさんがチーム入りの決定を出すのですか?」
「チーム入りの決定はしないけど、俺達の装備などの秘密は他で話さないで、約束出来ないなら俺か浩史が付いて行く時にはチームから外れて貰う」
「約束して破ったらどうなりますか?」
「どうもしないけど、秘密を漏らしたと判明した時点でチームからは外れて貰う」
「それだけですか?」
「後は悪質ならそれなりに俺が対応する」
「それなりの対応ですか、分かりました。秘密は守ります」
「それでソニアの冒険者階級は?」
「E級です。皆さんは?」
「レオンは今日中に冒険者登録するからH級、他はF級?デボラ達は階級上げた?」
「上げてませんのでF級です」
「そうするとソニアが一番階級が高いな、冒険者の事は何も知らないので変だったら教えて」
「はい、それで私は合格ですか?」
子供達を見ると不満はない様なので「反対の人は居ない様なので合格。それで、これからの事だけど、当面はレオンの階級上げ、F級まで上げて貰う」
「面倒を掛けますがよろしく」
「F級になったらダンジョンの50~60階で俺と浩史がギリギリまで魔物を弱らせるから止めだけ刺して貰う。その後はファンドラ国のダンジョンのもっと下層で同じ事を繰り返す」
「ダンジョンの50階ですか?本気ですか?」
「今でもデボラ達を連れて行くけど?」
「マサキさんとヒロシさんの噂は聞いていますが、私も止めを刺すのですか?」
「イリア、レオン、ソニアは優先で止めを刺して貰うよ。頑張って」
「「「よろしくお願いします」」」3人が元気よく挨拶をする。
この後、皆で冒険者ギルドに行ってレオンの登録とチーム登録をして解散とした。子供チームの名前はドラグーンとなった。マールとロンがかっこいいと決めていた様だ。他の子供達も特に反対はなかったので、そのまま決まった。




